「2019年08月」一覧

非人情に惹かれた青年画家の芸術に浸る旅路の出会い『草枕』夏目漱石

2019/8/11 小説

　道行く木立の葉の隙間から日の光が射しこんでいる。葉に溜まった朝露の残り香が明かりを浴びて輝いた。

　雨が私の身体を冷たく凍えさせていた。薄汚れた風情で呆然と俯く私を、道行く人たちは蔑んだ目で見据えて通り過ぎていく。

2019/8/9 小説

　これは昔の話である。うだるような、暑い夏の日のことであった。私の父は幼い私の手を引いて墓参りに連れて行ってくれた。

「辛いか？」　格子の向こう側にいる看守が私に問いかける。身体を鎖でがんじがらめにされた私は、たしかに辛そうに見えるかもしれない。

　私は歯車だ。私という存在は、社会という巨大な機械を動かすシステムの一部だった。

2019/8/6 小説

「今、なんて言った？」「もう別れましょうって言ったのよ」

2019/8/5 小説

　とにかく恋は罪悪ですよ、よござんすか。そうして神聖なものですよ。　夏目漱石先生の『こころ』の一文がふと頭の中によぎる。ああ、ま...

2019/8/4 小説

　学校帰りに寄る喫茶店で食べるパフェの味ほどおいしいものはこの世にない。私はそんなことを適当に思いつつ、クリームにスプーンを突き刺した。

2019/8/3 小説

　私はひとりの女の子が気になっている。

2019/8/2 小説

「先生、事件です！」　私が事件の資料を片手に事務所に駆け込むと、椅子に座って珈琲を飲んでいた男が私に視線を向けた。私はきょとんと...