人生とは壮大な旅『旅のラゴス』筒井康隆
一定のリズムで刻まれる蹄の音。照りつける太陽に項を焼かれ、私は額から滑り落ちる汗を手綱を握った袖で拭った。
一定のリズムで刻まれる蹄の音。照りつける太陽に項を焼かれ、私は額から滑り落ちる汗を手綱を握った袖で拭った。
唐突に、ふと、疑問に思った。私が今飲んでいるこの飲み物は、いったい何なのだろうか、と。
蜂蜜のような明かりがカーテンの隙間から入り込む音楽室で、目を閉じてピアノを弾く彼女の姿を、ぼくは惚けたような表情で眺めていた。
社会は厳しい。税金は上がっていく一方。貯金はどんどん減っていく。金利なんてもう期待できないし、年金すらももらえるかどうかわからない。
私は幽霊の存在なんて信じていない。あんなのは、ただの、生きている残された人たちの心が生み出した妄想に過ぎない。
私はその本を手に取る前、そんなに怖くないだろうと思っていた。たかがストーカーなんて。怪物でも幽霊でもなく、所詮は人間じゃないか、と。
財布の中を見て、私は絶望した。お金がない。銀行の口座にもない。いつの間にこんなに減ったのか。
芥川賞受賞。その言葉に惹かれて、その本を手に取った。初めて読んだ時のことは今でも覚えている。あれは、そう、嫌悪だろうか。
先がない。どうしたものだろうか。私は頭を掻きむしる。日焼けした皮膚が、堪えがたい痒みを訴えていた。それは、身体の奥底からくるような、焦り...
その本は衝撃だった。今まで私が痩せると信じて続けてきた食事。それが間違いなのだと、突き付けられたのだから。