会社をクビになった。俺はぼんやりと空を見上げる。不思議と、哀しくもないし、焦ってもいなかった。ただ、胸に穴が開いたかのように空っぽだった。雲がゆっくりと進んでいた。
俺は出来損ないの社員だった。仕事が終わらないうちにどんどん別の仕事ができて、気が付けば、俺は休む間もなく仕事に囲まれていた。
朝からの出勤だと残業することになるからと、昼出勤が当たり前になった。それでも、もちろん仕事が終わるわけじゃない。時にはサービス残業までするようになった。
終わらない仕事の分は、休日にやってきて進めた。もちろんその時間分の給料はもらえない。必死に仕事を急いでも、ちっとも終わりは見えなかった。
思えば、いつぶりだろう。こんなふうにぼうっと空を見上げるのは。常に頭の中は仕事でいっぱいで、作業に追われっぱなしだった。
仕事がなくなったことは、焦るべきことかもしれない。今後は、どうやって生活費を稼げばいいのか。何も考えられなかった。しかし、同時に、どこかほっと息を吐くような解放感が俺の胸にあるのも事実だ。
ああ、そうだ。せっかくだから図書館に行こう。俺はふと思い立って、図書館に行くことにした。急ぐ必要もないだろう。のんびりと歩いて向かうことにする。
俺はもともと本を読むのが好きだった。けれど、休日にも仕事をするようになってからは、本を読む時間なんて少しもなかったのだ。図書館に入ると、紙の香りと涼しさに懐かしさを覚えた。
ぼんやりと本の背表紙を眺めながら歩いていると、一冊の本が目に入った。『99%の会社はいらない』。随分と挑戦的なタイトルだ。それは、会社をクビになったばかりの俺の心に囁いてきたような気がした。
著者は有名な堀江貴文先生。ページを開くと、まるで世間に喧嘩を売っているかのような力強い言葉が並ぶ。その芯の通った言葉に、俺の心が跳ねた。
忙しくて不幸だと感じている人は多い。それはどうしてか。彼らが、「自分の時間」を生きていないからだと、彼は言う。
会社は人を「他人の時間」に縛りつけてしまう。他人のために自分の時間を浪費しているのだから、楽しいわけがない。
ならば、会社を辞めてしまえばいいじゃないか。先生の言葉は実に簡潔だった。先生は著書の中で起業を勧めている。その理由も、「自分の時間」を確保するためだ。
堀江先生はかつて、「ライブドア」という会社の社長だった。しかし、結局その結末は悲惨なことになってしまった。彼の「会社はいらない」という考えは、その経験からきているのだろう。
捕まってしまった後も、彼は今も、いや、以前よりもずっと精力的に、多くの事業を手掛け、何冊も本を出版している。その姿を思えば、会社をクビになったことなんて何てことないように思えた。
いや、むしろ、この本を読んだことで、俺の内面には変化が訪れていた。さっきまで空っぽだったそこには、ふつふつと熱い何かが湧き上がっていたのだ。
その時にはもう、会社をクビになったのは良かったことなのだと、思えるようになっていた。会社に所属している限り、俺は「他人の時間」の奴隷から逃れることができなかっただろう。
だが、今の俺を見ろ。自由。自由なんだ。俺はどこにも所属していない。ただの俺だ。それはつまり、何でもできるのだ。
俺は笑い出したい衝動に駆られた。俺は今、紛れもなく「自分の時間」を生きている。これがこんなにも幸せなことだったとは。
よし、やろう。何を。気になることを、だ。やりたいこと、気になることを全部やってみよう。今の俺にはそれができる。会社に所属していない自由の身だからこそ。
「自分の時間」を生きる
世の中には「忙しい、忙しい」と言っている人が意外と多い。会社に言われるがまま仕事をしている人であれば、その作業量はたしかに多いのかもしれない。
同じ時間だけ稼働しているのに、「忙しくて大変」と感じる人と「そこまで忙しくない」と感じてしまう人。この差はどこにあるのだろうか?
答えは簡単。前者は「他人の時間」を生きる苦しい忙しさで、後者は「自分の時間」を生きる楽しい忙しさだからだ。
このように、「自分の時間」であれば、楽しい毎日を送ることは難しくない。忙しいことは幸せであり、自分の時間を生きることが幸せの指標になると考えている。
しかし、世の中には忙しくて不幸だと感じている人が少なくない。それは「他人の時間」に縛られてしまうからだ。
世の中の大多数の人々が所属している「会社」という仕組みでは「他人の時間」に縛られることが多い。それならば、会社に属さなければいい。
IT化が進み、世の中ではさまざまなことが変わった。これからはその流れが加速し、人間が自分だけではできなかったことを代替してくれる時代がやってくる。
本書はこれからの組織のカタチと、新しい働き方を記している。「自分の時間」を生きる忙しさを手に入れることができれば、誰でも納得のいく幸せな人生を送ることができるようになると信じている。
これからの時代の幸せは「自分の時間」をいかに生きるかで決まる。そう、「99%の会社はいらない」。そして、遊びが仕事になる時代がやってくる。
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