テレビを何気なく見ていると、とある番組に興味を惹かれた。その番組は日本の素晴らしさを世界に伝えようという趣旨のようだ。
内容はこんなもの。海外で日本の寿司を模倣して、寿司店を開業している人たちがいる。
けれど、彼らが独学で編み出した寿司はトンチンカンなものばかり。日本人からしたら思わず眉をひそめるようなもの。
そこに、日本で長年寿司を作っている料理人を、寿司の素人としてバイトさせる。店の側には何も知らせないまま。
そして、どれほど奇妙な寿司を作っているのかということを散々こき下ろした挙句、「制裁」と称して種明かしを下すのだ。
寿司のプロが来るイベントと偽って彼らに寿司を食べてもらい、頃合いを見計らって、正体を明かす。なんとその寿司のプロは今までバイトとして来ていた彼だったのだ! と。
今まで奇妙な寿司を出していた店は心を改め、寿司のプロから指導をもらい、正しい日本の寿司を出すことを誓う、という番組だった。
どうにも引っかかるものがある。私はその番組に、日本人の傲慢を感じるような気がしてならない。
日本の伝統文化を体験してもらうというのは、立派な試みだと思う。でも、それまでの過程は、果たして必要なのだろうか。
日本人から見れば、彼らが独自に編み出した寿司はトンチンカンなものかもしれない。しかし、現地の人たちからは好評を得ている。
だったら、それはその国の土地柄に合わせた異なる文化に変化したものではないだろうか。
それをわざわざ、元となったのが日本の文化だからといって、無理やり日本に合わそうとするのは、違和感を感じてならない。
思えば、テレビに映る外国人たちは時折、日本の文化を愛し、日本が好きだという人たちばかりだ。
しかし、テレビは編集ができる。私はその人選に、どこか作為的なものが感じられてならなかった。
外国の、何も通さない目から見た日本という国は、いったいどんな姿をしているのだろう。そんな疑問を抱いた時、私は一冊の本と出会った。
『日本人とドイツ人』という。雨宮紫苑先生という方が、ドイツでの生活やドイツ人たちとの対話から、日本とドイツに対して感じたことを書いていくというエッセイ本である。
ドイツと日本といえば、「似ている」として引き合いに出されることが多い。真面目で堅物な国民性と、几帳面なイメージがあるのだろう。
しかし、その本の言うところによると、事実は正しくないのだという。日本とドイツの真面目さは、性質がまったく異なるのだ、と。
そもそも真面目の定義が違う。日本でいうところの真面目は誠実だという意味を持つが、ドイツでは向上心を持っている勤勉な人を指して真面目と呼ばれるのだという。
日本人はドイツ人に対して「似ている」として親近感を持っていても、ドイツからみれば、大した共通点には感じていない。日本での通説と現実には、これほどのズレがある。
この他にも、この本によれば、日本人はいくつもの思い違いをしている。海外から見た日本と、日本人の認識している日本には、大きな差異があるのだ。
雨宮先生は、この日本人と外国人の間にあるズレに警鐘を鳴らしている。その思い込みが、日本人の考え方を頑なにし、柔軟な思考を奪っているのだ。
私は、あのテレビ番組はそんな思い込みを体現しているかのように思えてならない。
伝統の日本文化を正しく伝える。それはともすれば、時代や場所に適応した変化すらも拒んでしまいかねない。
その凝り固まった考え方を改めて、もっといろんなことに対して門戸を広く受け入れることが、今後の日本には必要なんじゃないかな。
ドイツから見た日本
「日本はどう?」
ドイツに来てから、もう何度この質問をされたかわからない。どのテーマで話していても聞かれるのは、「日本はどう?」だ。
大学在学中、勢いで一年間ドイツ留学。そこでドイツをすっかり気に入り、気が付けば、ドイツ生活も四年半を超えている。
生まれも育ちも日本、外国人の友達もいなかった私は、ドイツ生活の至るところでカルチャーショックを受けた。
より深くドイツを知るためにあれこれ聞くと、みんな驚くほどしっかりと答えてくれる。しかし、「日本はどう?」と聞き返されると、苦笑いするしかできなかった。
日本は、どんな国なんだろう。日本はどういう国なのかを、私が実際に目にしたドイツという国を引き合いに出して、みなさんと一緒に考えたい。本書は、そういった目的の本だ。
専門家をうならせるような新説を唱えたり、長年の研究結果を発表するようなことは、残念ながらできない。
だからこの本は、二十代のひとりの日本人が、ドイツという国を知り、日本という国に向かい合った時にどう思ったかを書いたものにすぎない。
本書をきっかけに、多くの人が「日本はどういう国なのか」について考えてくれたら嬉しく思う。
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