「モノを売る」ということについて、今まで深く考えたことはなかった。ただ、上司の指示通りに動いて、接客する。僕にとっての仕事とは、それが全てだった。それではいけないのだと悟った時は、もう遅かったのだ。
僕が大学卒業後、すぐに就職した仕事を辞めたのは、ついほんの少し前のことだ。どうしてこうなったのか、僕にはてんでわからなかった。
「真面目に働け」と何度も言われた。だが、僕は何も、不真面目だったことなんて一度だってない。上司の言うことには、むしろ従順すぎるくらいに従っていた。できなかったのだって、ただの能力不足であって、つまりはわざとじゃない、仕方のないことだったのに。
だからこそ、「真面目に働いていない」と思われているのが当時の僕には不思議で仕方がなかった。けれど、今ならわかる。
僕はただ上司の言うことを聞き、お客様に聞かれれば応じる、つまり、とことんまで受け身の働き方をしていたわけだ。自分からは何も進まず、ただ目の前のことだけを対処する。不真面目に見えるわけだ。
ただ、当時の僕は、「それでいい」のだと思い込んでいた。自分から「よく売るためにはどうすればいいか」なんて考えるつもりはさらさらなかったのだ。
まあ、その不真面目な働き方のつけを、今はこうして支払っている、というわけになるけれど。仕事を失った僕は、しばらく失業保険で生活しなければならない。
「もしかして、僕の働き方はダメだったんじゃないか?」
辞めることになって、初めてそう思った。今さらすぎるね。だが、新しく仕事を探すのなら、自分の働き方は改めなければいけなかった。
いちおう、僕は販売士の資格を持っている。上司から取るように言われて、渋々ながら試験を受けて取得したものだ。にもかかわらず、僕は自分から調べ始めて「マーケティング」という言葉を初めて知ったような気がする。
マーケティングは、モノを売るうえで、まず基本となる初歩の初歩だ。学び始めるのなら、まずはここから学ばないといけない、と僕は確信した。
そうして、図書館から借りてきたのが、『はじめての人のマーケティング入門』という本だった。初心者の僕には、まさにピッタリの一冊だろう。
と、思っていたのだが、どうやらこの本は少しばかり難しい。というのも、「マーケティング」そのものというよりは、「マーケティング理論」をわかりやすく伝えるものだったからだ。
前書きの「仕事で使えるマーケティング理論を身につける」、その言葉に偽りなしだ。まさに、マーケティング理論を身につけるには最適かもしれない。
だが、つまりは「理論」だけだ。マーケティングのマの字も知らない人からしてみたら、この本はちょっと敷居が高いのではないだろうかと思う。
僕にとって幸運だったのは、僕が紛いなりにも、販売という仕事に関わってきたからだろう。真から販売を理解していなくとも、僕には実践から身についた経験があった。
その経験から得た知識と合わせることで、初めてこの本に書かれている「理論」ははっきりとした形となって現れる。なるほど、そういうことだったのか、と、改めて思わされるものも多かった。
この本を読んで僕が痛感したのは、理論だけではままならないということだ。理論だけを詰め込めば、どうしても頭でっかちになってしまって、自分の考えが正しいのだと固執してしまう。
かといって、経験だけでは、かつての僕のように、自分のしている行動の意味すらも考えることができなくなる。思考が麻痺してしまうのだ。ただぼんやりと働いている方が楽なのだから、そちらに流れてしまう。
理論を身につけて理解し、実戦経験を積んで知識を確かめる。そして、実践から得た結果を再び考え、さらに前に進んだ自分の考え方を持つ。働く上では、その考え方が何よりも大切なのだと、僕はようやく知ることができた。
世の中の仕事は、「顧客」がいて、「商品」がある。何にしても、そのことには共通している。だからこそ、マーケティングの知識はどこに行っても活かすことができる、と、今の僕は信じているのだ。
マーケティング理論を身につけるための本
マーケティングとは、企業が効率的に売り上げをあげ、利益を獲得していく仕組みのことです。本書は、はじめてマーケティングの勉強をする人を対象にまとめました。
「仕事で使えるマーケティング理論を身につける」――これが本書の最大の狙いです。学んだ理論をどうやって仕事に活かしていけばいいのか、そんな疑問に答えるのが、本書の目的です。
そのためマーケティング理論だけでなく、理論を営業活動や販売促進、新商品開発や新規事業の立ち上げなど、仕事上でどう使っていくのかという方法論まで踏み込んで解説しました。
世の中にはたくさんのマーケティング理論がありますが、本書では、仕事ですぐに使えて役に立つ以下の8つを厳選しています。
1.市場のセグメンテーション
2.ポジショニング分析
3.商品の普及プロセス
4.AIDA理論
5.プロモーション・ミックス
6.プロダクト・ライフ・サイクル
7.CS理論
8.5つの力
本書を読み終わる頃には、さまざまな問題をマーケティングの視点で考えることができるようになっているはずです。
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