二人の間に訪れた新たな家族『天使の奇跡』望月麻衣
子どもの頃から赤ちゃんが欲しかった。愛する人との子どもを産んで、幸せな家庭を築くことが私の目指す幸せだった。
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
子どもの頃から赤ちゃんが欲しかった。愛する人との子どもを産んで、幸せな家庭を築くことが私の目指す幸せだった。
何度も、何度も、悲劇は繰り返されてきた。これが運命だというのなら、なんて残酷なのだろう。
窓から見下ろすと、庭師に手入れされた大きな庭が広がっている。生まれた頃から見てきたそれが、今は少し恨めしく思う。
信号もない、穏やかな田舎町。都会の人からしてみれば、のどかな風景だと思うだろう。しかし、その影には得体の知れない何かが潜む。
その時の光景を、私は二度と忘れないだろう。私はその時、たしかに見たのだ。彼女の背に、二対の白い翼が開くのを。
子どもを育てることに、昔から憧れていた。でも、憧れと現実が違うということを知ったのは、夢が叶ってすぐのことだった。
二度と会えないわけじゃない。自分にそう言い聞かせる。けれど、遠ざかっていく彼の背中に駆け寄って抱き着きたかった。私は呆然と、小さくなって...
人類のために戦え。もしも、そう言われたなら、僕はいったい、どうするだろうか。
俺は隣に座る彼女の俯いた横顔を見つめる。まるであの頃に戻ったかのように、俺の心の中で抑えていた想いが再び燃え上がったような気がした。
扉を開けると、涼やかな鈴の音が私を迎えた。靴を脱いで、奥へと入っていく。