私は愛国者です。僕がそう言った時、教室の空気が凍りついたような気がした。
先生からは「あまりああいうことを言わない方がいいかも」と言われた。「自分の国を好きといっては駄目なんですか」と聞くと、先生は困ったように眉を下げた。
結局、理由は説明されずに、「とにかく気をつけてね」と注意された。僕はどうして駄目なのか、理解することができなかった。
それがわかったのは、高校生になってからのことだ。図書館から借りたケント・ギルバート先生の本を読んだのだ。
『ついに「愛国心」のタブーから解き放たれる日本人』。それが、その本のタイトルだった。
僕がその本を読みたいと感じたのは、やはり、子どもの頃の、疑問が今も心の奥底に残っていたからだろう。
駄目だと言われた理由。それは、「愛国者」というのが、戦時中を彷彿とさせるから、であるという。
つまり、「愛国者」だと言われると戦争肯定派として見られるから、だと。僕の謎は深まるばかりだった。
僕が子どもの頃に使った「愛国者」という言葉が、どうしてそんな曲解をされてしまうのか。ただ、自分の国が好きだと言っているだけなのに。
その本によると、「愛国者」だと日本人が言えなくなったのは、戦後のアメリカの政策によるものらしい。
それに対して呼応したマスコミやメディアの報道によって、今もまだ、その洗脳は続いているのだという。
教室の、みんなから向けられた、あの目。それこそが、その本の正しさを証明しているように思えた。
僕は日本が好きだ。愛している。胸を張って堂々とそう言える。けれど、それができる人が少ないのだという事実に、僕は少なからずショックを受けた。
日本が戦争をしていたのは、僕が生まれるよりもずっと昔だ。それなのに、今もまだ、日本は呪縛に囚われている。
本来、「戦争」と「愛国者」には何の関係もない。戦争をする人も、戦争を嫌う人も、国のことを好きであるならば、等しく「愛国者」なのに。
日本のことを好きだという外国人は多い。はるか遠くの国にすら、そんな人がいる。それなのに、日本人自身は、日本のことを好きだと口に出して言えない。
それが、僕にはとても悲しいことだった。「愛国者」だと、日本のことを愛しているのだと、堂々と言えないことが。
ケント・ギルバート先生はアメリカ人だ。けれど、その本を読めば、彼が本当に日本のことを愛してくれているのだとわかる。
日本人ではなく、アメリカ人がそんな本を書いてくれたのだということが、僕はひとりの日本人として、嬉しく、そして情けなかった。
彼は日本を好きだと言えるし、祖国であるアメリカを誇らしく思っている。それなのに、僕たちはそれすらも堂々と口に出して言えないのだ。
僕は日本が大好きな「愛国者」だ。僕が大好きな日本が、そんなことすらも言えないような、居心地の悪い国になってほしくはない。
自分の国を好きだと言えない日本人
現代の日本人は「愛国心」という言葉に対して、何かしらの抵抗感を持っています。しかし、「愛国心はありません」などと平気で答える人は、世界中で奇異の目で見られて信頼を失ってしまいます。
そう言われても、日本の皆さんはピンとこないかもしれません。なにしろ、「愛国心」という言葉に日本人が抱かされてしまった拒否感について、あまりにも無自覚なうえに、根深いものですから。
日本以外の多くの国の人々にとって、「愛国心」はごく自然なものです。だから、「私には愛国心がない」などと言われると、むしろ眉をひそめたくなるのです。
「日本を好き」なのと「祖国を愛している」との違いは何ですか? それに対する一つの答えは「マインドコントロール」です。
戦後の日本では、日本人が愛国心を持つことに抵抗感を抱かせるような学校教育と、マスコミによる報道が、意図的に行われてきました。皆さんは一種の洗脳を受け続けているのです。
この洗脳を行わせた陰の主犯は、GHQでした。この謀略は「WGIP」と名付けられています。先の戦争についての嫌悪感を日本人の心に植え付けて、日本を二度と軍事的に立ち上がれない国にしようというものでした。
日本を「好き」であっても「愛国心」という言葉をなかなか言えない原因のもうひとつは、「日本人が日本のことを知らない」ことにあります。
日本の歴史や文化、さらに日本の本質について語る際に絶対に外せないのは、「天皇」の存在です。
しかし戦後日本では、天皇に着いての歴史や文化伝統を学ぶことは、一種のタブーでした。
日本という国にとって天皇とはいかなる存在なのか、天皇の下で文化がどのように育まれてきたかということを知っている日本人が、どれほどいるでしょうか。
どうも天皇について多くの日本の方々は、あえて無関心でいるか、敬しながらも遠ざけるべきものであるかのように考えているように思えます。
しかも、「天皇」と「愛国心」の両者を合体させて論じることは、戦後の日本では、ある意味では非常に危険なことだったようです。
戦争が終わって70年以上も経った今日でさえ、天皇を想起しながら愛国心を語ることは、すなわち軍国主義的であると考えられているのです。それこそが、「WGIP」が目指した世界観でした。
天皇が示してきた「理想」とは何か。日本文化の中で脈々と息づく「美の精神」「武の精神」「草莽の精神」とはいかなるものか。
外からの視点を率直に紹介することで、日本の皆さんにとって、ある種の「鏡」のような役割が果たせるのではないかと思っています。
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