自分はどうして彼女じゃないんだろうと、いつも思っている。どうして彼女は自分と同じ年齢のはずなのに、あんなにも痩せていてかわいいのだろう。どうして自分は、こんなにも醜いのだろう。
鏡を見ると、いつも嫌な気持ちになる。でっぷりと膨らんだ頬。そばかすだらけの顔。ああ、なんて気持ち悪い。私は私の容姿が嫌いだ。
どうして神様は、ひとりひとりを違うように作ったのだろうか。同じに創ってくれたなら、こんな惨めな思いをしなくて済んだのに。
丸く潰れた鼻も、大根みたいな足も、いつも細められたみたいな目も。私の見た目の嫌いなところを挙げていけば、それこそきりがないくらいにある。
学生の頃の私は、まさにそんな人間だった。そう言うと、誰もが驚いた表情をする。今の私とは、まるで正反対だ、と。
今の私はむしろ痩せている。身長が高いわけではないが、小柄で、顔もすっきりした。あれほど憎らしかったそばかすは、いつのまにやら消えてなくなった。
でも、今でも私は、自分の容姿が嫌いだった。あの頃よりかはずっと良くなった。でも、まだまだ嫌いなところはいくらでもあるのだ。
私は一生、見た目のコンプレックスに悩まされて生きるのではないか。いや、それは何も私だけじゃなく、誰もがそうなのではないか。
自分の見た目が大きく変わってから、私はそんな結論に達した。つまるところ、見た目に対するコンプレックスなんて、どんなに美人であっても何かしら持っているのだと、私は知った。
河出書房新社の『見た目が気になる』を読んだのは、そんな時だった。ちょうど、私が見た目についてある種の諦観というか、絶望を感じていた頃のことだ。
その本は、見た目に対して劣等感を持っている人や、劣る容姿だと認めながらも克服した人、むしろそんな容姿を生かしている人、はたまた見た目を変えることに成功した人など、多くの人の見た目についてのコラムが載せられていた。
中には、テレビでよく見るような人たちも数多く名前が載っていたのだから驚きである。
しかし、彼女らは、見た目を良くしろと言っているのではない。むしろ逆だ。「今の自分のままでいい」と、多くの人たちが言っている。
ありのままの自分。そう、見た目がどうして気になるかといえば、他人の目を常に意識し、他人と比べてしまうからだ。
だが、その本の人たちは、「堂々と生きろ」と言ってのけている。そして、自分のコンプレックスも何ら恥じることなく、むしろ利用してきたからこそ、彼女たちはチャンスを自分で掴み取ることができたのだ。
作中でも触れられているのだが、以前、オリンピックの運営がタレントの渡辺直美さんの容姿をネタにするような演出を考案して炎上したことがあった。
それに対する渡辺直美さんの言葉は、本当にかっこいいと思う。「私自身はこの体型で幸せです」と、堂々と言ってのけたのだ。
この言葉が言えるようになりたい、と、思った。それは彼女だからというわけではなく、世の全ての男性、女性に共通したことではないだろうか。
誰もが容姿に対するコンプレックスを抱えている。だが、自分は自分だ。まずはそのことを認めてあげなくちゃいけない。
そして、その容姿に自信を持つ。コンプレックスとは人と違うということで、それは見方を変えれば、自分だけが持っている魅力になるのだから。
自分の容姿を愛してあげて、自信を持ち、堂々と生きる。どんな見た目であろうとも、その生き様そのものこそが、きっと誰よりも美しく、かっこいいんだ。
ありのままの自分
突然ですが、あなたは、一日に何回くらい自分の姿を鏡で見ますか? 人はどうして見た目が気になるのでしょうか。見た目とどう付き合っていくのがいいのでしょうか。
本書では、見た目で傷つき自分を変えようとした経験のある方、見た目の悩みを経て自分なりの付き合い方を見つけた方など、さまざまな立場から、「見た目」に対する考えを記してもらいました。
自分を変える努力をするのも、「今の自分が気に入っている」とそのままの自分を肯定するのも、どちらも自分を好きになり、自分らしさを見出すためのたくさんある方法のひとつでしょう。
本書を通してひとつの価値観だけにとらわれない、多種多様な考え方に触れることで、今までと違う視点で見た目と向き合うきっかけとなれば幸いです。
見た目が気になる 「からだ」の悩みを解きほぐす26のヒント (14歳の世渡り術) [ 河出書房新社 ] 価格:1,562円 |
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