「頑張れ!」私はその言葉が嫌いだった。他人の無責任な応援の言葉が、私には、堪えがたかったのだ。
運動会の徒競走。運動が苦手だった私は、ぶっちぎりで最下位だった。私にぶつけられる「頑張れ」の声援。
ゼイゼイと荒い息を吐きながら走っている中で、不意に、声援を送る彼らへの激しい嫌悪とも憎悪ともいうような凶暴な感情が生まれたのを感じた。
無責任な「頑張れ」ほど腹の立つものはない。しかも、彼らは信じられないことに、その言葉を良いものとして扱っているのである。
彼らはふらつきながら走る私の姿が見えていないのか。私はこれでも頑張っているのだ。それを、もっと「頑張れ」というつもりか。なんて残酷な言葉なのだろう。
それを、私のクラスメイトや、親が、平然と言ってくることに、私は衝撃を受けた。
それ以来、私は「頑張る」ことが大嫌いになった。頑張る方法が、わからなくなってしまったのだ。
時が経ち、それを改めようと思ったのは、就職した職場で店長からたびたび説教を受けたことがきっかけだった。
やる気を出せ。さぼるな。本気でやれ。仕事なんてものに本気なんて出す気はないけれど、さぼったことはないのに、ひどい言い草もあったものだ、と、言われたときは思った。
しかし、こうも何度も怒られると、そろそろ直さないといけないのかもしれない。面倒くさいし。というのがきっかけだった。
けれど、直すと言われても、どうすればいいのか、私には頓とわからなかった。
なにせ、ずっと私は「やる気がない」と言われ続けてきたのだ。今さら、自分の行動の何が悪いのか、なんて見当がつかないし、やる気がある動きはどんなのかも、さっぱりわからない。
というわけで、途方に暮れた私が偶然発見して図書館から借りてきたのは、『しぐさの技術』である。
ほんのちょっとした動作や、立ち姿まで、そのしぐさが相手に与える印象を、その本は紹介していた。
その本を見て、私は納得したのだ。ああ、これのせいで、私はやる気がないように見られていたのか、と。
私の普段の動作や姿勢は、まさしくその本に「悪い例」として書かれているそのままであった。
ここにきてようやく、私は自分のしぐさの問題点と目指さなければならないゴール地点を見定めることができたのだ。
この年齢になるまで生きてきて、私はひとつ、気が付いたことがある。
人は表面上しか見れない。察して、なんて言われてもできるわけがないし、わかったようなことを言っていても、その実、本人がわかったような気になっているだけなのだ。
私たちは互いに通じたような気になっているだけ。いつも、何かしらすれ違いながら生きている。
それならそれでいいだろうと思う。私が我慢ならないのは、人間の多くは、自分の主観が得た印象が正しいと盲信して、こちらを判断し、干渉してくることだ。
私は気づいた。世の中を上手く渡り歩くには、詐欺師になればいいのだ、と。
やる気がなくても、やる気があるように見せかければいい。どうせ、相手はこちらの真意なんてわからないのだから。
騙せばいいのだ。世の中を。どうせみんな、同じことをやって生きているんだろう?
印象を良くするテクニック
世の中には、会った時の印象で、得する人と損する人がいます。そもそも人の印象とは何でしょうか。
私たちがそれほど印象にこだわるのは、相手の感じ方次第で結果が大きく変わってしまうからです。いい結果を得るためには、少しでもいい印象を残さなければなりません。
そのときに重要になるのは、「ノンバーバル(非言語)」と分類される、言葉に頼らないコミュニケーションです。
「ネット社会」などと呼ばれる現代であっても、人柄や性格といったものは、実際に対面しないと判断できません。人生の重要な場面では、一度は実際に会って判断しようとするのです。
あなたのふるまいは、状況に適したものでしょうか。しっかりやっているつもりでも、周囲にそれが伝わっているとは限りません。誰でも自分を客観視することが困難なのです。
特に近年では、インターネットの普及により、対面コミュニケーションの機会が減っています。機会が減れば、苦手意識が生まれるのは当然のことです。
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本書では、そんな現代を生きるあなたに向けて、会って得するための対面コミュニケーションのテクニックをご紹介します。
人と対面しての会話は、その瞬間瞬間が勝負です。うまく自己アピールできれば、確実に存在感を相手に印象付け、信頼関係を築くことができます。
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