労働者をやめて、経営者になろう『労働2.0やりたいことして、食べていく』中田敦彦

「ねえ、エドワード・ゴーリーって知ってる？」

　そう聞いてくる友人に、私は首を傾げた。聞いたことのない名前だった。この友人が言うのなら作家とか芸能人だと思うのだけれど。

「絵本作家なんだけどね、『おぞましい二人』とか『ギャッシュリークラムのちびっ子たち』とかを書いてる人だよ」

　どれも子供が見たら泣くような怖い本なんだけどね。熱弁する友人に、私はいかにも気のないようにふうんと答えた。

　そんな私の態度が気に障ったのか、友人は不満げに眉根を寄せる。

「あ、興味がないって顔してる。いいよ、なら説明しよう」

　友人はそう言うと、自分の携帯で何やら打ち込み始めた。情報でも調べているのかなと思ったけれど、見せられたのは動画のようだ。

「これは？」

「オリエンタルラジオのあっちゃんがやってる動画だよ」

「へえ、お笑い芸人の？　あの人って動画も投稿してるんだ」

　私はそう言いながら動画を眺めた。

　オリエンタルラジオの中田敦彦といえば、高学歴の頭のいい人物だ。Youtubeの動画で流暢に話すその内容は、まるで引き込まれるかのような説明だった。

「最近、テレビってあんまり見ないんだけど、あの人って今、何してるの？」

「んー、いろいろやってるみたいだよ。こうして動画出したり、音楽活動やったり」

　あとは、ほら。友人が鞄から差し出してきたのは一冊の本だった。オリラジのあっちゃんが表紙に大きく映っている。

「こんな本も出してるみたい」

「へえ、マルチに活動してるんだね」

　私は友人の持った本に手を伸ばした。

新たな武勇伝を刻もう

　私は読み終えた本を閉じた。私が読み終わったことに気づいた友人は眺めていた携帯を閉じて、私から本をすっと抜き取って鞄に入れる。

「どうだった？」

「なんか、そんな考え方もあるんだなって、思った」

　私は大学を卒業してからは、ひとつの企業で頑張ればいいかと考えていた。そうすれば安定だと親が言ったからだ。

　しかし、彼はそれだけでは危ないという。ひとつの企業ではなく、いくつもの仕事を並列することがいわくの労働2.0だと。

　それは私の常識にはない考え方だった。しかし、実際に働くことへの不安はたしかに心中にはある。

　そのために、何かを始めてみるべきかもしれないな、とは思った。

「ねえ」

　友人が話しかけてくる。その表情は何かを企んでいるような、それでいて何かを決意したような、そんな表情だった。

「実は私さ、始めようとしてることがあるんだけどね」

　仕事を、作ろうと思うんだ。その内容を聞いてなるほどと思った。以前の私なら無理だと忠告するだろう。自分で起業するなんて無謀だという考えをしていたから。

　しかし、今の私ならば、どうするか。

　私は身を前に乗り出した。突然の私の行動に、友人が面を食らったような表情をしている。

「その仕事、私にも一枚噛ませてよ」

　私が言うと、友人は一瞬、呆気にとられるも、すぐににやりと笑って手を差し出した。私はその手を握って握手を交わす。

　新たな武勇伝を作るのは私たちだ。

新時代の働き方――労働2.0

　会社に対する不平不満は会社を良くしたいという意識があるからこそ出てくるものである。

　しかし、彼らが会社を変えることはできない。

　会社のあり方を決めるのは経営者であり、雇用者の意見はお呼びではないのだ。

　ならば、自分で事業を始めればよいではないか。

　しかし、彼らはいい会社で働きたいと思うのに自分で仕事を作ろうとは考えない。

　今、働き方は大きく変わりつつある。人々は広い視野を持ち、自分だけの新しい働き方を創出していくべきなのだ。

　一つの職種、一つの会社、一つの場所に囚われない。雇われるだけでなく、雇うことでやりたいことを実現させる。

　このような新時代の働き方を労働2.0と名付けた。

　そのノウハウやきっかけの掴み方をNKT（ナカタ）の仕事術として伝えていく。

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新時代の働き方――労働2.0

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