ミニマリストになって豊かな人生を『より少ない生き方』ジョシュア・ベッカー


 私は買い物が大好きだった。毎日のようにショッピングに出かけては、気になったものを探すのが楽しくて仕方がなかった。

 

 

 服、靴、帽子、本、ゲーム、家具、小物、電化製品、ぬいぐるみ、少しでも欲しいなと思ったものは、なんでも買った。

 

 

 我慢なんてもってのほかだった。買わずに後悔するよりも、買って後悔した方がいいに決まっている。それが私の考えだった。

 

 

 友人が欲しいなと思ったものは、私も欲しくなる。それを見せた時の、彼女たちの羨望の眼差しが何とも言えず心地よかった。

 

 

 その度に、私は子どもの頃の呪縛から解放されるような気分だった。なんでもできる、全能感にも似た感覚。

 

 

 私の親は厳格な性格だった。遊ぶためのおもちゃも、かわいい柄の洋服も、何も買ってもらえなかった。

 

 

 私の家は貧乏だったわけではない。しかし、にもかかわらず、家が貧乏な子よりも、私はものを持っていなかった。

 

 

 あの頃に感じていた劣等感。悔しい気持ち。家を出て、自分のお金を自由に使えるようになった私は、ようやくその呪いから解放された気がした。

 

 

 私はもう、我慢する必要はないのだ。欲しいものはいくらでも手に入る。私は何でも持っている。

 

 

 けれど、まだ足りない。もっと、もっと、欲しいものはいくらでもある。心の中の幼い私が、まだ足りないと叫んでいた。

 

 

 私は仕事で疲れた身体を引きずって自宅のドアを開けた。そこに広がる光景を私は呆然と眺める。

 

 

 足の踏み場もない玄関。そこはもので溢れかえっていた。人はこれをゴミ屋敷と呼ぶのだろう。

 

 

 その瞬間、私が今まで熱心にかき集めてきた大切なものが、全ていらないもののように思えた。

 

 

ものが少ないからこそ得られる充実

 

 私の父はものを欲しがらない人だった。というよりも、ものをできる限り少なくしようと努めている人だった。

 

 

 彼の考え方を、幼い私は理解できなかった。ものが少ないというのは、貧乏であることを晒しているのと同じものだと考えていたからだ。

 

 

 父が愛用していた一冊の本がある。ジョシュア・ベッカー先生の『より少ない生き方』。

 

 

 かつては理解できなかったが、今ならば、その本が言っていることも理解できるような気がした。

 

 

 ミニマリストになろうという気はなかった。しかし、今はもう、ものを持つということに何の執着も残っていない。

 

 

 家にあるものはただのガラクタだ。ベッカー先生のように言うならば、『幸せから遠ざけるもの』だ。

 

 

 家にものがあれば、片付けや掃除に時間を取られ、他のことに時間を使うことができない。

 

 

 買う時に使うお金は決して安くはない。私の給料の多くは、家にあるガラクタのために消えている。

 

 

 その割に、実際に使ったものはほんのわずかだ。部屋に置くかわいい小物も、物置の奥にころがっているだけでは意味がない。

 

 

 そのくせ、次から次へと新しいものが欲しくなる。心の中にいる幼い私の欲望。子どもらしいそれは、我慢することを知らず、際限を知らない。

 

 

 ミニマリストであった父は、私から見て、禁欲者というイメージだった。貧乏に耐え、物を増やすまいとし、仙人のように生きている、と。

 

 

 けれど、違う。そのことに、私自身がものを減らすことを目指すことで気がついた。

 

 

 少ないもので生きるというのは禁欲ではない。むしろ、物欲に縛られることなく、自由な生き方を謳歌することだ。

 

 

 彼らはものを少なくしているのではない。不要なものを手に入れないだけなのだ。本当の価値がわかっているからこそ、本当に必要なものだけを残しておく。

 

 

 だからこそ、ものを買わずとも、誰よりも充実した生き方をしているのだと、私はようやく知った。

 

 

 かつては嫌いだった父の背中。今の私は、その背中を必死に追いかけようとしている。

 

 

ミニマリストへの目覚め

 

 2008年のメモリアルデーの休日は、朝からよく晴れていた。そこで妻のキムと私は、せっかくなので買い物や家の雑用などをすませてしまうことにした。

 

 

 この週末を使って春の大掃除を一気に終わらせるという、大きな目標を立てたのだ。手始めはガレージの片づけだ。

 

 

 そして土曜日の朝が来た。朝食が終わると、私と息子はガレージに向かった。うちのガレージは車が2台入る。そしていつも、ものであふれている。

 

 

「これからここにあるものを全部外に出して、ホースを使ってガレージの中を水で洗う。わかったかな?」

 

 

 そこでまず手始めに、隅で埋もれていた容器を掘り出すことにした。だが魔の悪いことに、それは息子のセーレムの夏のおもちゃを入れた容器だった。

 

 

 息子は冬の間ずっと見ていなかったおもちゃと再会すると、もうガレージの掃除のことなどすっかり忘れてしまった。

 

 

「パパも一緒に遊ぶ?」

 

 

 一緒に遊んでもらいたいと顔に書いてある。私はここの掃除が終わったら一緒に遊ぶことを約束した。

 

 

 それなのに、時間が経つにつれてやることが次々と出てきて、息子と一緒に遊べる可能性はどんどん小さくなっていった。

 

 

 キムが私とセーレムをお昼に呼んだ時も、まだガレージの片づけは続いていた。セーレムが何度も顔を出して、まだ遊べないのとせっついてくる。私はその度に「もう少しだよ」と答えていた。

 

 

 私は振り返ると、午前中の仕事の成果を見渡した。汚れて埃を被ったものたちが、ドライブウェイに山積みになっている。

 

 

 その時突然、裏庭にいる息子の姿が目の端に映った。息子はまだ、たった一人で遊んでいる。山積みのガラクタと、一人で遊ぶ息子。この二つのイメージが、私の心に深く突き刺さった。

 

 

 そのとき初めて、自分の不満の原因がわかってきたような気がした。ドライブウェイに出現したガラクタの山が、その原因だ。

 

 

「私の所有物は、幸せを運んでくれないだけではない。それどころか、むしろ私を幸せから遠ざけている!」

 

 

 その瞬間、我が家はミニマリストになった。

 

 

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