IT担当者のあなたにおすすめ『Webサイト構築&運営がわかる本』池谷義紀


「会社のホームページをつくってくれ」

 

ある時突然そんな指示を受けて、私は思わず、え、と声を漏らした。けれど、何かを言う前に、上司は「じゃあ頼んだぞ」と言うだけ言って、自分の仕事に戻っていった。

 

自分の席に戻った私は、内心で頭を抱える。ホームページをつくってくれ? そんなこと、やったこともない。何をすればいいのか、何ひとつとしてわからなかった。

 

どうしてこうなった。職場にいるのが年配ばかりで、若いのが私くらいだからか。それとも、面接の時に「パソコンが趣味です」なんて言ったからだろうか。

 

たしかにパソコンは日常的に使っている。けれど、それにしたって動画を見るくらいで、自分でホームページを作るなんてことをやったことがあるわけがなかった。

 

でも、仕事を頼んできた時の上司のにこやかな顔。今さら「できません」なんて断りに行けば、その表情がどんなふうに歪むかは想像するにたやすい。

 

彼の笑顔は、「やれよ。できるよな。いや、できなくてもやるんだよ。わかったな?」と声なき声で言ってきているような気がした。にこやかな笑みの彼が、実はとても厳しい上司なのだということは、この職場にいる者なら誰もがよく知っている。

 

初日は、ホームページの作り方をネットで調べるだけで終わってしまった。正直、ネットでは情報があまりにも多すぎて、逆に何もわからない。いよいよこれは困ったことになった。

 

何か解決の糸口はないだろうか。そんな微かな望みの糸を辿るように、私は帰路の中途にある図書館に立ち寄ることにした。

 

パソコン関連の本のコーナーに行く。そこにも、何冊も本が並んでいて、何が良いのかよくわからない。その中で、一冊だけ、私の眼に止まったものがあった。その本を抜き出して、手に取ってみる。

 

タイトルには、『新人IT担当者のためのWebサイト構築&運営がわかる本』と書いてあった。それを見た瞬間、私の心に「これだ!」という確信が走ったような気がした。

 

新人IT担当者だなんて、まさに今の私のことじゃないか。つまり、この本は私のような人のための本ではないのか。そう感じたのである。

 

さっそく借りて、読んでみることにした。そもそも、Web構築なんて難しそうなこと、私にできるのかしら。そんな不安を胸中に抱えながら。

 

『Webサイト構築&運営がわかる本』を読んで、まるで教科書みたいだと感じた。学生時代、よくわからない教科書の内容を必死になって追いかけていたあの頃を思い出す。

 

そもそも、Webサイトとは何か、という基本中の基本の知識から始まり、どのように構築していくか、どのように集客し、運営していくか、というように話が展開されていく。

 

何より驚いたのは、外部の業者にWebサイト構築の委託をする時に気をつけなければならないことまで、事細かに記載してくれていることだ。

 

まさにWeb担当者のための本だと感じた。Webサイト構築についてのあらゆる状況での対処法がこの本には書かれている。

 

私は、そのさまざまな解説の中から、自分に必要なものだけを選び取って、読みふけることにした。読んでいくと、だんだんと、私の中に知識が降り積もっていく音がする。

 

ひととおり読み終わって、私はふうと一息つくと、集中していたために疲れた目をほぐした。今のところは、これだけわかっておけば十分だろう。

 

私はううんと唸った。たしかに、読む前と比べると、知識は身についたという自覚がある。何をすればいいのか、というのも、理解できた。

 

けれど、充分な知識を身につけたかと言えば、まだ不安が残っていた。言うなれば、私はまだWeb構築の表層を掬っただけであって、その奥深くにまでは潜っていないのだ。

 

より専門的に学ぶには、もう一冊読まないといけない。そう思った。この本に書かれている、『会社のWebサイトをまかされたときの最初の一冊』という言葉は、間違いではない。

 

つまり、この本はまだ入り口に過ぎないのだ。「Webサイトの構築と運営」という道の入り口に、ようやく私は立つことができたばかりだった。

 

 

Webサイトの教科書

 

今から20年近く前、インターネットという言葉が少しずつ馴染み始めた頃、筆者は初めてホームページを作り、インターネットの仕事に携わるようになりました。

 

ところが今では、パソコンだけでなく、携帯電話やスマートフォンも高速回線で、当たり前のようにインターネットにつながるようになりました。

 

無数にあるWebサイトやWebサービスのおかげで、何かを調べるための検索だけでなく、さまざまなことができます。

 

ただ、そこには必ずそれらのWebサイトやWebサービスを構築し、管理運営をしているひとりひとりのWeb担当者の存在があります。

 

まだまだ、その仕事が体系立てて確立されているとは言い難いWeb担当者という職種ですが、取り組んだ結果が数値で明確に出るところなど、他にはなかなかない、やりがいのあるおもしろい仕事だと思います。

 

ぜひ、このWeb担当者という仕事を楽しんでもらいたいと思います。

 

 

新人IT担当者のためのWebサイト構築&運営がわかる本 [ 池谷義紀 ]

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