自分がいっぱい『撫物語』西尾維新
あーあ、もうひとり、私がいてくれたらいいのに。なんて、私はそう願った。願ってしまったのだった。
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
あーあ、もうひとり、私がいてくれたらいいのに。なんて、私はそう願った。願ってしまったのだった。
それは昔々の物語。はるか遠くの国の、あるところに、ひとりの王子がおりました。
彼女は愚かである。そして、彼女が愚かなことは、彼女以外のクラスメイトの誰もが知っていた。
鏡の中の世界、という別の空間の存在を、私は子どもの頃、たしかに信じていたものである。
壊れた人間なんてのは、一見すれば普通の人間と変わらない。けれど、たしかに何かがおかしいのだ。
「さて、この物語の犯人は、いったい誰だろうね」
ふと、壁にかけられた日めくりカレンダーを眺める。白い紙にかわいらしい猫のイラストが描かれていた。
これで三人目だ。そして、四人目もまたすぐだろう。それが誰になるかは誰にもわからないけれど。
どうしてこうなったのだろう。私は呆然自失としたように脱力して、救いを求めるように天を仰いだ。
私は正直者である。今までの生涯で一度も嘘をついたことはない。