ここぞという時に人の心をつかむ『ユーモア話術の本』福田健


お前は仕事のできる有能な人間だ。真面目だし、頭もいい。だが、お前がなぜ人に好かれないか、わかるか? お前には足りてないものがある。お前には、ユーモアが足りていないんだ。

 

俺にそう言ってきた上司は、滅多にない、真剣な表情をしていた。その表情、その目は、心底から俺のことを心配してくれていることがわかった。

 

普段の上司は飄々としたつかみどころのない人で、いつもニコニコ笑っている不思議な性格をしている。しかも、ミスが発覚したりクレームが来たりした時になると、いっそうその笑みは深くなるのだ。

 

だが、一方で、仕事の手際はよく、気配りもできる極めて優秀な人間でもある。だから俺は彼のことを尊敬していたし、彼もまた俺を気にかけてくれている。だからこそ、彼の言葉は俺の心にずっしりと石のように沈んでいくかのようだった。

 

彼はよくジョークを飛ばす人である。軽いものを息をするように飛ばすこともあれば、時には、やや皮肉めいたブラックな、聞いているこちらがひやひやするようなスレスレのものまで。

 

だが、俺は彼が誰かに怒られているところなど見たことがない。上司にも、部下にも好かれ、慕われていた。もちろん、その部下の中には俺も含まれている。

 

彼の人気。その根幹にあるのが、彼が巧みに操るユーモアであることは明白だった。そして、俺にはそのユーモアが足りていないのだという。

 

自分が後輩に好かれていないことなんて、とっくに知っている。俺のいないところでひそひそと話していたのを、うっかり聞いてしまったのだ。

 

好かれていないどころか、怖がられてすらいる。そのことは、俺の中でひそかに心の傷になっていた。彼らと雑談しようとしても上手くいかず、業務についてのことしか言葉を交わさなくなっている。

 

自分では諦めているつもりだった。だが、やはり心のどこかでは、これではいけないとずっと思い続けていたのだ。しかし、方法も原因もわからず、その想いは心の中で燻ぶっていた。

 

ユーモア。それが足りていないと知った時、その想いが再び胸中で燃え上がったような気がした。俺はなりたいのだ、彼のような、誰からも好かれる人間に。

 

自分を変えよう。そう決意した俺は、図書館に向かった。ユーモアを身につけるといっても、何をどうすればいいのかわからない。

 

だからこそ、俺が一番得意なことをすればいいのだと思ったのだ。すなわち、本を読み、知識として「ユーモア」を身につけること。

 

そうして選んだのが、福田健先生の『ユーモア話術の本』だった。

 

その本には、さまざまな場面で使える、いろんな軽いジョークがいくつも載せられていた。まさかこんなに具体的な例として挙げてくるとは思わず、俺は驚いた。

 

しかも、それだけじゃない。どんな場面で、どんなふうに使えばいいのかということまで、詳しく解説されている。おかげで、ジョークが苦手な俺でもすぐに理解できた。

 

その本に載っているジョークはどれも面白くて、勉強のために読んでいても、思わず口角が上がる。だから、少しも飽きることなく一気に読みきることができた。

 

そして、今日。とうとう『ユーモア話術の本』から学んだジョークを試してみる日が来た。今日は会社の人たちが集まった会食だ。上司も部下も、一堂に会する。

 

いつになく緊張していた。だが、同時にわくわくもしていた。学んだことを活かすことのできるチャンスなのだ。否が応でも、心が踊る。

 

誰かが俺の背中をとんと叩いた。振り向くと、俺に足りないものを教えてくれた上司が、にやにやと笑っている。俺はそんな彼に、にやりと笑って挨拶を返した。

 

 

ユーモアで心をゲットだぜ!

 

コミュニケーションがとりにくい、うまくいかないとの声が、あちこちで聞かれる。そのためか、人々は話す、聞く、というやりとりに慎重になって、話す前から警戒態勢に入っている。

 

気軽に声をかけないままでは、重苦しい気分になり、やがてストレスを抱え込む。口を開かない人々が増えれば、コミュニケーションはその力を失うことにもなりかねない。

 

こうした状況を打開するには、「ユーモア」が必要である。人々が「ユーモア話術」を身につければ、暗い空気、沈んだ気分を、明るい空気、活気あふれる気分に変えることができる。

 

話し方は場の空気を読んで明るい方向に変えてこそ、生きる力となるのだ。気まずい空気にもかかわらず、笑って空気を明るく変えていくのがユーモアである。

 

今の時代、気まずい空気を解消するためにも、言いにくいことを言っても明るい空気を保つためにも、ユーモアやジョークをどんどん取り入れるべきだろう。

 

スピーチにはじまって、日常のいろいろな場面で、ユーモアやジョークに富んだ話し方ができるように、本書では適切なヒントとジョークの見本を紹介しておいた。

 

警戒ばかりして、自分の殻に閉じこもっていたら、話し方が上達しない。「ユーモア話術」を駆使することで、うっとうしい空気を吹き飛ばし、コミュニケーションの風通しをよくしようではないか。

 

 

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