へんだけど、いとしいお笑いの世界『火花』又吉直樹
「俺、お笑い芸人になるわ」
「俺、お笑い芸人になるわ」
「添加物を色々混ぜると、ハンバーガーそっくりの味になるんだよね」
「鴨川ホルモン? なんだ? 鴨川にある焼き肉の店か何か?」
「人材ではなく、人財になりなさい」
時は太平。戦国の世もすでに過去となり、豊臣の時代は終わりを告げた。今や権勢を握るは徳川である。刀を握る戦いの日々は過ぎ去り、我ら忍びもま...
鏡をね、見たんですよ。えぇ、そうです、あの、鏡。それがきっかけでした。鏡を見たから、私は罪を犯したんです。
天にそびえる天守閣。かつて、その場所には天下人がいたという。その威容は、今もまだ、大阪の街を睥睨している。
ずっと小さい頃から、俺はテレビっ子だった。お笑いを見て爆笑し、歌を聴いて心躍り、アニメやドラマを見て学校での話のタネにしていた。
まるで海のようだ、と初めて見た時、思った。その遠い水平線が湖だと聞いた時は、心底驚いたものである。
忘れられない光景がある。病院で寝ている祖母の姿。鼻にチューブが繋がれ、寝たきりになった、実験動物のような姿を。