私は本を読むのが好きである。クラスメイトの中の誰よりも本を読んでいるという自覚があった。
しかし、本を読むのが楽しかったかと言われれば、そういうわけではない。読んだ本の内容はいつもおぼろげである。
私は本を読むことが好きである。しかし、本が好きなわけではないのだ。
私にとって本を読むことは呼吸をすることや食事を食べることと同じであった。特に好きなわけではないが、なんとなくすること。
しかし、今にして思えば私は何かに飢えていた。だからこそ、取り憑かれたかのように本を読んでいたのかもしれない。
私は何かを探していた。それはたしかなのだ。しかし、私が探している何かが一体何なのか、私にもわからない。
ただ、当時の私が友人との交流を断ってまで本を読むという作業に執心していたことはたしかである。
記憶に残らない程度の本を踏み荒らしながら歩く私の姿は真に本を愛する者からすればこれ以上ない冒涜であったろう。
なにせ、本を面白いと思わなかった私には、本への愛情すらもなかったのだ。読書家ではあっても愛好家ではなかった。
そんな砂漠で水を探すがごとくに当てのない旅路は突如として終わりを告げた。そのきっかけとなったのは一冊の本である。
タイトルは『まなの本棚』という。作者は『告白』や『マルモのおきて』で一世を風靡した名女優、芦田愛菜である。
彼女が読書家だということは初めて知った。しかし、それならばあれほどの高い教養も納得ができよう。
今までの私の読書の旅は方向すらわからぬ無謀な旅路であった。広大な迷路の中に私は囚われていた。
『まなの本棚』は羅針盤であった。私はその本によって探しているものの方角を定めることができたのだ。
私はまず羅針盤の針を読むことから始めた。当てのない冒険が変わったような音がした。
運命の出会いを
私は羅針盤の蓋を閉じる。本棚に並ぶ本の背表紙を指でなぞりながら、次に読む本を探していた。
探すものが何かすらわからず、当てもなくさまよっていた私の瞳に、一筋の光明が見えていた。
私がただ、ジャンルも作者も問わず、乱雑に本を読み続けた理由。それは私も出会いたかったからだ。
私が探していたのは運命の一冊だった。私の人生を開けるほどの力を持った本の鍵を探していたのだ。
羅針盤は私が探しているものを明らかにしてくれた。濃霧が覆い隠していた道を晴らしてくれたのだ。
向かうべきところは明らかになった。しかし、未だそこに至るまでの場所は遠い。
本を読む。本を読む。ただ、本を読んでいく。無心ではなかった。無心で見ていた文字の中に、輝く何かを探していた。
見つからない。しかし、たしかに近づいている。私は漠然とそんな確信を得ていた。
図書館は広大な大海原のようなものである。揺れる波の中に無数の文字が浮かんでいる。
降りしきる大雨の中で、私は必死に張られた帆の向きを調整していた。波に足を取られないように舵を回す。
黒雲が渦巻く大雨のベールの奥に、何やら輝くものが見えた。きっと、そこに私が長年求めてきたものがある。
いつものように見ている背表紙が輝いているように見えた。羅針盤を見ると、針はその本を指している。
私は手を伸ばして、本棚の内からその本を抜き出した。心の中に棲みついていた飢餓が、満たされたように思えた。
名女優が好きな本を紹介! これから読む本の指針に
私は読書が大好きな子供でした。
ページに並んだ活字から自分の想像で物語の世界を作り上げていく楽しみは手放せません。
そしてもう一つ、自分とは違う誰かの人生や心の中を知ることが好きなのです。
その意味では、本を読むことと、お芝居は近いものなのかもしれませんね。
しかし、おすすめの本は、と聞かれると、いつも悩んでしまいます。
読みたい本は自分で探し出したりめぐり会ったりするからおもしろいんだと思います。
その時に自分自身が惹かれた本が人生を変えるような運命の一冊になることが多いのではないでしょうか。
なので、私がどんなふうに本を選んで、どんなふうに本を読んで、どんなことを感じているかお伝えします。
私の本棚をのぞいてくれたことで、そんな出会いのきっかけになれば、嬉しいです。
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