学生の頃から、私は歴史がどうにも苦手だった。特に、世界史となると、もうさっぱりわからない。
そんな私が中国に興味を持ち始めたのは、大学の頃に仲良くなった友人が中国人の留学生だったからだ。
彼女と話しているうちに、次第に私は、自分の知識不足を恥ずかしく思うようになってきた。
彼女は日本について、私よりも豊富な知識を持っていた。特に日本の歴史が好きらしく、彼女は日本史について私すら知らない多くの知識と、自分の考え方を持っていた。
それなのに、私は彼女の故郷である中国について何も知らない。それが私には歯痒く思えて仕方がなかった。
私が改めて世界史を学ぼうと思ったのは、そんなことがあったからである。中国史だけでなく世界史だったのは、彼女の歴史好きに感化されたからかもしれない。
かくして、私が興味を持って図書館から借りてきたのが、出口治明先生の『仕事に効く教養としての「世界史」』という一冊である。
その冒頭には、出口先生が「歴史」を学ぶことの意味について考えた一節が記されている。
「先人に学べ、そして歴史を武器とせよ」
その言葉に、私は胸を打たれた気がした。学生時代の頃の私は、とにかく歴史を嫌っていた。歴史を学ぶ意味がわからなかったからだ。
でも、違う。歴史はただ、過去を学ぶというだけではない。過去から学び、未来に活かすことこそが、歴史の本当の価値なのだ、と。
その本では、日本と中国の関係や、宗教の発展、イングランドとフランスなど、世界中の幅広い事柄を取り扱っている。
あまりにも多くのことが書かれていて、私は目が回ったけれど、学生の頃のようにつまらないとは感じなかった。
それはきっと、その本が、ただ機械的に歴史を語っていくだけの本ではなかったからかもしれない。
学生の頃の歴史は、覚えたことをただ穴埋めしていく、そんな記憶ゲームだった。反復的で、内容のないただの作業。
けれど、出口先生はその本の中で、自分の解釈をたっぷりと盛り込んでいる。ここはきっと、こうだからじゃないのか、と。
その不確かさがむしろ、私には心地よかった。歴史はこうなっている、という無慈悲な断定ではなく、こうかもしれない、という余裕。
そうなると、今までその事実だけを知っていた歴史であっても、本当はこうではないか、とか、考えることができる。
確定された歴史をただ記憶していくのじゃなく、自分で歴史を組み立てていく。私はその瞬間、歴史を学ぶことの楽しさを本当に理解したのだと思う。
気が付いたら、私はもう、歴史が苦手ではなくなっていた。ただの知識ではなく、歴史の中にはたしかに息づく当時の人たちがいたのだと知ったから。
中国人の彼女と歴史について話すのが楽しみになっていた。ひとまずは、中国の歴史について話そうかな。
中国は日本の隣人だ。韓国や、北朝鮮だって。現代はいろいろと複雑だけれど、彼らはずっと昔から隣人として、互いの歴史に関わり合ってきたのだ。
歴史を学ぶ意味
僕は、歴史を学ぶ意味は、ヘロトドスの『歴史』の冒頭の数行に尽きているような気がしています。
「人間は性懲りもなく阿呆なことばかりやっている。だから、自分が世界中を回って聞いたことを、ここに書き留めておくから、これを読んで、阿呆なことを繰り返さないように、ちゃんと勉強しなさいよ」
すなわちヘロトドスは「先人に学べ、そして歴史を自分の武器とせよ」と、言いたかったのだと思います。そしてそれは僕の思いでもあります。
いろいろな歴史を知っていると、人々とコミュニケーションをとる時の最初のバーが低くなる。だからビジネスをしている人にとっても、歴史は役に立つのです。つまり、仕事に効くのです。
日本のビジネスパーソンに、今何を勉強したいかと聞くと、一番が日本史、二番が世界史という回答が多いという記事が、「日本経済新聞」に出ていたことがありました。
今日のグローバル社会では、各国間の国境の壁は随分と低くなりました。それにともなって、とりもなおさず世界各国のアイデンティティーが問われることにもつながります。
ビジネスパーソンたちが、世界のあちらこちらで、日本の文化や歴史について問われることは、日常的になってきました。そのために、一番勉強したいのが日本史になったのでしょう。
その場合に求められる日本史の知識は、歴史年表的な事実や文化遺産などのことだけではありません。しかし、日本が歩いてきた道を把握する鍵は、どこにあるかといえば、世界史の中にあります。
四季と水に恵まれた日本列島で、人々は孤立して生きてきたわけではありません。世界の影響を受けながら、今日まで日本の歴史をつくってきたのです。
世界史の中で日本を見る、そのことは関係する他国のことも同時に見ることになります。
国と国との関係を通して日本を見ることになるので、歴史がより具体的にわかってくるし、相手の国の事情もわかってくると思うのです。
すなわち、極論すれば、世界史から独立した日本史はあるのかと思うのです。
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