世界でもっとも読まれている本は何か。その答えは誰もがすぐに答えられるだろう。『聖書』である。世に何万、何億もの本が毎日のように生み出されているにも関わらず、その影響に勝る本は未だない。
仮にも読書家を名乗っている手前、そのもっとも読まれている本とも呼べる『聖書』を未だに読んでいないのはどうなのか、と思い始めたのは最近のことであった。
だけど一方で、日本人であり二十代のピチピチの若者である私にとって、『聖書』はどうにも食指の動かない本のひとつである。読みたいという好奇心とは相反して、ある種の恐怖が私の意気を鈍らせていた。
そこで、私は『聖書』を手に取る前にワンクッション置くことにしたのである。そこで私が選んだのが、池上彰先生の『世界を変えた10冊の本』であった。
本というものは強い力がある。歴史を変え、世界に大きな影響を与えた本も多く存在する。この本は、そんな本たちを池上先生がわかりやすく解説した、というものだ。
読む気が起きない『聖書』も、わかりやすい解説に定評のある池上先生なら理解しやすく教えてくれるのではないか。それを以て読んだことにしよう。それこそが私の思惑である。
『聖書』はその本で紹介されている中の一冊で、イスラムの聖典である『コーラン』と合わせて解説されていた。社会的な影響や内容まで含めて教えてくれているから、その本の背景までもよく理解できる。
そして、思わぬ収穫もあった。私の主目的は言うまでもなく『聖書』であったが、その本では他にもいくつも解説されている本があった。どれもタイトルは知っていながらも読んだことがないものばかりである。
『資本論』や『雇用、利子および貨幣の一般理論』のような経済書、化学物質の危険性を説いた『沈黙の春』、キリスト教の常識に立ち向かった『種の起源』、ユダヤ人の扱いに影響を与えた『アンネの日記』。
いずれも各界の常識を塗り替えたビッグタイトルばかりである。愕然としたのは、それらをことごとく私は読んだことがないということであった。
『聖書』以外にも、世界に大きな影響を与えた本の数々のほとんどを、私は読んだことがない。その事実は読書家として誇りを持っている私にとって根底を揺るがされるものだった。それを突き付けられたのである。
何より、解説があるおかげでどの本にも興味が湧いたのがいけない。有体に言えば、読みたくなってしまったのである。
最初は『聖書』だけだったのに、『沈黙の春』も読みたいし、『アンネの日記』も読みたい。『資本論』も『種の起源』も『雇用、利子および貨幣の一般理論』も読んでみたい。
読みたい本が一気に増えてしまった。それも難しそうなものばかりである。『聖書』を読むまでのワンクッションとしてのはずだったのに、どうしてこうなったのか。思わず頭を抱えた。
とはいえ、知ってしまったのなら仕方がない。ましてや、読みたくなってしまったのなら猶更仕方がないのである。読みたいのならば読まねば読書家として名が廃る。
私が『資本論』や『種の起源』をタイトルこそ知っていながらも、それまで読もうという意識すら浮かばなかったのは、それらが古い本であって、今さら感が否めなかったからである。
しかし、池上先生が言うには、それらの本は現代を生きる私たちにも役に立つらしい。たしかに、解説を読んでみると、古い経済書であっても現代に通ずるところがあるように感じた。
世界を変えた本。それらはただの一冊の本でありながら、世界の常識を大きく塗り替えた。その大きな力の一端に、触れてみたいという欲望には逆らえない。
常識を塗り替えた偉大な本
読書離れが伝えられています。その一方で、毎日出版される大量の書籍。本は溢れているのに、読む人は減っている。読書の未来が暗い話ばかりです。
しかし、本には、とてつもない強さがあることも事実です。一冊の本の存在が、世界を動かし、世界史を作り上げたことが、たびたびあるからです。
読んだ人が、内容に感動したり、感化されたり、危機感を抱いたりして、何らかの行動に出る。それによって人々が動き、ときには政府を動かし、新しい歴史が築かれていく。書物の持つ力は恐ろしいほどのものです。
『聖書』しかり、『コーラン』しかり。こうした本の存在は知っていても、実際に読んだ人は意外に少ないのではないでしょうか。古くて読みにくい、わかりにくい。そんな印象が、本を紐解くのを妨害しているのでしょう。
でも、読めば、そのダイナミズムに圧倒される本があります。驚くような主張に仰天してしまう内容のものもあります。一見とっつきにくくても、読み進むうちに、独特の論理に魅せられてしまう書もあります。
そんな書物を10冊に限って取り上げたのが、この本です。題して『世界を変えた10冊の本』。
こうした書物は、現代に生きる私たちにとっての教養の基礎にもなります。これからの人生を考える上で、少しでもお役に立てれば、こんな嬉しいことはありません。この本で興味を持った書物があれば、どうぞ次はあなた自身で読んでください。
価格:605円 |
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