お金持ちになるための必読本『金持ち父さん貧乏父さん』ロバート・キヨサキ


 雨が私の身体を冷たく凍えさせていた。薄汚れた風情で呆然と俯く私を、道行く人たちは蔑んだ目で見据えて通り過ぎていく。

 

 

 仕事は得意ではなかったが、自分なりにどうにか頑張ろうとしていたのだ。妻に逃げられて以来、私には仕事しかなかった。

 

 

 今はもう、それすら残っていない。何十年も務めた仕事だったが、失うのは一瞬の出来事だった。

 

 

 気がつけば会社から私の席がなくなっていた。日頃から私のことを見下していた同僚連中がにやにやしながら私を見ていた。

 

 

 もう、全てを失った。家族も、仕事も。お金が入らない以上、今住んでいる家も引き払うしかないだろう。この先、私はどうやって生きていけばよいのか。

 

 

 私の心中にひとつの未来がよぎる。それは今まで考えつつも避けてきた暗黒の未来である。しかし、今はそこが少し明るく見えた。

 

 

 私の行く末は一本道だった。横道は全て一寸先すら見えない暗がりに支配されていた。

 

 

 私は前を向いて歩き続ける。向かう先は、きっと断崖絶壁であろう。私はなぜかそれを確信していた。

 

 

 しかし、気分はむしろ晴れやかだ。このまま泥水をすすって生き延びるよりも、そちらの方が楽だろうと思えた。

 

 

 仕事は好きではなかった。生きるのは辛かった。しかし、ようやく楽になれるのだ。私はまた一歩、足を進めた。

 

 

 ふと見下ろせば、一冊の本が落ちている。『金持ち父さん貧乏父さん』という本だった。

 

 

 雨に濡れる私にその本を手渡したのは、恰幅の良い老紳士である。彼は優しい笑みを見せると、本を私に預けたまま消えていった。

 

 

 狐につままれたような気分だった。しかし、渡してきたからには読めということであろう。

 

 

 私は未だ首を傾げたまま、本のページを開いた。

 

 

人生に立ち向かえ!

 

 私は本を閉じた。しばらく、放心したまま私は動くことができなかった。私は雨をしのぐ屋根の下で佇んでいた。

 

 

 それほどまでにその本の内容は私の常識からかけ離れていたのだ。私の中にある真実を根底から覆すものであった。

 

 

 しかし、あながち全てがでたらめだとは言えなかった。他ならぬ私自身にも身に覚えがあったからである。

 

 

 私はもう全てを失った。もうこれ以上失うものがないということはつまり、今の私にはいくらでも挑戦するチャンスがあるということだ。

 

 

 働いていた頃から、自分がお金持ちになれると考えたことはなかった。しかし、どん底にいるはずの今になって、私は明確に自分が金持ちになっている想像を思い描くことができた。

 

 

 手の中に納まる本をぐっと握り締める。いっそのこと、やってみてもいいのではないだろうか。

 

 

 今まで一本だと思っていた道に、横道ができていた。そこは暗がりに包まれていて、何があるかはわからない。私は足を一歩、踏み出した。

 

 

 不思議と晴れやかな心持だった。それはさっきまでの絶望へと向かう晴れやかさとはまた別のものだった。

 

 

 ふと、空を見上げる。雨は止んで、雲の隙間から光が射していた。

 

 

お金持ちになるために! ビジネスの教科書

 

 私には二人の父親がいる。

 

 

 金持ち父さんと貧乏父さんだ。一方の父は高い教育を受け、優秀な成績を残した人だった。もう一方の父はハイスクールすら卒業していない。

 

 

 二人ともよく働き、収入も多かった。にもかかわらず、一方の父は最期までお金に苦労し、もう一方の父はハワイで裕福なひとりとなった。

 

 

 一方の父は「それを買うためのお金はない」と言った。もう一方は「どうやったらそれを買うためのお金を作り出せるのか」と言った。

 

 

 ひとりは「金持ちはもっと税金を払うべきだ」と言った。もうひとりは「税金は生産する者を罰し、生産しない者に褒美をやるものだ」と言った。

 

 

 一方の父は「一生懸命勉強すればいい会社に入れる」と励ました。もう一方の父は「一生懸命勉強すればいい会社を買うことができる」と励ました。

 

 

 ひとりが「私にお金がないのは子どもがいるからだ」と言えば、ひとりは「私が金持ちでいるのは子どもがいるからだ」と言った。

 

 

 一方が「お金に対しては安全第一」だと言えば、もう一方は「リスクを取ることを学べ」と言った。

 

 

 一方の父が「この家が最大の投資であり、最大の資産だ」と言えば、もう一歩の父は「この家は負債だ」と言った。

 

 

 ひとりはわずかな金を貯めることに苦心し、もうひとりは次々と投資を増やしていった。

 

 

 一方の父はいい仕事に就くための履歴書の書き方を教えてくれた。もう一方の父は自分で仕事を生み出すためのビジネスプランの書き方を教えてくれた。

 

 

 お金は力だ。だが、それよりも強い力を持つのはお金に関する教育である。

 

 

 金持ち父さんは私に6つの教えを授けてくれた。少ないが、大切な教えである。

 

 

 その教えは貴方がお金持ちになるための指針として導いてくれるだろう。

 

 

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