資本論をわかりやすく解説『高校生からわかる「資本論」』池上彰


池上彰先生の『世界を変えた10冊の本』という本を読んだ。世界に大きな影響を与えた本を紹介・解説している本である。その中でも、私は一冊の本が気になっていた。

 

『資本論』。経済学者のカール・マルクスが書いた経済書で、マルクス主義と呼ばれる一派を作り出した。世界を変えた本に数えられる一冊として、言うまでもなくふさわしい本だろう。

 

とはいえ、私はその本のことはあまりよく知らなかった。ただ、いろんな本でそのタイトルを見かけたことから、頭によく残っていただけのことである。

 

そもそも、いくら世界を変えた本とはいっても、所詮は何年も前に書かれた本だ。経済書とは書かれた当時の社会について書かれたもので、当時とは大きく変貌している現代においてはまるで役に立たないものだと思っていた。

 

それでも読もうと思ったのは、他ならない『世界を変えた10冊の本』の作中で、著者の池上彰先生が「現代だからこそ読むべき」だと述べていたからである。

 

そういった事情もあって図書館をうろついてみたのだが、どうにも見つからない。やはり古い本だからこそ、すでに書庫に仕舞われているのかもしれない。

 

その代わりと言っては何だが、解説書は多く見つかった。今回借りることにした『高校生からわかる「資本論」』もそのひとつである。なぜその本を選んだかというと、そもそも読むきっかけになっている『世界を変えた10冊の本』の著者である池上彰先生が書いていたからだ。

 

というわけで読んでみたのだけれど、まず前書きのところにこう書かれていた。

 

「マルクスが言っていること、あるいは、『資本論』に書いてあること、それがすべて正しいとは、私は思っていません」

 

愕然とする言葉である。『高校生からわかる』とまで冠されている表題の本の冒頭でそんなことを言ってもいいのか、とも思ったが、そもそも池上先生はしばしば著書で同じようなことを繰り返しているのを思い出した。

 

本に書かれていることをそのまま正しいと思うのではなく、それを自分の中に落とし込み、考えることが大事なのだと。だから、私もそのつもりで読むことにした。さながら池上先生の講義を受けているかのような心持である。

 

そもそも、「資本論」とは何か。池上先生によると、当時の資本主義の本質を書いている本らしい。資本主義の欠点を述べて、批判する内容だった。

 

そのせいもあって、「資本論」は多くの共産主義者を生み出した。マルクス主義と呼ばれる一派は、彼の「資本論」の理論をベースにした科学的社会主義というもので、レーニンなどは社会主義国家の樹立の柱としている。

 

だが、池上先生の解説によると、なんと、現在マルクス主義と呼ばれている彼らの掲げる社会主義は、マルクス本人の想定したものと異なっているのだという。

 

とはいえ、現代社会において、共産主義の多くは勢いを失った。最大国家だったソビエトはなくなり、中国も実質的な共産主義国家の体制ではなくなっている。日本も資本主義を貫いている国だ。

 

そんな現代において、なぜ「資本論」を読むべきなのか。

 

かつて、マルクスの「資本論」を読んだ資本家たちは震え上がったという。共産主義者たちが自分たちに刃を向ける恐怖があったからだ。

 

そうならないため、資本家たちは労働環境の改善に努め、自分たちへの反乱を起こさせないようにしようとした。結果として、福利厚生が整えられ、資本主義は生き残ることになった。

 

つまり、当時の資本主義もまた、マルクスの想定したものとは変わったことになる。それよりも改善されたものになった。そういった意味でも、「資本論」が与えた影響の大きさがわかるだろう。

 

だけど、現代。資本主義はマルクスが危険視していた、当時の資本主義に戻りつつあるという。かつて感じていた労働者への敬意と恐怖を忘れ、資本主義の優位という幻想に囚われるようになった。

 

当初は「資本論」そのものが読みたかったが、今にして思えば、『高校生からわかる「資本論」』を手に取ったのはよかったかもしれない。「資本論」だけだと、その内容を現代につなげることができなかっただろう。

 

現代と当時との社会の背景を踏まえたうえでのわかりやすい解説。そこまで理解して初めて読書が生きてくる。池上先生の解説は、その入り口として最適だったように思うのだ。今度こそ、「資本論」を読むための。

 

 

資本主義の本質

 

このところ派遣労働者が、まるでモノみたいにどんどん切り捨てられています。ふと気が付くと、マルクスの理論が見直されるようになってきているのです。それはどうしてなんだろうか。それを、これから考えていきましょう。

 

マルクスが言っていること、あるいは、『資本論』に書いてあること、それがすべて正しいとは、私は思っていません。ただし、資本主義といわれている今の世の中を分析するうえで、実はとても役に立つことがいろいろ書いてあるのではないかと思っています。

 

『資本論』をマルクスが書いて以降、いわゆるマルクス主義という思想が生まれ、共産主義運動が盛り上がって共産党ができたり、社会主義革命が起きたりしました。マルクスという人の考え方によって、世界が動き、新たな歴史が生まれたのです。

 

この本を、マルクスは今から140年前に書きました。当時の資本主義の「本質」について書いた本です。もう時代遅れ、役に立たないと言われてきました。

 

ところが、このところ金融不安、金融危機が広がっています。いつの間にか、マルクスが分析した資本主義が復活している。そこで、マルクスの理論・主張が、今あらためて見直されるようになったのです。

 

 

高校生からわかる「資本論」 池上彰の講義の時間 [ 池上彰 ]

価格:1,430円
(2021/8/16 23:57時点)
感想(15件)

 

関連

 

世界に大きな影響を与えた本をわかりやすく解説『世界を変えた10冊の本』池上彰

 

聖書。コーラン。沈黙の春。資本論。アンネの日記。種の起源。経済や宗教、科学、自然など、さまざまな分野でそれまでの常識を打ち破って世界を変えてきた本。それらを紹介、わかりやすく解説してくれる。

 

世界を変えた本を読んでみたい貴方様におすすめの作品でございます。

 

 

世界を変えた10冊の本 (文春文庫) [ 池上 彰 ]

価格:605円
(2021/8/17 00:01時点)
感想(5件)

 

勉強は何のためにする?『なんのために学ぶのか』池上彰

 

どうして勉強なんてしないといけないの? 誰もが抱いたことがあって、でも明確な答えが得られなかったであろうその質問に、池上彰先生が答えてくれる。

 

勉強したくない貴方様におすすめの作品でございます。

 

 

なんのために学ぶのか (SB新書) [ 池上 彰 ]

価格:935円
(2021/8/17 00:04時点)
感想(2件)