お金の流れを理解する『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』ロバート・キヨサキ


「ああ、まさかお前がそんなふうになるとは、思ってもいなかったよ」

 

 

「それは私のセリフだろう。元気そうで何よりだ」

 

 

 私は寝ころんだまま、見舞いに来てくれた男の顔を見上げた。自分と同い年くらいの老人。その表情は、どこか寂しげで、しかし、穏やかに微笑んでいた。

 

 

 彼から見舞いに来ると聞いた時は本当に驚いた。今や、彼と私の立場は大きく変わってしまった。それなのに、まだ彼が私を覚えているとは、思ってもみなかったからだ。

 

 

「聞いたよ。おめでとう、と言うべきかね。祝杯でも上げたいところだが、すまんな、医者から禁止されているのだよ」

 

 

「構わんさ。こうして久しぶりに会えただけでも嬉しいとも。君は私の恩人だからね」

 

 

「さぞ幻滅しただろうな。今の私の姿を見て」

 

 

 私がそう言うと、彼はまた、寂しげな表情をした。思い出した。弱虫な彼は昔から、そんな表情をよくしていたのだった。

 

 

 私と彼は同じ学校に通う幼馴染だった。気の弱い彼は、いつも私の後ろをちょこちょことついてくるような、そんな関係だった。

 

 

 私と彼が仲良くなったのは、私たちが同じ夢を持っていたからだ。「お金持ちになりたい」という。

 

 

 私は野心家だった。自分はこんな田舎にいるような人間じゃないと思っていた。そして、彼は親孝行がしたいからというのが理由だった。

 

 

 私たちは毎日のように、どうすればお金持ちになれるのか話し合った。そして、その道は次第に分かれていくことになった。

 

 

 私は頑張って勉強して、いい会社に入ることで金持ちになれると信じていた。私の成績はクラスでも一番だった。

 

 

 対して、彼は勉強もせずにビジネス書を読みふけっていた。『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』という本を夢中になって読んでいた。

 

 

 しかし、勉強もそっちのけで読んでいたせいか、彼は成績がすこぶる悪かった。次第に、私と彼は距離を置くようになっていった。

 

 

 大学を卒業し、たしかな学歴を得た私は、優良だと言われる大企業に就職した。当時の私は希望に満ちていた。あとは出世していけば、私の夢は叶う、と。

 

 

 しかし、働いていくうちに、夢は冷徹な現実に呑み込まれていった。生きることにも必死で、金持ちになるなんて夢のまた夢だった。

 

 

 会社の上層は表沙汰にはされないものの一族で占められており、一族ではない人間は一定の地位よりも上に出世することができなかった。

 

 

 それだけではない。ある程度の地位にまで出世したことで、私の仕事はより多忙になった。帰宅時間になっても仕事は終わらず、家でも私は仕事に囚われていた。

 

 

 出世したことで、どうにか生活には余裕はできた。しかし、生きるより他に金を使う暇がなかった。仕事を休めば、あっという間に生活は困窮してしまう。

 

 

 これが私の望んだ生活だったのか。もはや、そんなことすらも頭には残っていなかった。

 

 

 会社に勤め続けた私は、上司の責任を取らされて、あっさりと辞めさせられることになった。

 

 

 退職のショックと長年の無理がたたり、私は病気にかかってしまった。生きるための貯金が、湯水のように消えていく。

 

 

「お前は、うまくやったみたいだな。夢を叶えたじゃないか」

 

 

「ああ」

 

 

 彼はいくつものビジネスを起こし、莫大な富を得た。その活躍は私の耳にも入ってきていた。

 

 

「私は、何か間違えたのか?」

 

 

「……いいや、間違えてなんかいないとも。それもまた、君が選択した人生だからね」

 

 

 彼はまた寂しげな顔をした。ようやくわかった。彼が何を寂しがっているのかを。

 

 

 彼は、かつて同じ道を志した私との差が、これほどまで開いてしまった、その事実に、寂しがっているのだ。

 

 

 ああ、友よ。今でも私を友と呼んでくれる君との関係を、今ほど憎らしく思ったことはない。

 

 

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 この本は『金持ち父さん貧乏父さん』の考えを引き継いでいるので、いわば続編と考えていただいていい。

 

 

 『金持ち父さん貧乏父さん』は、お金と、人生の選択について、私が二人の父親から教えてもらったまったく違う考え方について書いた本だ。

 

 

 一方は高い教育を受けていたが、もう一方はハイスクールさえ卒業していなかった。そして、一方は一生お金のことで苦労し、もう一方は金持ちになった。

 

 

 私は十二歳の時、金持ち父さんからとてもためになる話を聞いた。それはこんなお話だった――

 

 

 むかしむかしあるところに、ひなびた村があった。その村では雨が降らないと水が手に入らなかった。

 

 

 この問題を解決するために、長老たちは村に毎日水を運んでくる仕事を引き受けてくれる人間を募ることにした。そして、名乗り出た二人と契約を交わした。

 

 

 ひとりはエドという男だった。エドは鉄のバケツを二つ買ってきて、一マイル離れた湖に駆け出し、せっせと水を運び始めた。

 

 

 毎日朝から晩まで水を運び続けたエドのもとには、すぐにお金が舞い込んできた。辛い仕事だったが、お金が入ってくるのがうれしかった。

 

 

 もう一方のビルは、契約を結んだあとしばらく村から姿を消した。数か月が過ぎてもビルは戻ってこなかった。

 

 

 ビルにはエドと競うつもりはなかった。その代わりにビジネスプランを立て、会社を興した。そして、一年後、ビルの会社は村と湖を結ぶパイプラインを完成させた。

 

 

 ビルの儲けはバケツ一杯分の水につきわずか一セントだったが、毎日の供給量は相当な量に達した。だから、ビルが働かなくても、お金が全てビルの銀行口座に流れ込んだ。

 

 

 ビルはそれからずっと幸せに暮らし、エドの方はずっと必死で働き続け、お金に苦労する生活を続けましたとさ。おしまい。

 

 

 金持ち父さんがしてくれたこの話が、その後ずっと、私の道案内をしてくれている。パイプラインを作りたいと思っている人、そんな人にこの本を読んでもらいたい。

 

 

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