クラスで発表をする時、身体の震えが止まらなかったのを覚えている。顔が熱くなり、声が震え、目が泳ぐ。顔を俯かせて前を見れない私に、みんなの蔑むような視線が集中しているような気がしていた。
いつからだったろうか、目立つことが苦手だった。壇上に立って演劇や練習成果を発表すると、決まって頭が真っ白になって、自分が何を言っているのかすらわからなくなる。
クラスで当てられて、発表する時もそうだ。みんなが座っている中で、私だけが立っている。先生も生徒も、誰もが視線をこちらに向けて答えを待つ。その瞬間が怖くてたまらない。
だから、私の学生生活の思い出は嫌なことばかりだった。みんなの前で恥をかいたような、そんな記憶しかない。日常は、ただただ目立たないように息を潜めてひっそりと生きる、そんな生活だった。
きっと、私の生来の気性なのだろう。変えようと思っても変えることができない。そんなものだと思う。だから、上司からその本を貸してもらった時は「無理」だとげんなりした。
その表題には『極アウトプット』と書かれている。著者は樺沢紫苑という人。その名前は知っていた。少し前に、本屋の店頭に並んだ『アウトプット大全』にも書かれていたはず。
精神科医らしいけれど、話題になっている本を見た限り、どうやらアウトプットについての本を多く書いているみたい。まさか、私からその名前に触れることになるとは思わなかった。
「まあ、騙されたと思って読んでみろよ」
上司にそう言われたら、断ることはできなかった。受け取った本をカバンの中に入れたまま帰路につく。家に帰って、感想を言うためにも仕方なくその本を開いた。
やっぱりというか、その本はわかりやすく言うなら「アウトプットやろうよ!」という感じの本だった。話す。書く。行動する。なんてこと、どれも苦手だ。
自分から何かを発信する、なんて。考えただけでも足が震えた。SNSすら自分が始めることはないだろうと思っているのに。
アウトプット。それはまさに、私がずっと苦手だった発表を彷彿とさせる。しかも、規模はたかが一クラス程度の人数で収まる話じゃない。ネットに放流したら最後、何千何万もの人に見られてしまうのだ。
絶対にできるわけがない。そう思っている。……でも一方で、憧れを抱いている自分にも、気が付いていた。
ずっと、そう。ずっとそうだった。もっと自分に自信が持てれば。堂々と発表しているクラスの子を、かっこいいと思っていた。自分のような脇役じゃなく、主役を演じる彼をすごいと思っていた。
もしも自分が彼らのようにできたなら。ぞうずっと思っていたのだ。そんな自分にとって、その本のいうアウトプットはひどく魅力的なものだった。
やりたい。でも、怖い。もしも笑われたら。まるで見当違いの自分の意見を、みんなから否定されたら。そんな恐怖が自分の中にあった。
尻込みしている私の背を押したのは、その本の、ある言葉だった。
「アウトプットをしなければ、あなたを取り巻く現実世界は何も変わらず、自己成長もできないのです」
現実世界を変えるにも、自分を変えるにも、行動しなければ何も変わらない。その発破は、怯えている私を叱ってくれているみたいだった。
そうだ。勇気を出して始めなければ、現実は何も変わらないのだ。なんでもいい。とにかく、何か、始めてみよう。まずはそこからだ。私は自分の部屋で、ひっそりと、そんな決意をした。それが転機だった。
インプット重視からアウトプット重視へ
人間関係の悩みや勉強、進学への不安は、学校生活の中でも大きなウェイトを占めますから、多くの人が悩むのも当然です。
多くの人が直面している、こうした悩みや不安。実は、これらをすべて解決できる究極の方法があります。それが「アウトプット」です。
自分の思いや考えを「形」にして、きちんと相手に伝える力。それがアウトプット力です。得た知識を「使う」ことによって、知識を「長期記憶」として保存し、自分の能力を最大化することができるのです。これがアウトプットの力です。
アウトプットとは、「話す」「書く」「行動する」こと。脳にある情報を外に出し、人に伝えることです。
インプットをすれば知識や情報が豊かになりますが、学んだことを実践しなければ、現実は何も変わりません。どんなにインプットを頑張ってもアウトプットをしなければ、あなたを取り巻く現実世界は何ひとつ変わらず、自己成長もできないのです。
しかしながら、世の中にはインプット中心の学びをしている人がほとんどです。あなたが頑張っているのに成長できない原因は、インプット中心の勉強法やインプット中心の生活にあるのです。
アウトプットは、始めるのが早ければ早いほど、効果があります。アウトプット力の強化は大人になってからでもできますが、10代の頃からこうした効果を感じることができれば、人生に対して前向きになり、自分の将来に無限の可能性を感じられるようになるでしょう。
人生は、どんなアウトプットをするかによって大きく変わってきます。ますは、インプット重視からアウトプット重視の生活に切り替えることによって、自己成長のスピードは一気に加速していきます。
これからのAI時代、「インプット能力」においては、AIにはまったく太刀打ちもできません。独創的なアイデアを生み出し、それを言語化して人に伝えていく。
「話す」「書く」「行動する」を駆使して、人とつながり、人を動かしていく。そうした「アウトプット力」の有無が、AI時代を生き残れるかどうかの鍵となります。
あなたの人生を大きく左右する「アウトプット力」。あなたに無限の可能性を与えてくれる「アウトプット力」を、本書を通じて身につけてください。
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