迷惑・自己中・鈍感な人から『上手に「自分を守る」技術』片田珠美


「えっ、ワクチン打たないの?」

 

彼女の反応に、「そんなに驚かれること?」と、むしろ私が驚いた。でも、すぐに表情を取り繕って、「うん、もうちょっと様子見ときたいかなって」と答える。

 

コロナワクチンが配られるようになって何日か経つ。私の住んでいるところで予約のお知らせなんかが来るようになったのはつい最近のことだ。

 

私の周りではまだコロナは少ない。そのせい、とも言うべきかはわからないけれど、他の地域よりもコロナの動向には過敏に反応している人が多かった。

 

彼女もまたその一人だ。彼女はお知らせが来てすぐ、もう家族全員で受ける予約をしたらしい。そして、私にも「受けるわよね?」と聞いてきたから「受けない」と答えたら驚かれた、というわけだ。

 

正直なところ、コロナワクチンがどういうもので、どんな効果があるのか、危険性はどんなものか、とかはよくわからない。ネットにはいろんな情報が飛び交っていて信用はできないけれど、テレビが言っていることも正しいのか怪しいところ。

 

だったら、一旦は打たなくてもいいか、というのが私の下した結論だった。そもそもこのご時世でなくともあまり外出もしないし、まだ若いから重症化のリスクも低いはず。それに、変異株にはワクチンの効果が効くかわからないし。

 

「ご家族は何て?」

 

「夫と息子は受けることにしたみたいです」

 

仕事で外回りもある夫と、学校に通っている息子は、外で多くの人と会うリスクも考えてどうやら受けることにしたらしい。

 

「よくご主人はお許しになったわねぇ……」

 

「許すも何も、自分で選ぶことですから」

 

私や夫はもちろん、息子にも、「打て」「打つな」というようなことは言っていない。私たちはそれぞれ自分で決めていて、みんながそれぞれの選択を尊重していた。

 

「ダメよ、打たないなんて。どうかしてるわ。うちの息子と一緒じゃないの」

 

「え、でもたしか、息子さんも打つんですよね?」

 

「打ちたくないとか言っていたけど、『バカなこと言うんじゃないわよ』って叱って受けさせたわ。今はわかってくれないけれど、後でいかに自分の我儘がバカだったかわかるはずよ」

 

彼女の息子は息子と同級生で、高校一年生だったはず。もう自分で判断して行動できる年齢だ。彼女の対応はあまり良くないんじゃないだろうか、とは言えない。他の家族のことだ。そこに首を突っ込むつもりはなかった。

 

そんな話をした翌日から、友人たちと話している時にどことなく違和感を感じるようになった。なんだか避けられているような気がするのだ。

 

何かしてしまっただろうか。仲の良い友人に聞いてみると、なんと、私がワクチンを打たなかったことで、半ばコロナに感染したかのように扱われていて、「近寄らない方がいい」とすら言われたらしい。

 

その噂を広めたのは彼女と、そして彼女と同じく、コロナに過敏でワクチンにも真っ先に飛びついている奥様たちの派閥だった。

 

私は愕然とした。が、もう何もかもが遅かった。彼女とその一派はこの地域では大きな影響力を持っている。その手は学校にまで及び、なんでも、息子も学校で「身内に感染者がいる」ような絡まれ方をされたという。

 

コロナが広まって以来、差別やいじめなど、いろんな問題が起こっていたけれど、すべてテレビの中の世界だった。それがまさか、私自身にも降りかかるなんて。

 

彼女に対して、私が何か上手い対応ができていたなら、こんなことにはならなかったのだろうか。すでに遅いとはわかっていても、そう思わずにはいられなかった。

 

 

自分を守るには

 

世の中には、自分が相手を傷つけたり、周りに大変な迷惑をかけたりしていても、そのことにまったく気が付いてすらいない”やっかいな人”があふれている。

 

笑顔で、他人の心をえぐるような暴言を放つ人。こちらの都合を配慮することなく、延々と自分の話を続ける人。平気で時間に遅刻したり、借りたものを返さなかったりする人。「自分が絶対正しい」と言わんばかりの人。

 

こちらが困っていることはわかりそうなのに、なぜ、楽しげに笑っていられるのか。そもそも、彼らに「悪意」はあるのだろうか。

 

「言い返せない」という立場でもんもんとしている方が、仕事関係、友人関係、親同士の関係、親戚づきあいなどでこれほど多いとは。

 

しかし一方で、「悪意があるのかどうかわからない」「わざとなのか、天然なのか読めない」「周囲に迷惑をかけているのに、その自覚がない」といった相手に対してはどうしようもない、という声も届く。たしかに、こういう相手ほど厄介で、対応が難しいだろう。

 

では、こんな関係をずっと我慢し続けなければならないのだろうか。私はそうは思わない。こんな厄介な相手から、私たちは、上手に自分を守らなければいけない。こちらが被害をこうむっていることを、しっかりと理解させなければならない。

 

と言っても、相手との取っ組み合いも、不毛な話し合いもいらない。軽やかに、にこやかに、颯爽と、余裕を保ちながら、相手との関係性をこちらから変えていけばいい。

 

これから紹介するのは、自分を上手に守るために、厄介な相手を「かわす」「しりぞける」「巧みに切り返す」賢い対処法だ。

 

そう、必要なのは、”ほんの少しの知恵とテクニック”である。実践すれば、溜まっていたモヤモヤ・イライラから、一瞬で解放される。もう怖れることはない。「あの人」に悩まされなくていい。気持ちが通じ合う人と、穏やかにいい関係をつくっていけばいいのだ。

 

 

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