昔から本を読むのが好きでした。毎日のように図書室から本を借りては、友だちが外で遊んでいる中、私ひとりだけは教室にこもり、ずっと本を読んでいる日々を送っていたのです。
すると、次第に私の中にある欲望が目覚めてきたのです。それは、「本を読むだけじゃなく、自分でも書いてみたい」というもの。
しかし、「書けたら」と願うだけで、実際に、私は実行に移そうとは思いませんでした。いや、書いたことは何度かあります。ですが、人に見せようとは欠片も考えなかったのです。
まず心中にあったのは、「恥ずかしい」という思いでした。こんなものを人になんて見せたら、きっとバカにされる。クラスメイトなんて、考えたくもありません。
その考えが変わるようになったのは、とある一冊の本を読んだからでした。それは、齋藤孝先生の『アウトプットの力』という本です。
アウトプット。それはつまり、書いたり、話したりすること。自分が知った情報を、誰かに対して発信することです。
その本の冒頭に書かれていた、「インプットしただけで満足」というのは、今までの私のことを言っているのだとわかりました。どこか恥ずかしくなります。まさしく、その通りだったからです。
読書家であることをなんでもないというような態度を取りながらも、ひそかに誇っていました。ですが、それだけでは駄目なのです。充分じゃないのです。
インプットして自分の中で蓄えたものは、アウトプットして人に伝えることで価値を生むのだ、と。その本では、そう書かれていました。
私は書くことが苦手でした。話すことも苦手でした。というよりも、人とコミュニケーションをとることが苦手だったのです。
でも、その本を読んでいると、いつの間にか、自分の中に「誰かに伝えたい」という思いが湧き上がってくるのを感じました。
その思いが元々私の中にあったものなのか、それはわかりません。けれど、誰かに自分の中のこの想いを、伝えたいと、今まで以上に強く感じたのです。
ですが、直接書いたものを誰かに見せたり、話したりなんてするのは、勇気が出ませんでした。そこで、ネットを使ってみることにしたのです。
ブログを開設して、どうしようかと迷った挙句に、今の私が考えていることをそのまま文章にしてみることにしてみました。
『アウトプットする力』を読んで、私がどう感じたか。そして、今まさにこうして文章を書いているのはどうしてなのか、その理由を。
文章が下手なのは、わかっているのです。今まで私が読んできた本は、どれも素晴らしい文章なのだということが、改めてわかりました。恥ずかしさが募ってきます。思わず顔が熱くなるほど。
けれど、どうしてでしょう、恥ずかしくてたまらないのに、今の私はとても楽しいのです。自分をさらけ出すということが、こんなに楽しいとは、私は知りませんでした。
知識はため込むだけでは意味がないのです。知識は、使っていかないと。使って、そして伝えていかないと、自分の頭の中で朽ちていってしまうのです。
不思議な気持ちでした。指が勝手に動く。特に意識していなくても、どんどん画面に文字が生まれてくる。そうしていくうちに、周りの音が何もかも消えていって、書いていることだけが、頭の中で紡がれていく。
ここまで書き終えて、ほうと息を吐きました。支離滅裂で整っていない文章であることは、自分でもよくわかっているのです。でも、今はこの興奮に身を沈めていたかった。
落ち着いてから、私はその文章を、公開しました。ボタンを押すとき、一瞬だけ、手が震えました。これで、世界中の誰もが私の文章を読める状態にあるのだということになるのです。
どうか、誰も読まないで。いやでも、読んでほしい。そんな相反する感情が胸の中で争っています。どこかふわふわした気持ちでした。
けれど、これがアウトプットするということなのだと、私はようやく知ることができたのです。
アウトプット優先の生活を
インプットしただけで、なんとなく満足。それを発信したり、何かの成果に結びつけたりする意識が足りないのでしょう。なんてもったいないことでしょうか。
単に知識が豊富なだけでは、たいした価値を生まないようになっています。
大切なのは、その知識と知識をかけ合わせて、新しい何かを生み出すこと。そのためには、インプットした知識を、どんどん発信していくことで”気づき”を得ることが大切です。
では、インプットとアウトプットを同時に増やしていくには、どうしたらいいのでしょうか?
その答えは、思い切ってアウトプット優先にシフトしてみることなのです。本書で私が提案したいのは、「インプット1:アウトプット9」の割合を目指すことです。
幸いなことに今、私たちにはアウトプットの機会が身の回りにたくさんあります。
まずは、いかに自分がアウトプットの機会に恵まれているかを自覚していただきたいと思います。そして、その恵まれた境遇を活かして、とにかく積極的にアウトプットにチャレンジしてみましょう。
ぜひ、読んだだけで終わりにせず、アウトプットのスイッチを入れてみましょう。みなさんが、日本の文化の担い手として、たくさんの優れたアウトプットをするようになることを心から願っています。
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