「好き」を起点にした働き方『「好き」を「お金」に変える心理学』DaiGo


 彼は幼い頃、ひどく貧乏だった。がりがりに痩せていて、汚れた半袖からは骨のように細い手が伸びていた。

 

 

 そんな彼をみんないじめていた。彼と仲良くしていたのは、私くらいのものだった。

 

 

「いつか金持ちになってあいつらを見返してやる!」

 

 

 それが彼の口癖だった。子どもの頃の反骨心なんて長持ちしないものだけれど、彼はそうではなかった。

 

 

 彼は早くから遊ぶ時間を削って図書館に通い、ビジネス書を読みこんだ。学校の勉強も必死で努力し、クラスでいつもトップの成績を修めていた。

 

 

 彼に負けたいじめっ子たちはそのことが気に入らなかったのだろう。いじめはいっそう苛烈になったが、彼は挫けなかった。

 

 

 中学生になり、ようやくいじめっ子から解放された彼は、その秀才ぶりからクラスでも注目された。心優しくて頭の良い彼は、またたく間にクラスの中心人物にまでなった。

 

 

 私は友人の魅力を知っていたから、この変化を喜んだ。しかし、彼は目標のために驕ることはなく、学校の勉強だけでなく、ビジネスの勉強も続けていた。

 

 

 高校は別れることになった。彼の頭の良さについていけなかったからだ。彼は東京の名門高校に入学し、私は地元の普通の高校に進むことになった。

 

 

「お前がいたから僕は頑張れたんだ。感謝しているよ。また、いずれ、会おう」

 

 

 そういって彼と私は握手を交わした。その後、彼との親交はしばらく疎遠になる。ここからは、後に彼から聞いた話である。

 

 

 高校でも彼はトップの成績を保ち続けた。しかし、クラスの中からは次第に孤立するようになっていった。

 

 

 原因は彼がずっと続けてきたビジネスの勉強のためだった。その勉強は彼の考え方を大きく変えており、高校のクラスメイトの常識とはかけ離れていたからだ。

 

 

 いじめられるようなことこそなかったものの、クラスメイトたちは彼を異質なものでも見るかのように扱った。彼もまた、改善しようとせず勉強に打ち込み続けた。

 

 

「今にして思えば、中学の頃はお前がいたから良好な友人関係を築けたのだろうな。随分と、寂しい高校生活を送ったものだよ」

 

 

 彼にそう言われたときはさすがに照れ臭かったが。

 

 

 卒業した彼は起業した。労働者では金持ちになんてなれない。成功するには起業家になれねばいけない。とうとう今まで学んできたビジネスの知識を生かす時が来たのだ。

 

 

 彼は何度も失敗した。しかし、そのたびに立ち上がっては新しいことを始めた。

 

 

 そして、とうとう、彼は夢を叶えた。彼の企業は国内でも有数の大企業となり、彼は莫大な財産を持つ大富豪になったのだ。

 

 

お金と幸せのバランス

 

「お前は変わらないな」

 

 

 久しぶりに会った彼はそう言った。君は随分と変わったな。私がそう言うと、彼は苦笑した。

 

 

「僕は子どもの頃、お金さえ手に入れば幸せになれると思っていたんだ」

 

 

 いじめられるのは、もちろん嫌だった。しかし、彼は必死でやりくりしている父や母の姿を見ていたから、贅沢や我儘を言う気にもなれなかった。

 

 

「僕がいじめられるのも、父や母が悲しそうな顔をするのも、お金がないからだ。だから、お金持ちになろうって思ったんだよ」

 

 

 そうして実際になったんだから大したものだよ。君が頑張っていたのは私も知っている。私が賛辞を込めてそう言うと、彼は苦笑した。

 

 

「たしかに夢は叶った。僕はお金持ちになった。でも、だから僕は幸せかといわれれば、実はそうじゃない」

 

 

 彼の会社はライバル会社の多い業界だった。大人の汚いところが溢れている魔窟である。

 

 

 汚いこともたくさんしてきた。部下や役員から裏切られることもあった。周りは敵ばかりで、心から信用できる相手なんていなかった。

 

 

「たまに思うんだ。どうしてこんなことまでしてお金を稼いでいるんだろうって」

 

 

 でも、稼ぐことをやめたら、僕はまた子どもの頃みたいになる。若い頃の時間を全て投げ打って手に入れたお金だ。捨てるわけにはいかない。

 

 

 彼は疲れ果てていた。その表情はとても長年の夢を叶えた顔だとは思えなかった。

 

 

 私は先日読んだ、『「好き」を「お金」に変える心理学』という本に書かれていた言葉を思い返す。

 

 

 お金を稼ぐことが幸せにつながるんじゃない、と。彼はお金を稼いでいるけれど、きっと幸せではないのだろう。

 

 

 人生、ままならないものだね。なあ、友よ。私は内心で彼に向かって呟いた。

 

 

お金と幸せの関係を心理学で眺める

 

 あなたは今、お金の悩みを抱えていますか。あなたは自由に使えるお金がいくらあったら、十分だと感じるでしょうか。

 

 

 お金と幸せのバランスをわかっていない人は、いくらお金が入ってきたとしても、すぐに十分ではないと考えるようになります。なぜなら、自分が満足でき、充足する環境を知らないからです。

 

 

 自分にとっての適量がわかれば、満足し、充足して、幸せを感じることができます。

 

 

 あなたのバランスは整っているでしょうか。

 

 

 お金と幸せのバランスは、その成り立ちを知り、正しく対処していくことでいつからでも整えることができます。

 

 

 足りないのは知識と実践です。多くの方はお金の稼ぎ方と使い道に関しては大きな誤解をしたまま、お金と幸せの関係を薄っすらとしか理解せず、大人になっているのです。

 

 

 私たちは入ってくるお金が増えれば、幸せになることができると考えがちです。

 

 

 しかし、どんなにお金の稼ぎ方を知っていたとしても正しいお金の使い方を知っておかないと、人は幸せになれません。

 

 

 生きていくために稼ぎ方を知るのはとても重要ですが、幸せになるためにより大切なのは、使い方です。

 

 

 自分の好きなことを掘り下げ、自覚することでお金と幸せのバランスが見えてきます。お金について考えることは、あなた自身を掘り下げ、幸せにつながる道を探し出す行程でもあるのです。

 

 

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