私は自分のサイトを開いてため息を吐く。そこには聞くに堪えないような罵詈雑言がこれでもかと言うくらい書き込まれていた。
きっかけは少し前に書いた記事だった。世の中の風潮に対して、それはどうなのかと思えるところがあったから、それを批判する文章を書いたのだ。
私としては自分の何気ない一意見であったのだが、これがネットで大いに話題となった。
いわゆるこれが俗にいう『炎上』だろう。数か月ほどサイト運営をしているが、実際に経験したのは初めてだった。
最初は大いに戸惑った。しかし、そうしている間にも火種はどんどん大きくなっていく。どうすればいいのかわからなかった。
今や、サイトには毎日のように非難が書き込まれている。零細運営だった私は、そのひとつひとつに心が抉られるかのようだった。
サイトに人がたくさん集まればいいなと考えたことはもちろんある。それは夢に見るまでに憧れたことだった。
しかし、今はただただ辛かった。こうも炎上が辛いものだとは予想だにしないことだった。
最初の頃は戸惑いながらも、いずれは落ち着くだろうと考えていた。しかし、それは今もまだ続いている。
大して気にしてはいなかった批判の意見も、時が経つにつれて、そして数が増えていくにつれて少しずつ私の心に突き刺さってくる。
あれだけやる気に満ちていたサイト運営も、今は覗く気すら起きなかった。もうかれこれ数日間、私はデスクの前に座っていない。
どこまでも落ち込みそうな気分を紛らわそうと、私は本屋へと赴いた。ざわめきと本の香りが私を迎える。
ビジネス本の特集の棚の前を歩いていると、とある一冊の本が目に入り、私は思わず手に取った。
『新世界』という本である。作者を見てみると、テレビでよく見ていた名前だったから驚いた。
西野亮廣。『キングコング』というコンビでテレビに出演していたお笑い芸人だ。
私はその本のページをめくってみることにした。きっかけはただの好奇心だったのだ。
叩かれることを怖れるな
「よし、今日の記事も書き終えたな」
私は投稿できたことを確認してパソコンをシャットダウンする。椅子の背もたれに身体を預けてひと息吐いた。
あれから炎上は次第に収まり、ようやくネットの隅で細々と更新し続ける生活に戻った。
あの瞬間だけ膨大な数に膨れ上がった閲覧者数も落ち着きを取り戻し、今では炎上以前よりも少し多くなった程度である。
西野亮廣先生の『新世界』を読んでから、私は炎上を気にしないように努めた。
炎上をしても人生が終わるわけではない。そんな当然ともいえる事実をあの頃の私は知らなかった。
無数に届けられる批判はまるで私自身が否定されたかのようだった。今にして思えば、彼らはネット上の私すら知っているかどうかわからないというのに。
批判は決して正義の鉄槌ではない。彼らはそのつもりで握っているのだろうが、多くの人は大衆の暴力を力の限り振るいたいだけの暴漢である。
先陣を切った批判は世間一般の認識とモラルを重んじる常識人か、あるいは誰彼構わず喧嘩を吹っ掛ける当たり屋かのどちらかだ。
匿名の仮面を被ることのできるネットという特殊な環境だからこそ、彼らは棒を振り下ろすことに一切の躊躇いを持たない。
批判されるということはつまり、その対象が倫理に反しているか、常識に反しているということである。
倫理に反しているのは批判される側に非があろう。しかし、常識に反しているというのはその限りではない。
常識は時として新たなことを始める足枷となる。挑戦は常識に反することをした先にあるからである。
私は『はねるのトびら』が大好きで、ゴールデンタイムによく見ていた。『キングコング』もその時に見ていたのである。
しかし、『はねるのトびら』よりも前に『キングコング』が無期限の活動休止をしていたことを知って驚いたものだ。
彼らは一度、表舞台から退いた。しかし、再び返り咲き、挫折を糧にしてさらに魅力的な輝きを放つようになったのだ。
挫折は終わりではない。むしろ、自分を高めるためのチャンスである。
西野亮廣先生は数々の著書を出し、新たな挑戦を続けている。梶原雄太先生はYoutubeとして活躍している。
お笑い芸人としてひとつの道を行くのではない。彼らの世界はこれからも挑戦していく限り大きく広がっていくだろう。
彼らは私たちに挑戦する背中を見せているのだ。その背中に憧れて、足を踏み出すことを躊躇わない人たちのために。
その場所から一歩踏み出す
「一年で売れなかったら芸人をやめる」と言って、高校卒業と同時に兵庫県の田舎町を飛び出した。
19歳のボクは吉元興業の養成所で出会った梶原雄太君と『キングコング』を結成し、すべての時間をお笑いに費やした。
その成果は実った。漫才コンテストの大賞をいただいて、関西の漫才コンクールを総ナメした。
しかし、世間に毎日負け続けて、梶原君の失踪をきっかけにキングコングの無期限活動休止が決定。
ボクは自宅待機して梶原君を待つことに決めた。
三か月後、梶原君から連絡があり、キングコングの活動が再開した。
『はねるのトびら』はゴールデンタイムに進出し、各局で冠番組もいただいた。
しかし、先輩方の背中を追いかけるだけで、追い抜く気配すらなかった。
ボクが彼らを追い抜いていない原因は才能とは別のところにあった。
ボクは先輩方が敷いてくださったレールの上を走っていた。レールを走ると、最初にレールを敷いた人間の背中を押す作業に入る。
そこで、まだ先輩方が足を踏み入れていない芸能界の外に出てみることにしました。
何の後ろ盾もなく外に飛び出すと。先輩方や同期の芸人や世間の皆様から執拗なバッシングを浴びた。
この国では、多くの人が自由に自主規制を働かせて生きているから、自由に生きようとするとバッシングの対象になる。
夢を語れば笑われて、行動すれば叩かれる。挑戦する以上、この道は避けて通れない。
その場所から一歩踏み出すのに必要なのは、『情報』という武器だ。
今、世の中で何が起こっているのかを知るんだ。時代が大きく動いている。
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