子どもの心を安定させるコツとは?『子どもの心を”荒らす親””整える親”』河井英子


 甲高い泣き声が頭に響く。それはまるで、私に向けた糾弾であるかのようだった。ああ、もう何度、この愛する我が子を憎らしく思ったことだろう。

 

 

 そもそも、望んだ子ではなかった。ほんの気の迷いから身を預けた一夜で、偶然授かった子どもだった。

 

 

 この子の父親はいなくなった。妊娠したことを告げたら、連絡が取れなくなったのだ。私はもちろん、母もいっぱい泣いた。

 

 

 父や母や友達の反対を押し切ってこの子を産むことを決めたのは私だった。いくらどうしようもない男の子どもでも、この子に罪はない。

 

 

 父や母とは子どもを巡った大喧嘩の末に半ば絶縁状態となり、私はひとり、地元を離れて遠く離れた地でひとり暮らしを始めた。

 

 

 会社の規則で育休をもらったが、規則と相反するような、同僚や上司の反感は視線を見ると一目瞭然だった。きっと、あの会社にもう、私の居場所はないだろう。

 

 

 そんな状況だったからこそ、生まれてきた時の子どもを見た時は、涙が止まらなかった。醜い猿のような顔が、愛おしくて仕方がなかった。

 

 

 これから、二人での生活が始まるんだ。私は、お母さんになったんだ。当時はまだ、その未来が明るいもののように思えていた。

 

 

 けれど、今の私の悩みは、全てその子どもがもたらすものだった。

 

 

 夜泣きに大いに苦しみ、腕に抱いて揺らしながら、ミルクを上げたり、おむつを変えたり。噂に聞いていたそれらは想像していた以上に大変で、とうとう泣き声を巡る近隣とのトラブルで引っ越す羽目にすらなった。

 

 

 どうにか夜泣きもなくなり、我が子がたどたどしい言葉を話し始めた時は思わず涙したものだ。けれど、そんな感動も時間とともに忘れていく。

 

 

「もう、何度言ったらわかるの!」

 

 

 何かが破裂したような音が響く。私が自分の子を叩いたのだ、と気づいたのは、自分の手のひらに疼く痛みと、大声を上げて泣く我が子の赤く染まった頬を見た後だった。

 

 

 我が子の涙に、思わず私も泣きそうになる。誰よりも愛していた。なにもかもなくした私にはもう、この子しかいなかった。

 

 

 それなのに、叩いてしまうなんて。自分の手を、私は信じられない思いで見つめた。かつてなりたくないと思っていた親に、私自身がなっている。

 

 

 翌日になり、我が子は泣いていたことも、私が手を上げたことも忘れているかのようにケロッとした顔で笑っていた。けれど、私の手は覚えている。

 

 

 父親はいない。そして、手を上げてしまうような私が母親だ。この子はなんて不憫なんだろう。幸せであってほしいと願うのに、この子の幸せを私が邪魔しているような気がした。

 

 

 買い物の帰りに、近所にある図書館に寄ることにした。絵本を読んでいる我が子を見ながら、ようやく一息つくことができた。

 

 

 ふと、おすすめ本のコーナーに置かれた一冊に、目が惹かれた。思わず手に取る。『子どもの心を”荒らす親””整える親”』という本だった。

 

 

 私は思わず自嘲した笑みを零す。私は、どちらだろうか。考えずともわかっていた。我が子はよく泣く。昔からずっと。

 

 

 私は視線を投げた。その先では、我が子が楽しそうに大好きなアニメの絵本を読んでいる。胸に、愛おしさが溢れてきた。

 

 

 幸せになってほしい。きっと、どこの家庭の親も、そう思っているはずだ。今や連絡も取らない私の両親の顔が浮かぶ。

 

 

 でも、子どもは思うようにはならない。当然だ。だって人間なんだもの。子どもは親のモノじゃない。ひとりの意思を持つ人間だから。

 

 

 親として、子どもにできることはなんだろう。子どもが楽しい毎日を送るためには、どうすればいいか。

 

 

 この本には、その答えが書いてあるのだろうか。私は、我が子を横目に見ながら、その本のページを開いた。

 

 

子どもが荒れる原因

 

 小学校一年生のクラスでは、数年前から異変が起きています。席に着いていられない子や、先生の指示に従えない子が増えて、先生を悩ませているのです。

 

 

 そんな子どもがクラスに何人もいて、学級崩壊と言われる現象も生じています。

 

 

 それは特別なことではなく、今や多くの小学校で見られる”当たり前”の光景となっています。

 

 

 かつての小学校一年生といえば、かわいらしくて先生の言うことは素直になんでも聞くものでした。そういう光景は今や昔のことなのでしょうか。

 

 

 子どもたちに、子どもらしい健全な成長を願っている大人として、このような状況を見過ごすことはできないような気がします。

 

 

 原因を確かめるなり、正すなりして、子どもの「荒れ」を整えていかなければなりません。せめて親御さんには、できるだけの手立てを講じてほしいと思います。

 

 

 子どもが荒れる原因を探ることは、子どもを取り巻く環境や、発達の正しい筋道を改めて見直してみることかもしれません。

 

 

 この本ではそういうことを含めて、しかしなるべく具体的な子育てのヒントとして、参考にしていただけることを挙げていきたいと思います。

 

 

 時には、親自身の生活にかかわる問題も見直す必要があるかもしれません。

 

 

 親の目から見ると、子どもの発達は遅々としています。しかし、通り過ぎてみればほんの一瞬に近い時間です。

 

 

 その時間の中で、確実に子どもは成長という変化を遂げているわけですから、しっかりとその姿を見つめていくことが必要です。

 

 

 子どもに密接に関われる人は、他でもない親しかいません。親としての役目と思って、子育てに向き合ってください。

 

 

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