品格ある女性になるために『女性の品格』坂東眞理子


ことに女性というものは生きにくいものだと感じるばかり。それは女性の権利が認められるようになった現代であっても。今もなお、それは道半ばであるように思うのです。

 

坂東眞理子先生の『女性の品格』という本が大いに話題となりまして、どれ私も読んでみようとみたところ、品格ある女性に憧れて、その本をバイブルとして持ち歩くようになったのは、もう何年か前のことです。

 

品格ある女性となるには、どうすればいいか。そのことをエッセイ風に書かれたその本はなんとも読みやすく、まるで溶けていくように私の頭に入ってくるのです。おかげで文章に弱い私でも苦もなく読むことができたのも、その本に魅了される大きな要因のひとつだったでしょう。

 

以来、私はその本に書かれていた「品格ある女性」を目指し、日々心掛けて生きてまいりましたけれど、ここに至って、近頃はどうにも、少しばかり疑問に感じることも増えてきたのです。

 

品格、とは、そもそも何でしょう。その人自身が持つ気品。品位。この本は、変化の中で崩壊しつつあった女性の品格に基準を設けようとしました。

 

ですが、最近の私は思うのです。品格とは、他者から用意されるものではないのではないか、と。個人が胸に抱く信念、それが生き方や、表情や、雰囲気として表層に現れるのが、すなわち「品格」ではないかと思うのです。

 

かつては、社会に共通した品格があったのでしょう。ですが、かつて「大和撫子」という理想の女性像が明確に存在した時代は、もう終わってしまいました。

 

慎ましい女性、仕事のできる女性、恋多き女性、心優しい女性、強い女性、かっこいい女性、今や、女性の生き方は数多くの道に分かれました。そして、誰もが望む道に行くことができるようになったのです。

 

『女性の品格』に描かれている女性は、いわゆる「現代における大和撫子」といったところでしょうか。もちろん、それもまた、ひとつの道ではあるでしょう。

 

ですが、女性としての品格はその道ひとつなのかと問われれば、私は否だと思います。それぞれの女性には、それぞれの品格があるのです。それは、杓子定規に決められることではないでしょう。

 

結婚せずに男性に混じって働くキャリアウーマンほどかっこいい姿はありません。多くの男性遍歴を持つ女性は、それだけ人の心を魅了する魅力を持った人だということです。力強い女性は時として男性よりも頼りになるでしょう。

 

坂東眞理子先生は『女性の品格』の中で、若い女性にみられる言葉の乱れや、服装の乱れ、乱暴な態度に批判的な目を向けています。

 

なるほど、たしかに、かつての慎ましさを美徳としてきた女性を見てきたならば、彼女たちのそういった振る舞いは目に余るかもしれません。「品格がない」と、憂慮するのもわかります。

 

ですが、そんな彼女たちの行動は、社会に流行を生み出しました。乱暴な態度も、「自分」という確固とした存在を持っている証左であるように思うのです。

 

「水清ければ魚棲まず」という言葉があります。坂東先生の説く「品格ある国家」はたしかに美しい。ですがそれは、「清き水」と同じだと思うのです。

 

この本を読んだ当時の私は、そんな「品格ある人」に憧れていました。ですが、今は、いわゆる「品格のない」今の世界のことも、それなりに好きです。

 

私たちは自分自身にとっての「品格ある生き方」を目指さなければいけません。ですが、それができなくてもいいのだと、私は思っています。世の中、所詮はその程度でいいのではないか、と。何もかもを理想の世界にしなくてもいいのです。

 

社会に押し付けられた「品格」ではなく、自分自身の「品格」を守ること。それこそが、『女性の品格』を経て、今の私が自分なりに見つけた「品格」の形です。

 

 

品格ある生き方とは

 

品格ある国家は品格ある個人の存在が前提になります。品格あるひとりひとりの個人があってこそ、品格ある家庭が、品格ある企業が、品格ある社会が成り立つのです。

 

では人間個人としての品格とは何でしょうか。美徳は品格ある人間であるための重要な要素です。多くの人がその意味を考え、次代に伝えようとしてきました。

 

ところで人間としての品格の基礎が共通なら、なぜ今回あえて女性の品格について書いたのでしょうか。理由は三つあります。

 

第一は、現代の社会の中で女性の生き方、役割が大きく変わり、伝統的な道徳が通用しなくなったにもかかわらず、新しい基準が確立せず、混乱が見られるからです。

 

第二は、男性たちが従来の組織人間、会社人間の枠にどっぷりつかり、お金や権力の魔力から抜け出せない中で、女性も男性の轍を踏んで同じように権力志向、拝金思考になってはならないと思うからです。

 

第三は、科学や技術の進歩などがもたらす新しい諸問題の中で、私たちの社会がどうあるべきか、どう生きるかが改めて問われているからです。

 

この本は女性の品格について書いたつもりでしたが、結果として、人間の品格とは何か、品格ある生き方とは何かについて考えざるをえませんでした。

 

この本に込めた私の願いを理解していただければと願ってやみません。

 

 

女性の品格 装いから生き方まで (PHP新書) [ 坂東眞理子 ]

価格:792円
(2021/6/8 00:11時点)
感想(339件)

 

関連

 

笑える恋愛指南本『女のしくじり』ゴマブッ子

 

こんなに仕事も頑張っているし、婚活も自分磨きも頑張っているのに、どうして結婚できないのかしら。そんなあなたに、結婚できない理由をズバリ突き付ける、くすっと笑える恋愛指南本です。

 

結婚したいのにできない貴方様におすすめの作品でございます。

 

 

女のしくじり [ ゴマブッ子 ]

価格:1,047円
(2021/6/8 00:14時点)
感想(193件)

 

変化する女心『女ごころを整理する本』中村延江

 

女ごころは変わりやすく、わからない。女ですらわからないという女ごころとは、果たしてどんなものなのか。現代に至って変化してきた女ごころとは何なのか、それを探っていく。

 

女心を整理したい貴方様におすすめの作品でございます。