人間社会の不条理を描く『異邦人』カミュ
僕は思わずぞっとした。周りの彼らが僕に向ける、異常な視線に。まるで異邦人のようだ。こめかみを、一筋の汗が流れる。
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
僕は思わずぞっとした。周りの彼らが僕に向ける、異常な視線に。まるで異邦人のようだ。こめかみを、一筋の汗が流れる。
善とは何か。悪とは何か。俺はずっと、そのことを考えていた。憎悪の顔で俺を見上げる民衆どもを見下ろして。
今朝、私の隣りで夢を語っていた青年が、今は、地に倒れ伏したまま、ぴくりとも動かない。
「頑張れ!」私はその言葉が嫌いだった。他人の無責任な応援の言葉が、私には、堪えがたかったのだ。
こんな想い、捨てなければならない。私と彼は敵同士なのだから。いくらそう言い聞かせても、胸の鼓動は止まってくれなかった。
ひどい点数だな。私がそう呟くと、息子がぶすくれた表情でそっぽを向いた。けれど、黙ったままということは、息子自身もそう思っているのだろう。
私はぼんやりと頬杖をついて、窓の外を眺めた。この列車は、いつまで走り続けるのだろう。
いつからだろう。爪を噛む癖ができた。かりかり。かりかり。気が付けば、私はいつも爪を噛んでいる。
父親、というのは、いったいどんなものなんだろう。それは、僕が子どもの頃からずっと疑問に思い続けていたことだった。
なんだか、疲れたな、いろいろ。会社からの帰路をとぼとぼと歩きながら、私は思わずため息を吐いた。