どうしてだ。どこでこんなにも差がついたんだ。俺は隣にそびえたつ巨大なビルを見上げて、心の中で叫んだ。どうして、俺とお前の差はこんなにも広がっちまったんだ!
あいつと俺は高校の頃からの同級生だった。成績はいつも一位、二位を争う。互いに意識するのは当然のことだった。
とはいえ、仲が悪いわけじゃない。むしろ大の親友だったのだ。俺たちは友として、そして良きライバルとして互いに切磋琢磨し合った。
俺たちの仲は卒業して社会人になっても変わらなかった。最初の数年間は経験を積むために社員として働いて、やがて独立し、自分のビジネスを起業した。
俺が独立すると、あいつもほとんど同時に独立した。しかも、業種も同じで、俺とあいつの会社は互いに目に入るところにあるのだ。つまり、今度は商売敵というわけだ。
ところが、それから俺たちの道は分岐し始めた。俺の会社は業績がいまいち伸びず、最初は好調だったビジネスも次第に右肩下がりになってきた。
対してあいつの会社は業界でもトップクラスだと囁かれている。会社はどんどん大きくなり、やがて知らぬものはいないほどの大企業になった。
なぜだ。俺はどこを間違えた。どうして売れないのか、わからなかった。そしてなぜ、あいつの会社があれほどまでに業績が伸びているのか、わからなかった。
俺の会社が扱っているのは、流行しているブランドの商品だ。それはまさに大当たりで、会社を立ち上げた最初の滑り出しは飛ぶように売れた。
対して、あいつの会社が扱うのは、業界でもマイナーな部類だった。そんなもので売れるわけがないという俺の見立て通り、あいつの会社はそこまでの業績ではなかったはずなのだ。
それが、いつの間にか逆転している。俺の会社はすでに斜陽となり、あいつの会社は今や燦然と輝いている。
俺だって、ただそんな現状に手をこまねいていたわけじゃない。原因を探るためにマーケティングの本を読み漁った。しかし、どの本も堅苦しい専門用語ばかりで、まるで呪文のようだ。わけがわからない。
こうなれば、もう手段はひとつしかなかった。それは、俺にとってはタブーとすら言える方法。だが、もはや手段は他にない。
「なあ、どうしてお前の会社はあんなにも業績を伸ばしたんだ?」
約束をして店で食べた後、俺は正面に座るあいつに聞いてみた。あいつとの食事会は何度もしていたが、自分の悩みを彼に、いや、そもそも自分以外の誰かに相談するなんて初めてのことだった。
「頼む! 教えてくれ! このままじゃあ、俺の会社はこのまま倒産してしまう」
ライバルに頼らざるをえない自分が情けない。俺はライバルとして失格だ。このまま、あいつとの関係が変わってしまうかもしれない。そんなことを覚悟したうえでの頼みだった。
にもかかわらず、あいつはというと、頭を下げる俺をきょとんとした表情で見ている。かと思えば、いきなりふっと笑った。
「いやぁ、君がものを頼んでくるなんて珍しいこともあるね。いいよ、ちょうど持ってきてるからね。君にも勧めようと思っていたところだし」
彼は俺の葛藤なんて軽いもののようにさらっと流すと、黒い鞄から一冊の本を取り出した。見た瞬間、俺は顔をしかめる。
「マーケティングの本ならもう腐るほど読んだぞ。わけがわからなかった」
「本当かい? でも、きっとこの本ならわかりやすいと思うよ」
半信半疑のまま差し出されるままに受け取って、タイトルを見下ろす。『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』と書かれている。
「面白いタイトルでしょ」
「言っただろ。この手の本はもう腐るほど読んだんだよ」
「まあ、いいから読んでみなって」
俺は言われるがままに、渋々本のページをめくった。しかし、そこに広がっていたのは俺が見慣れた専門用語の塊ではなく、俺の常識を覆すような、そんな内容だった。
マーケティングをわかりやすく解説
ビジネスの世界には、2種類の人がいます。一生懸命頑張っているのに、なかなか商品が売れない人。そして、あまり頑張っている感じはしないのに、なぜか商品が売れている人です。
なぜか売れている人は、マーケティングの考え方を理解して、それを行っています。マーケティングとは、「頑張らなくても売れる方法」を整理して、誰もができるようにした考え方なのです。
ただ残念なことに、マーケティングを知らずに、ムダな努力をしている人が、世の中にはとても多いのです。
マーケティングを知らない人が多いのには、理由があります。世にあるマーケティングの本の多くは、マーケティングを知らない人にとっては難しい言葉が多いために、読んでいて頭が痛くなってしまうのです。
マーケティングで本当に必要なことは、子どもでもわかるほどシンプルでわかりやすいものです。そこで本書は、身近な疑問からはじめて、楽しみながらマーケティング理論がいつの間にか自然とわかるように書きました。
マーケティングを知ることで、少しでもあなたの人生を豊かにしていただければ、と心から願っています。
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