玄米や豆は食べてはいけない!『食のパラドックス』スティーブン・R・ガンドリー


 その本は衝撃だった。今まで私が痩せると信じて続けてきた食事。それが間違いなのだと、突き付けられたのだから。

 

 

 タイトルを、『食のパラドックス』といった。作者はスティーブン・R・がんドリーという人。お医者様らしい。

 

 

 私がダイエットをしようと思ったのは二十歳の頃だった。ふと、鏡を見て、私は愕然とした。

 

 

 学生の頃はずっと痩せていた。食べても太らない体質で、クラスメイトからは羨ましがられていた。

 

 

 それが、二十歳の手前、大好きだった彼と別れた。それがきっかけだったのかもしれない。

 

 

 やけになったように食べた。食べて、食べて、吐くまで食べていた。食べても食べても、まだ足りないような感じがした。

 

 

 私が鏡を見たのは、失恋の傷が癒えて、正気に戻った時だ。しかし、その時にはすでに遅かった。

 

 

 鏡の中にはでっぷりと脂肪を蓄えた、醜く太っている女がいた。私である。その時、私はようやく、生まれて初めてのダイエットを決意した。

 

 

 最初の頃はかなり苦労した。何度も挫折を繰り返し、リバウンドも経験したことがある。

 

 

 けれど、どうにか自分なりの食事を確立した。これを続ければ、痩せることができる。そう思っていた。

 

 

 お菓子やファストフードなんてもってのほか。毎日運動をして、全粒穀物を主食に選ぶ。

 

 

 脂肪分の多い肉を少なめにして、低脂肪の乳製品や野菜を食べていた。参考にしたのはネットやテレビだ。

 

 

 けれど、何かがおかしいと気が付いた。ちっとも痩せない。それどころか、太っているようにすら思えた。

 

 

 どうして。紹介されていた通りのやり方を続けているのに。その疑問には、誰も答えてくれない。

 

 

 『食のパラドックス』を読んだのは、そんな時だった。それは、今まで別の本や雑誌で紹介されていた常識を覆すものだった。

 

 

 レクチン。それこそが、太らせていく原因なのだという。どのダイエット本にも、その名前は載っていなかった。

 

 

 食べれば痩せるという方法ではない。特定の食品を食べなければいいのだ。その本には、そう書かれていた。

 

 

 ダイエット食品が数多く、テレビや雑誌で紹介されている。○○ダイエット、なんて、耳にタコができるくらい何度も聞いた。

 

 

 けれど、その本は『それらを食べる』ではなく、『ある食べ物を食べない』ことで痩せる、というものだ。

 

 

 それは、小麦や大豆、トウモロコシ。つまり、主食とされているものや身体に良いとされているものだった。

 

 

 衝撃だった。当たり前のように食べているパン。豆腐や納豆。ジャガイモ。それらが、太っている原因だったなんて。

 

 

 それだけではなく、全粒粉のパンや玄米といった、身体に良いと話題になったものですら、レクチンが含まれている。

 

 

 そして、果糖が多い果物。これはたしかにダイエットについては賛否両論あった。

 

 

 とはいえ、フルーツダイエットなるものもある。けれど、その本では果物それ自体を『食べない方がいい』と断言している。

 

 

 それどころか、種のある野菜は果物に分類されるらしく、キュウリやカボチャ、トマトも、食べない方がいいのだという。

 

 

 プラントパラドックス。その本では、健康になるための食生活を提案するプログラムを紹介していた。

 

 

 私はそれを眺める。記憶の中にとどめる。

 

 

 その本が正しいかどうかはわからない。けれど、今までのダイエット法では痩せなかった。それが現実なのだ。

 

 

 今まで主食として食べてきたもの。それを、断つ。今までにないくらい、そのダイエットは厳しいもののように思えた。

 

 

 私は鏡を見る。変わらない、自分のでっぷり太ったお腹。そこに抱えられた脂肪は、私の体内に詰まった毒そのものだった。

 

 

 私はふうと息を吐く。ぐっと拳を握り締め、立ち上がった。決意は固まった。私は痩せるんだ。鏡の中で、痩せた私が笑ったような気がした。

 

 

レクチンフリーな食生活

 

 「健康的」な食事法を実践し、ファストフードなんてほとんど食べず、低脂肪乳製品と全粒穀物を取っていた。ジムにも毎日通い、週に50㎞以上も走った。

 

 

 健康対策は万全だと思っていた。だが心中の声はしつこく私を悩ませていた。「もし対策万全なら、どうしてこんな体調なんだい?」

 

 

 あなたも何かがおかしいと気づいているはず。ただ、その「何か」がわからないだけだ。

 

 

 あなたの健康問題は、あなたのせいではない。

 

 

 だが、改善するためには、健康的な暮らしについての既成概念がそっくり問い直されるものと思ってほしい。本書は、私たちの生活文化に組み込まれている過ちを正し、飲み込みにくい概念をもたらす。

 

 

 あなたを病気にし、疲れさせ、活力を奪い、太り過ぎにし、ぼんやりさせ、痛みをもたらしているものの正体を明かす。厄介払いできれば、あなたの暮らしは変わる。

 

 

 元通りにできるから、心配はいらない。身体を治し、健康的な体型を取り戻せるのだ。

 

 

 私たちは最初の分かれ道で間違った方に歩み出し、それからも道を誤ってきた。本書は正しい道に戻るための地図であり、その手始めは私たちが主食にしているある種の食べ物に対する過剰な依存を正すことだ。

 

 

 あなたの考案するプログラムをやり遂げれば、あらかたの健康問題を克服し、健康的な体型を手に入れ、かつての活力を取り戻し、ほがらかになれると約束できる。

 

 

 さあ、ページをめくって。一緒にあなたの人生を変えていこうではないか。

 

 

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