スケジューリングがカギを握る『仕事は「段取りとスケジュール」で9割決まる』飯田剛弘


「お前まだその作業してるのか! まだまだ仕事はあるのに、いったいその作業に何時間かけるつもりだ!」

 

「すみません……」上司の怒声に反射的に謝りながら、「でも」と心の中ではもうひとりの自分が言い訳をしている。口には出さないけれど、正当な理由だと思っていた。

 

そもそも、当然のことだが、これほど作業が長引くとは私自身思っていなかったのだ。作業自体は簡単だし、溜まっている仕事の方も進める算段すら立てていたほどだった。

 

しかし、作業の途中でお客様に呼び出されて接客をすることになった。何事もお客様が第一なのは当然、接客を後回しにするなどできない。その後も何度か、作業途中に接客が割り込んできて、一向に捗らなかった。

 

さらに、電話対応まで挟まってくる。この時点ですでに頭がぐちゃぐちゃになっていた。電話を対応したせいで、担当への連絡を優先しなければならなかったからだ。

 

ようやく終わって自分のデスクに戻り、さあ続きだと始めようとしたら、今度は上司から仕事を言い渡される。

 

どう考えても優先すべき作業ではなかったが、上司からの指示を無視するわけにもいかない。私はため息をついて自分の作業を中断した。

 

今日一日、ずっとこんな感じだった。作業が終わっていないのは、間にいくつものタスクが割り込んできたせいだ。怒るのなら、私じゃなくて指示をしてきた上司を怒ってくれとすら思っている。

 

結局、今日もまた残業して閉店時間まで仕事をしていた。おかしい。早出だったのだから、今日は早めに帰ってゆっくりしようと思っていたのに。

 

いや、そもそも、ここ数日はずっとこんな毎日だった。簡単な作業のはずなのに全然終わらない。日常業務は簡単でも、決して疎かにできない必要な仕事である。

 

日常業務すら終わらないのだから、期限が長い仕事に至ってはまったく手すらつけることができないでいた。

 

先週はとうとう、休日出勤してまで作業を進めていたのである。にもかかわらず、また今週も休日出勤しなければならなくなりそうだった。

 

おかしい、おかしい。どうしてこんな社畜みたいなことになっているんだろう。仕事をそんなにやる気はなかった。残業なんてしたくもないのに。終わらない。仕事が終わらない。

 

「よお、最近しんどそうだな」

 

「ん、ああ、おつかれ」

 

突然、声をかけてきたのは同僚だった。彼は私と同じ時期に会社に入ってきたのだが、私とは正反対の優秀な奴だった。上司に覚えめでたく、後輩からも頼りにされる。友人だったが、多少の引け目を感じていた。

 

「忙しいのか、最近」

 

「それがさあ……」

 

私は彼に、自分の仕事が全然進まなくて終わらないことを説明した。彼は私よりも多くのタスクを抱えているはずだが、必ず定時であがっているのをよく見かける。

 

「君はすごいよね。ちゃんと仕事終わらせてるんだもん」

 

「俺もできなかったよ、最初」

 

「えぇ、うそだぁ」

 

「ほんとほんと、実は、俺も最初の頃できなくてへこんでてさ、で、ちょっとやり方を変えてみたんだよ」

 

「やり方を、変える?」

 

ほら、これ。彼がそう言ってカバンから取り出したのは、一冊の本だった。『仕事は「段取りとスケジュール」で9割決まる』と書かれている。

 

「この本買ってみてさ、実践したんだ。びっくりしたよ。書かれているのが、その頃の俺に全部当てはまってたんだ」

 

仕事の合間に仕事が入ってくること。やりたいことが溜まっているのに全然できないこと。余裕だと思っていてもいつの間にか時間がなくなってしまっていること。そういったことが、全部書かれているのだという。

 

同じだ、私も。思わず、そう思った。

 

「これ、よかったら貸すよ」

 

彼はそう言って、その本を私の手に差し出した。私はその表紙をぼんやりと見つめる。私もこれで変われるのだろうか。とにかく、実践してみよう。私は彼から借りたその本を、決意に満ちた力で握りしめた。

 

 

あなたではなくやり方が悪い

 

「もう少し余裕を持って仕事をしたい」と思ったことは誰しもあるでしょう。そこで、「手帳を活用して予定を管理しよう」と決意します。でも、気づけば、挫折……。

 

これは、あなたの意思が弱いからでしょうか? そんなことはありません。やる気があっても、うまくいかないことはよくあります。多くの人が仕事の進め方や期限を守ることに悩んでいます。

 

なぜ、このようなことが起きるのでしょうか? それは、あなたのやり方がズレているからです。無駄な努力をしないためにも、今の時代に合った仕事の進め方に変えていく必要があります。

 

そもそも、あなたのスケジュールは最適化されていますか? スケジューリング成功の鍵は、努力や根性ではありません。やるべきことを合理的に、無駄なく管理し、実行していくことです。

 

スケジュールを組む力を身に着ければ、ひとつひとつの仕事に集中でき、早く仕事を終わらせ、成果を出せるようになります。

 

ミスも減り、慌てずに仕事を進められ、期限を守るだけではなく余裕も生まれます。その結果、残業も減らせるようになります。

 

本書が、あなたの仕事における「スケジュール管理」を少しでもアップデートできれば幸いです。さあ、前に進もう。ページをめくろう。時間がもったいないから。

 

 

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