「この本、読んでみて。おすすめだよ」そう言って会社の上司が勧めてきたのは、一冊の本だった。タイトルには、こう書かれている。『フィンランド豊かさのメソッド』。
フィンランド。正直なところ、あまりイメージがない。でも、どことなく「豊かな国」というイメージがあるのは、テレビでそう言われているのを見たことがあるからかもしれない。
まず真っ先に思い浮かんだのは、サンタクロースだ。サンタクロースの故郷は、フィンランドにあるらしい。そんな話を、どこかで聞いたことがある。
調べてみたら、フィンランドには「サンタクロース村」と呼ばれている場所があるらしい。そこでは一年中サンタに会えるという。北側の国で雪も多いから、イメージもぴったり。
次に出てきたのは、テレビのコマーシャルなんかにもたまに登場してくる「ムーミン」だった。カバが立ったようなかわいらしい姿の、けれど謎が多いイキモノ。
あまり詳しくはないけれど、ちらちらとアニメを見たことがある。ミイの毒舌やスナフキンの言葉には思わずはっとさせられることが多くて好きだった。今ではもう、その記憶もうっすらとしかない。
というのが、私が知っているフィンランドのすべてだった。けれど、この本のページを開いたとき、そこには私の知らないフィンランドの姿があった。
フィンランドが教育という一面において世界でもトップをひた走っているという事実を、私は知らなかった。フィンランド人本人も驚いているらしい。
けれど、この本の著者が言うには、フィンランド人の子どもが必死に勉強させられ、かつての日本のような詰め込み教育をされてきた、というわけではない。むしろ、授業はさぼるし、学校を休む子も少なくはないという。
ならば、どうしてか。フィンランドの学校は日本とは大きく違っている。読んでみると、私たち日本人の常識とはかけ離れたことばかりだった。
ひとつのクラスの人数は少ない。多い年だと、二つに分けて授業をするという。こうすることで、先生がひとりひとりに対してより深く教えることができるようになる。
授業も、日本みたいに暗記が中心の詰め込み教育ではなく、ほとんどが論述らしい。ウィンタースポーツの国というだけあって、外で遊ぶことも推奨されている。
フィンランド人はほとんどが数か国の言葉を話すことができるらしい。フィンランド語は普段はあまり使われず、ほとんどは英語になっているそうだ。
フィンランドの文化を紹介しているこの本の中で、驚いたのは、フィンランド人はしばしば家の外に赤ちゃんを置いていくのだということ。寒い寒い北国なのに。
どうしてかというと、外のほうが空気がきれいだからなのだそう。赤ちゃん自身も外が大好きで、喜ぶらしい。氷点下に行かなくても「寒い寒い!」と叫んでいる日本人とは大違いだ。
今まではまったく知らなかったし、意識もしていなかったフィンランド。知れば知るほど、日本とは大きく違っている。
けれど、それも当然なのだ。日本には日本の、フィンランドにはフィンランドの習慣がある。でも、違っているからといって、それだけで終わらせるのも、あまりにもったいないじゃないか。
かつて世界でも存在感が強かった日本という国は今ではすっかり落ちぶれて、今後もますますひどくなっていくだろう。
たいして、かつて経済的に破綻していたフィンランドは、今では「世界でもっとも競争力が高く、豊かな国」になった。
「フィンランドはフィンランド」「日本は日本」で終わらせるのではなく、学べるところは学ぶ。フィンランドの教育や文化の素晴らしさは、すでに結果が証明している。
「寝る間も惜しんで一生懸命努力する」「とにかく暗記して覚える」という日本の価値観では、もう、通用しなくなってきているのかもしれない。
世界にはこんなにも素晴らしいお手本がいくつもある。自分たちの文化も大切だけれど、たまには日本の中だけじゃなく、世界の他の国に目を向けてみるべきなのかもね。
ウィンタースポーツ、サウナ、教育
「へ~フィンランド? フィンランドってどんな国?」これが、今まで何度も聞かれ、そしてこれからも聞かれ続けるであろう質問である。
実はよく気を付けて見てみると、近年テレビや雑誌で「フィンランド」という言葉を耳にすることが日本でも多くなってきた。
とくに、2004年に公表された、経済協力開発機構の国際的な学習到達度調査で、フィンランドの中学生たちが世界トップの成績をあげて以来、世界中でフィンランドの教育に注目が集まりつつある。
教育はもちろん、フィンランドには、日本や他の国も見習いたいこと、フィンランド人や文化の不思議なところ、私たちが普段知らないことがたくさん埋もれていて、なかなか奥が深いのだ。
「フィンランドといえば……」この後に、どんなことを思い浮かべるだろうか。
サウナ、サンタクロース、ムーミン、キシリトール、冬のスポーツ、福祉の国、オーロラ、森と湖、ノキア、IT産業、教育……。
この中に、皆さんの思い浮かべたものがひとつでもあっただろうか。何のことだかわからない、何も思い浮かばなかったという方も、どうぞご心配なく。この本を読み終わるころにはきっとあなたもフィンランド通になっているでしょう。
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