現代のお金と広告『革命のファンファーレ』西野亮廣


ずっと、なんとなくで生きてきた。将来は何かしらの職に就くのだろうとは思っていたけれど、やりたいことは何もない。学校で先生から聞かれる「将来の夢」が、いつも頭を悩ませていた。

 

その悩みは大学生になっても未だに僕の胸にどっしりと居座っているわけなんだけど、最近、その黒いモヤモヤの重みが少し軽くなる出来事があった。

 

それは、一冊の本を読んだこと。『革命のファンファーレ』という本だ。著者は西野亮廣。お笑い芸人「キングコング」として人気者となり、今はいろんな活動をしている人だ。

 

その本に書かれている前書きの言葉は、僕にとって衝撃だった。親や先生から怒られてきた「やりたいことが見つからない」という僕の悩みを、彼は肯定してくれたからだ。

 

時代は変わっていく。ひとつの職業にだけ就くのではなく、副業や転職が当たり前になっている。そんな時代だからこそ、やりたいことに悩むのは、むしろ時代を生き抜くためのすべなのだ、と。

 

年下の方が優秀だという考え方も衝撃だった。僕はひそかに同じことを思っていたのだけれど、世間の常識では、年長者の方が上だとされている。だから大っぴらには言えなかった。

 

進化論によれば、生物は環境への適応を少しずつ進めていく。となれば、当然、若者の方が時代に適応している、ということになる。

 

もちろん、年長者の経験は大事だ。でも、時代の主役はいつだって若い人たちにこそある。僕も抱えていたそんな思いを、西野先生はよりわかりやすく堂々と言葉にしてくれた。

 

これからは、「好きなことをして生きていけるほど世の中は甘くない」のではなく、「好きなことを仕事にしないといきていけない」時代になったのだと、彼は言う。

 

彼が実践したそのひとつが、西野先生の活動のひとつでもある、『えんとつ町のプペル』という絵本の出版だ。

 

西野先生のアイデアをもとに、クラウドファンディングによって資金を募り、多くの絵師を起用するという新しい手法で生み出された、いわば「みんなの作品」と言える。

 

一方で、全文を無料で公開して先生が批判をくらったりと、何かと世の中を騒がせていた作品だ。映画化もされた。

 

『革命のファンファーレ』では、その本の出版を通して、現代のマーケティングとはどのようなものか、ということが書かれている。

 

たとえば、クラウドファンディング。お金が足りなくて実行できないプロジェクトを実現させるため、多くの人からお金を募る、というもの。まさにネットが普及した現代だからこそ可能な手法だろう。

 

西野先生はこれを、「信用をお金にするための装置」であるという。

 

というのも、そもそも「お金」とは、それ自体に価値があるわけじゃない。それなのに現代でお金が強い力を持っているのは、それが「信用」を数値化したものだから。

 

だからこそ、これからの時代に大切なのは、「信用」を勝ち取っていくこと。嘘を吐いたり、自分の意思を隠そうとすると、信用は手に入らない。

 

とある動画を見ている時に、コメント欄で『えんとつ町のプペル』の話題が出た。ただ、良い意味としてじゃない。どこか怪しげな新興宗教のようなものになぞらえて、揶揄されたような感じだった。

 

なるほど、そうかもしれない。「信用」は目に見えないからこそ、傍目から見ると何をしているのかわかりにくい。

 

だけど、それが揶揄の対象になる、ということ自体が、「信用」が軽視される姿勢の表れのような気もする。そもそも、宗教だって元を辿れば「信用」によるものなのだし。

 

だけど、事実として西野先生の周りには多くの人たちがいる。テレビでは嫌われ者とされて、こうして揶揄するような人たちがいるにもかかわらず、先生は多くの活躍をしていて、『プペル』は映画化されるほどの人気を誇った。

 

好きなことを、する。それでいいんだ。肩の荷が下りたような気がした。無理をしていい会社に就職する必要はない。まずは、自分が好きなことを、見つけることから始めてみようかな。

 

 

これからの時代を生き抜く若者たちへ

 

「やりたいことが見つからない」と言う人がいる。これを読んでいるあなたも、もしかしたら、そのひとりかもしれない。

 

そして、大人はあなたを指して、「ゆとり世代」だとか、云々かんぬん。自分たちに比べると、まるで最近の若者は”人としての能力が低い”といった言い草だ。

 

だけど、いつの世でも種として優秀なのは”年下”で、これは抗いようのない自然界のルールだ。若者世代への批判は、そのほとんどが”進化への乗り遅れ”に他ならない。

 

職業そのものがなくなっていく時代に突入し、副業、兼業、転職が常識になりつつある。やりたいことを掛け持つことや、やりたいことに迷うことは、これからの時代を生き抜く術だ。

 

「好きなことをして生きていけるほど、世の中は甘くない」と言われても、好きでもない仕事は消え、好きなことしか残らなくなってきている。ここからは、”好きなことを仕事化するしか道が残されていない”時代だ。

 

したがって、僕らは自分自身の手や足を使い、僕らの身の回りに起こっている変化を、学び、実践し、思い知り、対応していかなければならない。頑張れば報われる時代は終わり、変化しなければ生き残れない時代に、僕らは立ち会っている。

 

何が必要になり、何が不必要になったのか? どの職業がなくなり、何が職業となるのか? ひとつずつ整理し、対応していこう。

 

 

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