一生を支える折れないメンタルの作り方『本当の「心の強さ」ってなんだろう?』齋藤孝


強くなりたい、と思ったのは、小売業の店員として働いていた頃のことだった。当時は体力も精神力もズタボロで、うつ病を理由に会社を去ったのは、就職してから一年目である。

 

上司からの重圧、客からのクレーム対応、アルバイトの老人からは半ば奴隷のように扱われ、何かしらミスをすれば大小問わず怒られた。サービス残業なんていつものことで、時に仕事が終わっていない時は、休日にすらも無給で会社に来て働いていた。

 

環境が苦痛で仕方がなかった。自分の手首にカッターナイフを押し付けたこともある。もちろん、実際に切ってはいないが、その衝動は今でも忘れがたい。

 

自分の心が弱いという自覚は持っていた。今でも、感情に振り回され、苦しむ時がある。そんな時にはいつも、「こっと心を強くせねば」と思っていた。

 

齋藤孝先生の本に、『本当の心の強さってなんだろう?』という本がある。ちょうど今の仕事に疑問を持っていた頃、その本を手に取って読んでみたのだ。

 

「心の弱さは性格じゃない。むしろ、性格だからと思い込むことこそが問題」

 

その言葉を見た時、私は思わずはっとした。今まで私は、心の弱さを性格だと思っていた。そして、治らないものなのだと信じ、諦めていた。だが、齋藤先生は違うというのだ。

 

「メンタルの強さとは、生まれ持った資質ではなく、自分で身につけていく力です」

 

どんな苦境にも、必ず最後は立ち上がることのできる「柳」のような精神。そんなふうになることを目指すよう、先生は言った。傷つかないことではなく、再起することができるようになるのが大事なのだ、と。

 

私は目が覚めたような気がした。心の強さとは何か。今まで、自分の心が傷付かないように、必死で感情を殺してきた。苦しい時でも、苦しくないふりをしてきた。それこそが、強さだと信じて。

 

だけど、そんなことをしていると、心が死んでしまう。強さとは、「鋼」のように硬いことではないのだ。それは、本当の強さではない。

 

私たちは人間だ。傷つきもする。負けてもいい。逃げ出してもいい。怒ったり、泣いたり、寂しがったり。恥ずかしいことだってあるかもしれない。喧嘩する。仕事が嫌になる。そんな日もあるだろう。

 

私はずっと、自分の弱い心を必死に「鋼」にしようとしてきた。何も感じないように。何にも傷つかないように。心を固く閉ざし、感情を表に出さず、いつしか楽しみも怒りも哀しみもなくなった。

 

でも、それは果たして、人間だと呼べるのだろうか。

 

苦しいこともある、失敗もする、傷つくこともある。人間は完璧じゃない。完璧になれないし、それこそが人間のいいところだろう。

 

傷つき、苦しみ、怒り、悲しむ。それは、機械にはできない、人間だけの特権だ。心の弱さがあるからこそ、人間は人間としての魅力があるのだと思う。

 

心が弱いこともまた、考え方次第なのかもしれない。昔の余裕がなかった頃と違って、今の私は、そんなことすら思うようになっている。

 

 

柳メンタル

 

きみは、心の強さに自信がありますか? たとえば、こんな自分にモヤモヤすることはないですか?

 

「傷つきやすくて、ちょっとしたことですぐへこんでしまう」「失敗するのが怖くて、積極的になれない」「コンプレックスがあって、自分に自信がもてない」「何かをやろうと決めても、途中でくじけてしまうことが多い」……

 

メンタルの弱い人は、不快なできごとへの対応力が弱いのです。メンタルを強くするとは、感情に振り回されなくなること。そういう状況に対処する能力を高めることです。

 

傷付かなくていいことに傷付かなくなる。悩まなくていいことに悩まなくなる。今よりも自信が持てるようになる。だから心がラクになり、楽しく、幸せに過ごせるようになります。

 

「でも、これは性格の問題だから仕方がない……」もしそう思っているのだとしたら、大きな勘違いです。メンタルの弱さは、性格のせいではありません。むしろ「自分はこういう性格だから」と決めつけてしまっている姿勢にこそ問題があります。

 

メンタルの強さとは、生まれ持った資質ではなく、自分で身につけていく「力」です。そして、自分を守るための武器でもある。

 

強い精神力があることを、よく「鋼のメンタル」と言います。しかし、ぼくがきみたちに身につけてほしいと考えている心の強さは、「鋼」のようなメンタルではありません。

 

たとえるなら「柳のメンタル」。しなやかで折れない、打たれ強い、再生力があってたくましい――。目指してほしいのは、そんな柳のようなメンタルです。

 

ぼくは、心の強さにもっとも必要なものは「へこたれずに再起する力」だと思っています。どんなネガティブな状況になっても、柳のようにしなやかに立ち直れるようなメンタルを手に入れる。目指すのはそこ。

 

そのために何を心がければいいのか、ストレスをため込まないようにするには何をすればいいのか、へこんだ心、傷付いた心をどうリカバーすれば再び力が戻ってくるのか、心を強く保てるようにする方策を具体的に説明しましょう。

 

 

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