家族だからこそ生まれる歪み『家族じまい』桜木紫乃
私は家族のことが大好きだ。今まで育ててきてくれたことを感謝しているし、大切な人たちだと言えるだろう。けれど、彼らからできるだけ離れたいと思...
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
私は家族のことが大好きだ。今まで育ててきてくれたことを感謝しているし、大切な人たちだと言えるだろう。けれど、彼らからできるだけ離れたいと思...
私の親が私を愛してくれていたか、という問いに対して、私は、愛してくれていた、と答えるでしょう。ですが、愛は決して良いものばかりではないのだ...
「生まれ変わるなら女になりたい」呑気な面してそう言った彼。微笑みを浮かべて聞きながら、机の下で真っ赤になるほど拳を握り締めた。気楽に言うな...
「もう嫌だ! こんなことなら、もっとお金持ちの家に生まれたかった!」
はぁ、疲れた。思わずため息が零れる。散乱した衣服。汚れたままの食器。やることはまだまだある。肩にのしかかるような疲れが、重みを増したよう...
ああ、私の愛しい人。あなたはなんて愚かなのでしょうね。あなたは今も、私が何も知らないと、思い込んでいるのでしょう。
自由になりたい。家事をしながら、私ははあと深くため息を吐いた。水道の音に紛れて、部屋でテレビを見ている夫には聞こえないように。
甲高い泣き声が頭に響く。それはまるで、私に向けた糾弾であるかのようだった。ああ、もう何度、この愛する我が子を憎らしく思ったことだろう。
天にそびえる天守閣。かつて、その場所には天下人がいたという。その威容は、今もまだ、大阪の街を睥睨している。
家族って何だろう。楽しそうな食卓で、私はずっとそのことを考えていた。彼らが笑うその食卓に、私の居場所はなかった。