成功者から学ぶ究極の能力『やり抜く力』アンジェラ・ダックワース


 二人の男がいた。二人とも私の友人たちであるが、彼らは正反対の人間だった。

 

 

 ひとりは才能に溢れた秀才である。彼は幼い頃からできないことなど何もなかった。

 

 

 文武両道で、精悍な容姿は輝くかのようだった。体格は細身ながらも引き締まっており、身長は高い。

 

 

 彼の内から溢れる自信は男女を問わず魅了した。彼の周りはいつも人が集まり、誰もが彼を尊敬していた。

 

 

 やや自信家が過ぎるところも、彼の才能の前ではいっそ嫌味には聞こえなかった。それが然るべき態度であるかのように思えたからだ。

 

 

 親は名家で、教師からも覚えがいい。彼はやがて、高校を最高の成績を修めて卒業し、有名な大学へと入学することになった。

 

 

 彼を憎む人のハンケチはボロボロだろう。彼には、何ひとつ、欠点らしい欠点はなかったのだから。

 

 

 さて、もう一方の男を紹介しよう。彼はひとことで言うなれば変人である。幼い頃からすでにその変人ぶりは片鱗を見せていた。

 

 

 ひどく簡単な問題でも教師に質問をする。そして、教師がいくら答えようとも、彼はまた別の質問をぶつける。

 

 

 それはまるで教師を困らせようとしているようにしか見えない。授業は滞り、クラス中が不快に思っていた。もちろん、教師にも疎まれていたことは言うまでもないだろう。

 

 

 そして、そのくせに授業を聞かない。授業中、彼は図書館で借りた本を読んでいた。絵本に小説、雑学、歴史、ジャンルはその時で様々だった。

 

 

 授業を聞くように叱りつけても、彼は一向に聞かなかった。その時だけ返事をして、そして、また本を読み始めるのだ。

 

 

 休み時間でも、彼はずっと本を読んでいた。誰とも遊ばない。彼はいつもひとりだった。

 

 

 彼は何がやりたかったのか。私はそれを、とある授業の一環で彼とペアを組んだ時に聞くことができた。

 

 

「世界を変えたいんだよ。だから、まずは自分を変えているんだ」

 

 

 彼は何を言っているんだ。私がそう思ったのも無理はないだろう。そんなことはできるわけがないからだ。しかし、それを直接言う度胸は私にはなかった。

 

 

「君は笑わないのか。いいやつだな」

 

 

 そう言って、唇の端をぐいっと吊り上げた彼の笑みを、私は忘れることができない。

 

 

 授業を聞いておらず、教師からもすこぶる評判が悪い彼は、留年を体験した後にようやく卒業したらしい。それからは進学もしなかったとは聞いているが、彼の消息はしばし途絶えた。

 

 

 私が次に彼らと会ったのは何年か後のことである。その時、ひとりは優秀な学者であり、ひとりはうだつの上がらない会社員だった。

 

 

 さて、どちらがどちらだろうか。

 

 

失敗でくじけず、最後までやり遂げる

 

「子どもの頃、ぼくは疑問に思ったことがあったんだ。本を読んでいるうちに気付いたことなんだけれど」

 

 

 久しぶりに会った席で、私がどうしてそうなれたのか聞いてみると、彼は快く答えてくれた。

 

 

「ぼくはそれをどうしても知りたいから、ずっと調べていたんだよね。本を読んだり、自分でも実験してみたりして」

 

 

 なるほど、あれはそのためだったのか。教師にいろいろと聞いていたのもその一環だったらしい。しかし、その答えはなかなか見つからなかった。

 

 

「みんな、ぼくのことを迷惑がっていたね。たまに嫌がらせとかもされたっけ。でも、授業とかよりも、ぼくはどうしても知りたかったんだよね」

 

 

 聞いたところ、彼は進学しなかったらしい。中学を終えて、ようやく実験に本腰を入れられると考え、働きもせずにずっと実験していたというのだ。

 

 

「親からはもちろん怒られたよ。でも、仕方がないじゃないか。ぼくは知りたくてたまらなかったのに、誰も教えてくれなかったんだもの。だったら、自分で調べるしかない」

 

 

 世間から蔑まれ、人間関係や遊びなど、他の何もかもに目を向けず、数十年もの間、彼はたったひとりでその実験と向き合い続けた。

 

 

 そして、それはとうとう実を結んだのだ。彼の見つけ出した結果は、彼の言葉通り世界を変えた。しかし、彼はどこか憮然とした表情をしている。

 

 

「誰もがぼくのことを天才だというんだ。子どもの頃は落ちこぼれ呼ばわりだったのにね。手のひら返しが早いよね、世間ってのは」

 

 

 あの頃、天才だと呼ばれていた彼は、今は会社員なんだって? すごいよね、ぼくにはできないよ、そんな生き方。

 

 

「すごいのは君だろう。本当に天才なのは、君だったわけだ」

 

 

「ぼくは天才じゃないよ。こんなの、君だってやろうと思えばできるんだから」

 

 

 私が? 無理だよ、私には。才能がないもの。私は苦笑したが、彼は真剣な表情をしていた。

 

 

「才能なんてのはたいしたことじゃないんだ。たとえば、ぼくが途中で実験を諦めていたら、今のようにはなっていないんだから」

 

 

 『天才は1パーセントの才能と99パーセントの努力』。誰も彼の言葉を信じていないけれど、ぼくはこれを本当のことだと知っているんだ。

 

 

「ぼくは子どもの頃から気の遠くなるほどの失敗を重ねてきて、たったひとつの成功を手に入れた。成功したいなら、成功するまで失敗し続ければいいんだよ。簡単なことさ」

 

 

才能よりも重要なもの

 

 子どもの頃から、「天才」という言葉を耳にタコができるほど聞いた。父は「非凡な才能」にやたらとこだわる人で、常に他人の能力を品定めしていた。

 

 

 私を含めた三人のこどものうちのひとりとして、父のお眼鏡にかなうような頭脳に恵まれた子はいなかった。父はそのことにひどく失望していた。

 

 

 二年前、私は幸運にも「マッカーサー賞」を受賞した。別名、「天才賞」。突然の電話で受賞を知った私の頭に浮かんだのは父のことだった。お前は天才じゃない、と頭から決めつけられたことも。

 

 

 とはいえ、父は間違っていたわけではなかった。私がマッカーサー賞を受賞したのは、頭脳明晰だからではない。

 

 

 「お前は天才じゃない」と親に言われ続けて育った少女が、大人になって「天才賞」を受賞するとは。

 

 

 しかも受賞の理由は、人生で何を成し遂げられるかは、「生まれ持った才能」よりも、「情熱」と「粘り強さ」によって決まる可能性が高い、と突き止めたことなのだ。

 

 

 今の私には、自分の主張を裏付ける科学的根拠がある。さらに、「やり抜く力」は固定したものではなく、変化することもわかっている。

 

 

「お父さん、長い目で見れば才能よりも重要なのは、やり抜く力なのよ」

 

 

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