経済成長から縮小均衡の時代へ『小商いのすすめ』平川克美
テレビの中で白黒の人たちが一様に手を上げて笑っている。どうして彼らはあんなにも楽しそうなんだろう。私はいつも、そう思っていた。
テレビの中で白黒の人たちが一様に手を上げて笑っている。どうして彼らはあんなにも楽しそうなんだろう。私はいつも、そう思っていた。
甲高い音が響いて、大きな姿見に蜘蛛の巣のような罅が走った。罅の向こう側の世界には、肩で息をして、血走った眼で睨みつけている醜い女の姿があ...
「再会に、乾杯」 「乾杯、といっても、ジュースじゃ様にならねぇな」
僕の生まれ育った故郷は、海に浮かぶ小さな島である。学生の頃からずっと、僕はこの島から出ていきたくてたまらなかった。
一枚、二枚、三枚、四枚、五枚、六枚、七枚、八枚、九枚……。若者は呆然として、井戸に立って皿を数える女の姿を見た。
空が見える。空はどこまでも広がっている。海は空を映したのだという。だが、僕は逆だと思う。空が海を映しているのだ、と。
ぱんぱんと柏手ふたつ。お賽銭箱には五円を一枚。今年こそどうか、ご縁のありますように。
「何度言ったらわかるんだ!」
道端を少し上ったところの、木が生い茂った中に、小さな祠がぽつんと建っている。私はそこから見下ろしていた。
私は特別な人間だ。他の人たちとは違う。だが、私には、それだけしかないのだ。