芸能事務所の経営の落とし穴『ジャニーズで今、何が起きているのか?』常田裕+別冊宝島特別取材班


 部屋を掃除していると、押し入れに何やら入っていた。引っ張り出してみると、それは大きなウチワである。

 

 

 ただのウチワではない。表面にはでかでかと元SMAPの稲垣くんが眩しい笑顔を浮かべたまま私を優しく見つめていた。

 

 

 私はかつて自他ともに認める熱心なSMAPのファンであった。コンサートが開かれると知るや否やチケットを予約し、仕事の有休をとって行っていたものである。

 

 

 私が好きだったのは稲垣くんであった。彼の優しげな笑みは仕事で疲れた身体を引きずって帰路についた私を癒してくれた。

 

 

 SMAPのライブを見に行くことは私の生きる糧であった。彼らがいたからこそ、私はここまで頑張れた。

 

 

 だから、彼らが解散を発表した時、私は愕然とした。

 

 

 あれほど涙を流したのは久しぶりであった。新しい道に行くならば、応援するのがファンなのだろうけれど、それでも寂しかった。

 

 

 どうして。どうして。テレビで彼らが謝っていたことに、理解はできても納得はできなかった。胸中に疑問の煙が渦巻いている。

 

 

 ウチワは、もういらないな。私はそっと呟いて、ゴミ捨て場に向かう。

 

 

「あら、久しぶりです。最近見かけないから心配していました」

 

 

 近所の老婦人とばったり会った。私は会釈で返す。SMAPが解散してから、私の人生は色を失ったかのようだ。

 

 

「まだ元気ではなさそうね。あ、そうだ。私、あなたに渡したいものがあったのよ」

 

 

 そう言って、彼女が渡してくれたのは一冊の本だった。タイトルを見て、私は目を見開く。

 

 

「ほら、あなた、ジャニーズ好きだったでしょ。友達からもらったんだけど、私はあまり興味ないから」

 

 

 部屋に戻った後、私は改めてその本を見た。『ジャニーズで今何が起きているか』と書かれている。

 

 

 私は震える手でそのページをめくった。

 

 

裏側を覗き込む勇気はあるか

 

 私は読み終わった本を閉じた。しばらくの間、私は動くこともできず、呆然としていた。

 

 

 予想をはるかに超えるほど赤裸々な内容だった。ジャニーズ事務所という巨大な組織の中では、まるで女子高のように陰湿な派閥争いが巻き起こっていたのだ。

 

 

 芸能界は華やかな世界である。中でも、アイドルなんてものは私たちみたいな一般人にとっては輝くような存在であろう。

 

 

 しかし、それはあくまでも表側でしかない。表側がきれいならば、その分の醜悪な汚れは裏側に集められている。

 

 

 私たちは隠されているものを知ろうとする。いわゆる出歯亀というやつで、心中に浮かび上がる興味は時として制御することができなくなる。

 

 

 でも、隠されているものには隠されている理由がある、と私は思うのだ。わざわざ汚いものを隠した蓋を開け放つ必要はない。

 

 

 アイドルはみんなに夢を与える存在だ。彼らはテレビの中で、あるいはステージの上で輝き続けなければならない仕事である。

 

 

 しかし、私たちはしばしば彼らもまた心ある人間だということを忘れてしまう。匿名であることをいいことに、好き勝手に批判し、中傷し、自分の理想を押し付ける。

 

 

 彼らアイドルもまた人間である。人間であるが、彼らは私たちの理想の姿であろうとする。そのために、人間らしさを楽屋の鞄の中に隠しておくのだ。

 

 

 しかし、せっかく隠したはずの鞄の中を勝手に漁ろうとする人の多いこと。

 


 それもまた、アイドルという虚像を楽しむひとつの姿勢として考えるならば、否定のしようはあるまい。

 


 しかし、勝手に漁ったにもかかわらず、出てきたものを他にも晒して、こんな正体を隠していたのだと幻滅するのは違うだろう。あまりにも自分勝手な所業ではないか。

 


 隠されている幕の裏側を知るならば、知る側にも相応の覚悟が必要である。そして、そこに広がる光景を我らは受け入れなければならぬ。

 


 それが知らんでもいいものを知ろうとした私たちへの罰なのだろう。

 


 私はジャニーズという組織の裏側を知った。そうして考えた今、私の中にSMAP解散への悲しみが水泡のように消えている。

 

 

 ただ、思うがままに生きてほしい。私は彼らにそう願うばかりである。

 


 タレントにとって親のような存在だったジャニー氏を失い、ジャニーズ事務所には今後ますますの苦境が訪れるであろう。

 


 無事に乗り越えて、今後もジャニーズという組織がさらなる発展できればと思う。子が元気に活動することこそがジャニー氏への一番の手向けになるだろうから。

 

 

ジャニーズの動乱

 

 芸能界で長らく栄華を誇ってきたジャニーズ事務所が今、大きな変化を迎えていた。

 

 

 関ジャニ∞の渋谷すばるの退所。タッキー&翼の解散と滝沢秀明の引退。嵐の活動休止発表。

 

 

 相次ぐ主力タレントの退所のトリガーとなったのは、SMAP解散から端を発している。

 

 

 彼らの会見から事務所に疑義を覚えた公正取引委員会は芸能事務所と芸能人の間の契約の調査を始めた。

 

 

 ジャニーズ事務所による芸能界における暗黙の了解が法に抵触する可能性を指摘したのである。

 

 

 ジャニーズ事務所内で権勢を誇るのはメリー喜多川副社長の娘であるジュリー氏である。

 

 

 しかし、ジュリー氏には求心力や経営能力、マネジメント能力が不足している。

 

 

 SMAPの解散騒動は所属タレントの心奥にある彼女への不信感を噴出させるきっかけとなった。

 

 

 SMAP解散とジュリー氏の実質的トップ就任から始まったスキャンダルやタレントの退所、嵐の活動休止と関ジャニ∞解散危機。

 

 

 芸能界で強い影響力を保持していた事務所は今、黄昏時に立たされているのである。

 

 

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