将来の夢を書いてください。子どもの頃、そう言われて渡された紙に、さて、何と書いたんだったっけ。その記憶は、もう思い出せない。
夢は実現しない。いつしか、そんな思いが自分の胸に居座っていた。成長して現実を知っていくにしたがって、かつて見た夢は、次第に薄れていった。
そのことを、ふと、意識したのは、就職して働いている時のことだった。平凡な大学を出て就職したのは、なりたいともなろうとも少しも思っていなかった仕事で、上司に怒られている瞬間である。
この先もきっと、私は命尽きるまでこの面白くもない毎日を繰り返すのだろう。そう思った途端、私は生きる意欲を失ったのだ。
人生を終わらす勇気もなく、かといって生きる理由すらわからなくなって、私は図書館をうろついていた。特に理由はない。ただ、どこにも居場所がなかっただけである。
けれど、その本が気になったということは、心のどこかで私は、自分の現在の姿が気に入らなかったのかもしれない。
ぼんやりと背表紙を眺めていた私は、ふと、一冊の本が気になって、抜き出してみた。タイトルには、『夢を実現する技術』と書いてある。「学生キャリア新聞」とは知らなかったが。
開いてみて驚く。そこに並んでいたのは、私でも名前を知っているような、そうそうたる顔ぶれだった。
棋士、芸術家、経営者、アスリート、果ては元総理大臣まで。テレビで何度も見たことがある著名人たちが、自分の経験から学んだことを真摯にアドバイスしてくれる。それはまるで、本を通して私に直接言ってくれているようだった。
彼等は誰もが認めるような成功者たちである。いずれも自分の夢を叶え、名声も人気も手に入れ、そのうえでさらに邁進し続けている。
私はいつしか、夢中になって読み進めていた。自分の夢。私がやりたいことは、なんだったっけ。そんなことを思いながら。
読んでいくうちに、私は不思議なことに気が付いた。彼等はいずれも夢を実現した人たちであるけれど、それ以外の共通点はない。専門としているジャンルもさまざまで、年齢も性別もバラバラだ。
それなのに、彼等の言葉には共通していることがあまりにも多かったのだ。特に、若い世代に向けたアドバイスはほとんど同じだった。
「なんでも挑戦して失敗しろ」
そんな言葉を、多くの人が言っている。中には、自分の過去の失敗の経験なども踏まえつつアドバイスしてくれている人もいた。私はそのことに衝撃を受けた。
昔から、失敗することを極度に恐れているような性格だった。親からは「石橋を叩いて渡らない性格」とまで称されるほどに慎重で、失敗したくないがために挑戦もしない性格だった。
それは、失敗したら終わりだと考えていたからだ。周りからの失望が怖かった。失敗に愛想を尽かされて人が離れていくのが怖かった。怒られるのが怖かった。軽蔑が怖かった。だからこそ、私は失敗しないように生きてきたのだ。
でも、夢を叶えてきた成功者たちはまったく逆のことを言う。若いうちはとにかくいろんなことに挑戦することで経験を重ね、失敗することで学べ、と。
彼等の経験談を読むと、誰もが過去に大きな挫折を味わっていた。彼等は最初から成功者ではなかったのだ。才能があった、というわけでもない。運が良かった、というわけでもない。
その裏には泥臭い努力があった。私はそれを見ようとせず、彼等をただ成功者として見ていた。だからこそ、その背後にある彼らのそれ以前の人生に目を向けなかった。
私は知った。自分とはまったく違う世界に生きているのだと思っていた彼等もまた、自分と同じなのだと。そして、そうであれば、夢を叶えるのは誰でもできることなのだということを。
将来の夢を書いてください。私はあの紙に、なんと書いたのだったっけ。今からでも、その夢は遅くないのだろうか。私はそれからしばらく、その本を眺めたまま、ぼんやりと突っ立っていた。
夢を叶えた人たちからのアドバイス
「学生キャリア新聞」創刊当初から著名人のインタビューを続け、その数はゆうに100名を超えた。あらゆる人たちの話を伺いながら私たちが思ったのは、それぞれの方が「働くこと」を自己実現の場としてうまく生かしているということだ。
”テキトー”にしていてもなんとか生きていける世の中で、会った方々は、失敗にもめげず、困難な課題にあえてぶつかり、がむしゃらに仕事に取り組んでいた。
そういう姿を間近で見るたびに、話を聞いているこちらも頑張らねばならないと思ったものである。そして、いつしか、「このインタビューをもっと多くの人に読んでもらいたい」といった話が持ち上がるようになっていた。その思いが形になったのが本書である。
本書に登場するのは、常に業界の最前線で闘い続けている第一級の現役の方々ばかりだ。この書籍が、そんな方と読者の「出会いの場」となり、彼らの紡ぎ出した言葉から、何らかのヒントやきっかけを得ていただくことができれば嬉しい限りである。
これから就職をしようとしている学生、転職をしようとしている社会人、もしくは起業を考えている方、そういった新たな一歩を踏み出そうとしている方の背中を押すことができれば本望だ。
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