図太い人になる頭の使い方『人に強くなる極意』佐藤優


生きるのはツライ。自分を取り巻く社会はあまりにも厳しくて、葦より弱い私は身も心もボロボロになっている。強くなりたいな。その願いは遠く、遠く。

 

教室の真ん中でキャピキャピ騒いでいる集団を、ぼんやりと眺める。彼女たちは楽しそう。彼女たちのように笑って過ごせたなら、どんなにいいだろう。私は彼らの目に留まらないよう、隅っこの影で身を丸めるだけ。

 

どうして私はこんなにも卑屈になっているのだろう。そう思うこともある。彼女たちと私の何が違うのか。そう奮い立たせようとしても、どうしても話しかけることなんて恐ろしくてできない。世界コワイ。ニンゲンコワイ。

 

放課後、逃げるように図書室に逃げ込む。いつも人のいない静かなその場所は、学校の中で、いや、世界で唯一の私の居場所だった。その場所だけが、私を受け入れてくれる。ここでだけ、私は生きている。

 

本の背表紙を眺めていると、心が落ち着いた。こんなことをしていても、コミュ障がますますひどくなっていくだけということはわかっている。でも、どうしても勇気が出てこなかった。

 

背表紙を指でなぞっていると、ふと、一冊の本が目に入った。『人に強くなる極意』。佐藤優という人が書いているらしい。

 

興味を惹かれて読んでみると、どうやら、この著者、外務省に勤めていたけれど、罪に問われて拘留された経験すらあるのだという。

 

そんな人が、人に強くなるノウハウを教えてくれる。これは、ためになるに決まっているじゃないか。そう思って、私はこの本こそ私が求めていた希望だと感じた。

 

その本はいくつかのテーマに分けられている。「怒らない」「びびらない」「飾らない」「侮らない」「断らない」「お金に振り回されない」「あきらめない」「先送りにしない」。

 

私の心にグサッと刺さる。全部できていない。怒りっぽいし、びびりだし、飾っちゃうし、そのくせ侮ってるし、断れなくて、お金に目は眩む、諦めが早くて、嫌なことはどんどん先に送ってしまう。

 

やっぱり、私は駄目なんだ。自分でもわかってはいたけれど、読もうと思って信じていた本に言われるとなおさらに傷ついた気がする。

 

もう、読むのをやめてしまおうか。いつもの駄目な私が顔を出す。ネガティブで、傷つきやすくて、後ろ向きな私が。

 

でも、ここで勇気を出さないと、私は何も変われないのだろう。この本を読んで、私は強くなるんだ。友達もたくさん作るんだ。

 

本を読んで学ぶにしても、強くなるにしても、勇気をもって一歩を踏み出さないことには何も変わることはできない。傷ついて、傷ついて、そうして強くなっていくんだ。

 

外務省で勤めていたのに、不当な罪で捕まって、厳しい追及にも耐えてきた佐藤先生。職を失い、長年の自由も奪われ、先生の罪状とされている情報は、今も調べればネットで見ることができる。過去は消えない。

 

それでも、拘留生活の中でも読書を続けて学び、お世話になった上司を裏切る証言をしろという甘言を退け、そして拘留生活が解かれた今、『人に強くなる極意』をはじめ、いろんな本を出版して活躍の幅を広げている。

 

私もこの本を読めば、先生みたいになれるだろうか。いや、そうじゃない。強くなるために、変わらなければならないのは、私。この本は、その背中をそっと押してくれる。

 

よし、と決意して、私は本を閉じた。本を読んでいても友だちは増えない。でも、この本は、私に現実と向き合う勇気をくれた。話しかけてみよう、あの子たちに。私は無人になった図書室の扉を閉めた。

 

 

図太い人になろう

 

本書には、近未来、日本が大きな変化に巻き込まれることを想定したうえで、われわれ一人一人が生き残るにはどうすればよいかというノウハウを記している。

 

現在、世界は大きく変化しつつあるが、それには二つの異なったベクトルがある。

 

ひとつ目は、グローバリゼーションの本格化だ。ヒト、モノ、カネが国境を越えて行き来するようになる。中国やインドの労働者やエンジニアとの競争が激化し、特殊な技能を持つ人を除いて、日本人の賃金は低下していく。

 

二つ目は国家機能の強化だ。上手に交渉すれば、歯舞群島、色丹島は近い将来日本に返還され、国後島、択捉島についても何らかの妥協が成立するかもしれない。

 

こういう大きな時代状況の変化について、「私とは関係ないことだ」と思ってはならない。大きな与件の変化は、ひとりひとりの日常生活に必ず影響を与える。

 

正社員として働くことは一層難しくなる。正社員として働くには、ブラック企業しか選択肢がないという状態になるかもしれない。このような状況に対応できる人間力を強化することが必要であり、そのための基本技法をこの本で披露した。

 

「怒らない」「びびらない」「飾らない」「侮らない」「断らない」「お金に振り回されない」「あきらめない」「先送りしない」という8つのテーマを定めて、それに関する私の考えをできるだけわかりやすい言葉で記している。

 

私は、真理は具体的であると考える。いくら立派な内容であっても、それが実際に役立たなくては意味がない。本書に記された内容は、標準的な努力ができる人なら確実に実行できることだけだ。そこから、本書は究極の実用書であると私は考えている。

 

 

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