これであなたも年収一億円!『年収一億円になるためのノート』午堂登紀雄


「お前は満足しているのか?」

 

 

 目の前に座った悪魔が、私ににやにやと不気味な笑いを向けた。最近の悪魔はスーツにネクタイなのか。初めて知った。

 

 

「ああ、満足しているとも。決まっているじゃあないか」

 

 

 私は胸を張って堂々と答えた。

 

 

 いい会社には入れて、仕事は上々。給料も順調に増えているし、銀行口座のお金もみるみる貯まっている。

 

 

 仕事仲間との仲も良好。さらには彼女もできたのだ。可愛い系の、小柄で華奢な娘だった。

 

 

「満足だよ、おれは。仕事も、プライベートも」

 

 

 あんたは来る場所を間違えたんじゃあないのか? 俺は挑発するように言った。しかし、彼は相変わらずにやにや笑うだけだ。

 

 

「いいや、間違えていないさ。あんたで間違いない」

 

 

「もう満足している俺を誘っても、悪魔の言うことなんか聞くわけないだろう。時間の無駄だ」

 

 

 立ち去ろうとする俺の目の前に現れた悪魔は、まあまあ聞けよと言わんばかりに俺の前に立ちふさがった。

 

 

「俺はもっとできる」

 

 

 悪魔がポツリと呟いた。

 

 

「こんな給料じゃあ、俺は満足なんかできない」

 

 

 私は言葉を吐き出すことができなくなっていた。言葉に詰まる。呼吸がどこか苦しかった。

 

 

「仕事はどうにも単調だ。おもしろくない」

 

 

「ち、ちが」

 

 

 私の静止を悪魔はちっとも聞こうとしない。

 

 

「俺はもっと楽しい仕事をしたいんだ」

 

 

 悪魔はそのあくどい笑みを浮かべた私に顔を寄せる。その視線はどろりと溶けて蠱惑的に私を誘った。

 

 

「お前のことなど、もう全部知っている。お前は、なにひとつ、満足していない。仕事も、プライベートも、人生も」

 

 

 もっと金が欲しいんだろう? 悪魔の甘いささやきが私の耳からしのびこんで脳を揺らす。私はごくりと息を呑んだ。

 

 

「手に、入るのか」

 

 

「ああ、いけるとも。もちろんだ」

 

 

 私の疑問に、悪魔は力強く断言した。彼は手を差し出す。白い手袋に包まれた細い腕は、まるで女の手のように美しい。

 

 

 気がついたら、私は彼の手を握っていた。悪魔は一層美しい笑みを浮かべる。

 

 

「契約成立だ」

 

 

 その瞬間、彼はふっと姿を消した。代わりに、握手していた私の手には『年収一億円になりためのノート』と書かれた一冊の本が収まっている。

 

 

 世界に都会の喧騒が戻ってくる。私はその渦中で、いつまでも黙ったまま、立ち尽くしていた。

 

 

悪魔の正体

 

 私は自分のビジネスの作業をひと段落終えて、ふうと息を吐いた。カップに入れてある珈琲を喉に流し込む。

 

 

 悪魔から渡された本には、年収一億円になるためには自分で起業しないといけないと書かれていた。

 

 

 大学を卒業していい会社に入ることをずっと目標にしてきた私にとって、その発想はまさに青天の霹靂だった。

 

 

 まさか自分で起業する道があるとは。会社に経営することが正義とされている今の社会だからこそ盲点だった。

 

 

 しかし、企業は楽ではない。あの本に書かれているように、貪欲に情報を得て実践に移さないと給料以上の年収は得られない。

 

 

 一億円という響きは魅力的だった。しかし、今の私はそれ以上の価値のあるものを手に入れていた。

 

 

 目標ができたことで、よりいっそうやる気が湧いたのだ。仕事も精力的にこなし、副業も手掛ける。

 

 

 もちろん、疲れはそれなりに溜まっていくし、休みたいときもある。それは人間としての当然の思考であろう。

 

 

 しかし、先も見えないものを手探りでのろのろと進んでいくのは、存外に楽しいものであったのだ。

 

 

 会社で働いているどんな時よりも、生きている人間であることが実感できた瞬間であった。

 

 

 あの時、現れた悪魔。あれは本当に悪魔だったのだろうか。

 

 

「な、俺の言うことを聞いてよかっただろう」

 

 

 珈琲の黒い窓に、悪魔の姿が映りこむ。それは私の姿をしていた。私は頷く。これまでにないほど、満ち足りた思いだった。

 

 

年収一億円の鍵は企業力にある

 

 どんな状況の方であろうとも、「年収一億円」になるためには企業力が必要です。

 

 

 年収一億円を達成するには、自分でビジネスを起こし、自分のビジネスを大きく育てていくことが必要不可欠なのです。

 

 

 起業力とは、イノベーションを起こす力です。

 

 

 今いる環境に甘んじていては、イノベーションを起こすことはできません。現状や世間で言われている常識を疑ってみることからです。

 

 

 その視点で仕事のあり方や会社のシステムを見直してみれば、いろんなアイデアが出てきてそこから改革が始まります。

 

 

 起業力を身につけるための第一歩はマーケティング的な発想を持つことです。

 

 

 世の中の人の不満に問題意識を持ち、解決の方法をリサーチすることでビジネスのネタの足掛かりが見つかります。

 

 

 そのためにマーケティングの視点から物事を考えることが必要となるわけです。

 

 

 もうひとつ必要なことはプロの消費者になることです。

 

 

 プロ消費者は消費側の視点だけでなく、売り手や供給側の立場からも商品やサービスを考えます。

 

 

 こうした「マーケティング」「プロ消費者」という視点を持つと、世の中は全然違ったものに見えるし、起業のヒントというのはどこにでもころがっていることがわかります。

 

 

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