おかたづけで仕事をラクに『見違える、わたしの仕事時間』Emi


「ええと、一昨日のファイル、どこに行ったっけ……」

 

 

 私は首を傾げて、デスクの上のものを押しのけていく。上司から早くするよう言われている。急がなければ。

 

 

 デスクの上には今にも零れ落ちそうなくらい、モノで溢れていた。ボールペン。メモ帳。ファイル。とにかく、いろいろ。

 

 

「あ」

 

 

 やっちゃった。横積みになっていたファイルを無理やり引き抜いたせいで、雪崩が起きる。書類やファイルが床に散らばった。

 

 

「すいません、すいません」

 

 

 隣のデスクの男性社員に謝って、散らばった書類をかき集める。彼も手伝ってくれた。ありがたい。けれど、目的の書類は見つからない。

 

 

 もう間違って捨てたことにしようか。面倒くさいし。なんて思っていたところに、ようやく目的のものが見つかった。それを持って、急いで上司のもとに駆けつける。

 

 

「遅いわよ! なにやってるの!」

 

 

 うん、怒られるよね。知ってた。上司から下されるいつもより長いお説教を、顔を伏せて聞き流す。

 

 

「あんたさあ、見てたよ。朝の」

 

 

 お怒りだったねぇ、あの人、結構優しいのに。友人のリカちゃんが呆れたように言う。私はしょぼんと肩を落とした。

 

 

「ファイルが見つからなかったんだよ。私のせいじゃないし」

 

 

「いや、あんた以外の誰が悪いのよ」

 

 

 掃除しなさいよ、あのデスク。あんたのデスクだけ腐海みたいになってるじゃない。指摘されて、いっそう私は肩を縮めた。それほどじゃないし、という言葉は、我ながらあまりにも力がない。

 

 

 自分のデスクが汚いという自覚はあった。けれど、どうしようもない。整理する暇がないほど仕事を回してくる上司が悪いと思うんだ、私。

 

 

「時間がないんだよ、忙しくて」

 

 

「バカね。時間をつくるために片づけするんじゃない」

 

 

 リカちゃんにバッサリ言い切られて、私はいよいよ反論もできずに黙り込んでしまう。彼女の部屋は、まるで雑誌のモデルルームみたいにきれいだった。

 

 

 私は家の片づけが昔から苦手だった。それでも、実家にいた頃の方がましだった。一人暮らしを始めてからの我が家は、それはもう、リカちゃんが絶句したほどだ。

 

 

 食べた後のコンビニ弁当のごみ。乱雑に脱ぎ捨てられた服。ベッドから落ちたぬいぐるみやクッション。

 

 

 私のデスクは、そんな私生活の一部を持ってきたかのようだ。

 

 

「さすがに今回みたいなことが何度もあったらシャレにならないよ」

 

 

「だよねぇ」

 

 

 自分でもわかっているのだ。片づけなくてはいけない、と。けれど、いつも仕事の忙しさに追われて手が出せない。それに面倒くさいし。

 

 

「リカえもん、なにか片付けがラクになる道具とか、ないの?」

 

 

 誰がリカえもんよ、誰が。彼女はそう言った後、ちょっと考え込んで言った。

 

 

「片付けがラクになる、わけじゃないけれど、どんなふうに片づけたらいいかアドバイスしてくれる本ならあるよ」

 

 

「え、ほんとに?」

 

 

 見せて見せて。私がせがむと、彼女はカバンから一冊の本を取り出した。

 

 

「『見違える、わたしの仕事時間』?」

 

 

「そう。これを参考にするといいわ。貸してあげるから」

 

 

「ありがとう」

 

 

 私は自分の手元にあるその本をじっと見た。よく見れば、何度も読みこんだような指の跡が紙の端に残っていて、側面から、たくさんの付箋が飛び出している。

 

 

 リカちゃんは恥ずかしげに頬を桜色に染めながら、照れ臭そうに人差し指で頬を掻く。

 

 

「実は、私も昔、デスクが汚かったんだよね」

 

 

「えっ、そうなの?」

 

 

 でも、すごいキレイじゃん。とても信じられなかった。彼女のデスクは会社でも一、二を争うほどきれいで整っている。

 

 

「その本を読んで、実践してみたの。ほんとに見違えたから、家でも実践できることは、同じようなことをしてるわ」

 

 

「そうだったんだ……」

 

 

 私はその本をじっと見た。いわば、この本のおかげで彼女は変われたということだ。

 

 

 私も変われるだろうか。自分のデスクをちらりと見る。汚い。ついさっき雪崩を起こしたばかりのデスクは、いっそうひどくなっていた。

 

 

 私は本のページをめくってみる。それが、今にして思えば始まりだったのかもしれない。

 

 

片づけることで何もかもがうまくいく

 

 最初は、ほんのささいなこと。山盛りになっていた引き出しのペンを、よく使っているものだけを残して手前に収納。

 

 

 小さなことでも、ひとつひとつ積み重ねていくうち、仕事も、暮らしも、前よりうまく回っている気がする。

 

 

 本当に小さなことで、人は驚くほど前向きになれる。そして、また新たな工夫がしたくなる。うまく回る快感を知ることで、次の一歩が踏み出せます。

 

 

 ワクワクを感じられる瞬間が、仕事でも、実はたくさんあります。

 

 

 職場の人間関係や、仕事内容は簡単には変えられないけれど、自分がささやかな工夫をしたり、気持ちを切り替えたりは今すぐできること。すると同じ環境でも、景色が少しずつ変わり始めます。

 

 

 仕事の工夫を探すとき、大切にしたいのはどうしたら”ラク”になるか? という視点。ラクするというのは、小さな不便をそのままにしないということでもあります。

 

 

 たった数秒のことでも、毎日であればやがて積み重なって自分の時間を増やしてくれます。

 

 

 来年の目標を考える、家族と少し長く過ごす。そんな時間が、仕事をもっと楽しくしてくれます。

 

 

 デスクと気持ちのちょっとした片付けで、仕事時間は見違えるはず。そして、その先にあるのは、大事にしたい家族との充実した時間です。

 

 

 仕事がうまく回らない時、疲れた時に、手に取っていただき、何かひとつでも参考になることがありましたら幸いです。

 

 

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