お金について知ろう『お金の教室 ニ十歳の君に贈るマネー運用論』山崎元


 気がついた時には何もかもが遅かった。危機感を覚えた時にはすでに、私の懐にはどうしようもない借金だけが残っていた。

 

 

 無知であることは罪である、そう言ったのは誰だったか。しかし、私は長らくその言葉を信じてはいなかった。

 

 

 むしろ、学ばずとも知っているという自らの知識の広さを過信し、進んで学ぼうとはしなかった。それがただの怠慢であるとも気づかずに。

 

 

 その報いを、受けたということになるのだろう。無知ということは、すなわち身を守る術すらも知らないということに他ならなかった。

 

 

 社会に出たばかりの私はまさしく何も知らなかった。無知であり、無垢であった。それは、社会の草陰から獲物を探す狡猾な獣たちには垂涎のカモに見えたのだろう。

 

 

 あれよあれよと言う間にこの有様だ。払ったお金は私の身になるものとして何ひとつ返ってくることはなかった。

 

 

 父も母も、騙した相手に対して怒りをあらわにしている。裁判で訴えるべきだという主張を繰り返していた。

 

 

 私も最初はそう思っていた。騙してきた相手への恨み言を呟き、社会の悪意というものを憎悪した。

 

 

 しかし、ふと我に返ると、私と私の家族に向けられている視線は、決して暖かいものではなく、むしろ冷たいものだった。

 

 

 それを知った時、私は学んだのだ。騙される方が悪い。どれだけきれいごとで塗り固めていようとも、社会はそういうものになっているのだと。

 

 

 ならば、私がしなければならないのは騙した相手を憎むことではない。二度と騙されないようにすることだ。

 

 

 そのために必要な武器は、知識だ。知識がないからこそ、私はいいように騙されてしまうことになった。

 

 

 知っていれば、こんなことにはならなかっただろう。学んでいないことを知らないのは当然のことだ。そして、社会は無知を容赦なく食い尽くしていく。

 

 

 無知とは自分の身を守る術すらも知らないということだ。私はそんな自分から抜け出す必要があった。

 

 

 学校では教えてもらえない、お金の知識。私に欠けていたものはそれだ。私は学ばなければならない。どこで。『お金の教室』で。

 

 

今だからこそ

 

 お金にガツガツするなんて印象が良くない。強欲な感じがして、とても好感は抱けない。誰もがそんなことを思っている。

 

 

 だからこそ、私たちはお金について学ぶことには消極的だ。多くの人が、社会に出てすぐに痛い目を見た私のように何も知らないのも、そのせいだろう。

 

 

 そのくせ、誰もが内心でお金に対する欲望を抱えている。機会を掴み取り、巨万の富を手に入れることを憧れている。

 

 

 だからこそ、騙されるのだ。知識がないのに欲望だけあるから、それが正しいかどうかわからずに話に乗ってしまう。

 

 

 お金が欲しいのは誰もが思っていることだ。まずはそのことを自覚するべきなのかもしれない。

 

 

 その欲望を自覚したうえで、お金の知識を身につけたならば、騙されないためにも使うことができるし、賢い人ならばより多く稼ぐために使うことができるかもしれない。

 

 

 私たちはお金について知っていると思っている。思い込んでいる。その思い込みが、私たちを破滅にまで導くのだ。

 

 

 私は『お金の教室』で学んだことを後悔はしていない。お金に対する意識は高まり、お金の知識を身につけることができた。

 

 

 そうしてみると、今まで見ていた世界とはまた違った世界が見えてくる。社会は、そうした欲望を刺激する悪魔のささやきがいくらでもある。

 

 

 ネット社会であるからこそなおさらだ。情報はいくらでも流布し、正しい情報と間違った情報が入り乱れている。

 

 

 かつての情報が何もなかった時代とは違う。今ではむしろ、情報が溢れ、どれが正しいかわからなくなっている。

 

 

 だからこそ、私たちはその中から正しい情報を選び取らなければならない。

 

 

 私は騙された自分を愛おしく思う。かつての私が騙されてくれたからこそ、お金を学ぶことができた今の私がいるのだから。

 

 

身を守るためにマネーリテラシーを学ぶ

 

 本書では、社会に出る若い人たちに、お金の運用について必要十分の知識と考え方を余計な苦労なしに身につけてもらうことを「目標」とした。

 

 

 お金の扱い方、特に、お金の運用方法について知ることは、現代にあっては、生活の基礎技術のひとつと言ってもいい。

 

 

 しかし、お金の問題について、中途半端な知識や誤解を持っていると、かえって危険に近づいたり、損をしたりすることがあるのが、現代の厄介な現実だ。

 

 

 「マネーリテラシー」とか「投資教育」とかいった美名の下に、金融ビジネスにとっての「カモ」を増やすような情報が流布していることが珍しくない。

 

 

 さらに悪いことに、金融に関する理論が、投資家が投資内容を改善することよりも、金融ビジネスの側が顧客から儲けるために、広範囲に悪用されている現実がある。

 

 

 本書では、網羅的な知識や計算問題を解くテクニックではなく、お金の性質や実際の運用に当たっての「イメージと気分」を印象的に伝えることに重きを置いている。

 

 

 調べて分かることをあらかじめ知っておくことよりも、調べないと、あるいは自分で計算しないと「まずい!」と気づく感覚こそが大切だ。

 

 

 お金の運用について知ることは、損を避ける防衛の意味ばかりでなく、お金をより有利に増やして、人生の自由度を広げるために役立つ。

 

 

 お金の正しい扱い方は、「情報の非対称性に気付く」、「利害の異なる他人を簡単に信用したり頼ったりしない」、「最悪のケースも想定して計画を立てる」といったビジネスや人生全般の原則にも通じている。

 

 

 お金の運用を学ぶに当たって、どんな読者にとっても、「今」はいいタイミングだと思う。

 

 

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