将来の不安を打ち破る人生戦略『投資家みたいに生きろ』藤野英人


投資、と聞くと、つい耳を塞いでしまう。安定した生活が何よりも好きだった。投資なんて、その対極にあるようなものじゃないか。私にとっての悪夢は、大切な友人が投資にハマったことである。

 

「ねえ、やめなよ、投資なんて」

 

私が言うと、彼女は「またか」という表情をする。彼女が「投資にハマっている」とカミングアウトして以来、私は毎日のように彼女に忠告していた。

 

「やめないよ。将来のためだからね」

 

「ダメだって。絶対損するって」

 

投資といえば、いわばギャンブルのようなものだと思っている。ハイリスク・ハイリターン。リターンはたしかに大きいけれど、得たものも一瞬にしてなくなってしまう。そんな危険性があるじゃないか。

 

将来のため、なんて彼女は言うけれど、投資がどうして将来につながるものか。お金でお金を得るなんて不健全だし、働く気がないから逃げようとしているだけのように見えた。

 

投資をやめた方がいい理由なんて、山ほど出てくる。決まっている。それが甘い蜜を出す食虫植物だと、みんな知っているからだ。投資は身を滅ぼす。そのことを、誰もが知っているのだ。

 

「んー」と彼女は考える素振りをした。そして、カバンから一冊の本を取り出すと、手渡してくる。わからないまま受け取ると、そこには『投資家のように生きろ』と書いてあった。

 

「なにこれ」

 

「私が投資をやるようになったきっかけの本だよ」

 

「そう、じゃあ、この本が全部悪いんだね」

 

「いや、そうじゃなくて。ねえ、投資に関する本って読んだことある?」

 

「ない。決まってるじゃん」

 

なんて恐ろしいことを言うのだろう。投資を勧める本は悪書だ。言葉巧みに人の欲望を突っついて、投資という危険な道に送り出す詐欺師。その毒牙にかかれというのか。

 

「なら、その本、読んでみたら?」

 

「は? 嫌だよ」

 

「人に反対するなら、そのことを自分もよく知っていないと駄目じゃない? その本を読んで、投資のことをよく知って、それでも投資をやめるべきと思うのなら、少しは話を聞くよ」

 

よく知りもしないのに否定してくる今のあなたの話は、聞く気になれないからね。彼女はそう言うと、本だけ置いてその場から立ち去った。後には、私と本だけが残された。

 

読むべきではないとは思う。毒されてしまうかもしれない。でも、彼女の言うことにも一理あった。結局、迷った末に私は、その本を読んでみることにする。

 

その本は、まず投資とは関係のなさそうな、寿命の話から始まった。現代社会は、昔よりもはるかに寿命が延びている。その結果、定年を迎えた後も長い人生が続く、というのが現代だ。

 

年金制度が当てにならないのは、もう子どもでも知っている。つまり、働けるうちに将来の生活資金を貯めておかなければならない。そこから投資の話につながった。

 

けれど、この本に描かれている「投資」は、私のイメージしていたギャンブルめいた不健全なものではなかった。言葉巧みに騙されている、と思い込もうとしても、この本が間違っていないのだと、わかる。

 

投資とは、「エネルギーを投入して未来からお返しをいただく」ことなのだという。それはいったい、どういうことか。

 

すなわち、お金に限らず、有形無形にも限らず、今の自分が持っているものを未来のために使い、そのリターンを得る、ということだ。

 

もちろん、友人がしているような、いわゆる「会社の株を買う」というのも投資だ。だけど、その本質はお金を増やすところじゃなくて、未来ある企業の手助けをするところにあるという。

 

それだけじゃない。たとえば、感謝の心をしっかりと伝えること。これもまた、投資だ。そうしたところから得たつながりは、将来、「人脈」として助けになるかもしれない。

 

私は気が付いた。投資なんて金のことしか考えていない不健全なものだと思っていたけれど、そうじゃない。むしろ、そう考える人たちの方が、金のこと、自分のことしか考えていないのだと。

 

貯金をすればお金は動かず、一か所に留まってしまう。そうなれば、社会の経済は回らなくなって、景気が悪くなる。投資は、社会にお金を回す行為だ。それも、自分自身が応援したいところを選べる。

 

投資によって得られるものはお金だと思い込んでいた。でも、実は、未来からのお返しのひとつがお金だというだけで、本当は、もっと大切なものをいくつももらっているのだ。

 

翌日、私は読み終わったこの本を、友人に返した。友人に、「どうだった?」と聞かれて、私は少し考えた末に、答えた。

 

「あのさ、私にも投資、教えてくれない?」

 

そう言うと、彼女はとても嬉しそうににっかりと笑った。

 

 

投資は未来からのお返し

 

みなさんは将来のことを考えますか。もしかしたら、「なんとなくお金のことが不安だ」と感じているのではないでしょうか。その不安は、一体どこから来るのでしょう。

 

多くの人は、20歳くらいから働き始めます。そして、60歳で定年を迎えます。つまり、40年間働くことになります。その後、仮に100歳近い年齢まで生きるとすると、約40年間分の蓄えを用意しておかなければなりません。

 

ということは、”20歳から40年働きながら、老後の40年の貯蓄をつくっておかないといけない”という計算になります。これだけを見ると、かなり難しいことに聞こえるのではないでしょうか。

 

1970年、日本人の平均寿命は約67歳だったそうです。年金制度は、当時のそういった人々の面倒をみるものとして設計されました。しかし、平均寿命はどんどんと延び、国に老後の面倒をすべてみてもらうのは無理だ、という現実がやってきたのです。

 

これが、おそらくみなさんが抱える「お金の不安」の正体です。じゃあ、どうすればいいのでしょうか。今からやるべきことは、実は明確です。

 

将来に向けたお金の不安をなくす方法とは何か。1つ目は、「若いうちにたくさん稼ぐこと」です。2つ目は、細く長く暮らしていくよう「支出を抑えること」です。

 

私が投資家の立場として伝えたい解決法は、この2つとは別の方法です。投資家的な解決法。その1つ目は、「長く働き続けること」です。2つ目の方法は、「収入の一部を投資に回すこと」です。

 

将来の不安をなくすための戦略は、先ほどの2つの方法と投資家的な2つの方法しかありません。そして、そのどれかが正解というわけではなく、1人1人が収入や生活に応じて4つを組み合わせていくのです。

 

 

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