経営の常識を変えた一冊『マネジメント』P.F.ドラッカー


ドラッカーというその名を、聞いたことがあった。なにせ、一時騒がれた小説のタイトルにその名前があったのだから。

 

もしも高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら。その一度見たら忘れられない、長々としたタイトルの本を読んだのは、私が高校生の頃である。

 

まず、タイトルを見た時の当時の私の感想は、「ドラッカーって何?」だった。そもそも、私はドラッカーもマネジメントも、なにひとつ知らなかったのである。

 

だが、なにせその本は流行っている。ならば、面白いに違いない。そんな軽い思いから、私は読み始めたのである。そしてドハマりした。

 

それは、まさしくタイトル通り。野球部の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』に書かれている経営の理論を野球部の運営に実用して成長させていく、というお話。

 

そこで初めて、私はドラッカーという人物を知り、『マネジメント』という彼の著作を知った。そして、その理論通りに野球部が成長していくその様子を見て、「その本を読んでみたい!」と強く思ったのである。

 

そしてとうとう、今、私の手元にはまさしくドラッカーの『マネジメント』がある。本屋で買うにも高い。さてどうしようかと思っていたら、近所の図書館で偶然発見したのである。つくづく幸運であった。というわけで、いざ、読み始めてみる。

 

案の定というか、ちょっと難しい。専門用語は多いし、堅苦しい。でも、よく読みこめば理解できる。そんな印象だった。

 

ただ、そんなことはすぐに気にならなくなった。というのも、すぐにその本に入り込んでいたからである。

 

『マネジメント』は、そのタイトル通り、会社の「マネジメント」を取り扱っている。「マネジメント」によっていかに会社の利益を上げさせるか、ということが書かれているのだ。

 

「もしドラ」は、この本に書かれている理論のごく一部が引用されているにすぎないのだと、私は感じた。それほどまでに、『マネジメント』は幅広く、そしてより深く、経営というもの、会社というものを掘り下げていることがわかる。

 

この本が現代より何年も前に出版されたのだと思うと、素直に驚く。いかに著者のドラッカーの見識が未来を見通していたかということがよくわかった。

 

しかも、読んでみると、ドラッカーはそもそも、「マネジメント」を会社に必要なもの、とは書いていない。組織に必要なものとして書いている。

 

つまり、そもそもマネジメントが適用されると考えられていた会社だけでなく、ドラッカーのブームを巻き起こした野球部だけでもなく、ありとあらゆる組織に対する考え方として『マネジメント』は教科書たりえるということだ。

 

ドラッカーの異名は、「経営学の父」とも呼ばれているらしい。『マネジメント』は、当時から現代に続くまでの経営学の明確な土台となった。

 

「もしドラ」が流行したのがきっかけとなり、多くの人の興味がその本のタイトルにも含まれていたドラッカーの『マネジメント』にも向けられた。

 

今では、初心者の人にもわかりやすく要約・解説された『マネジメント』の解説書まで出版されている。「もしドラ」はそれまで私たちから見て遠くにあった経営学を身近にして、それは、これからさらに近くなっていくのかもしれない。

 

ドラッカーの『マネジメント』を知ることができて、良かったと思う。経営に携わるあらゆる人に、胸を張って勧められる本だと断言できる。私もまた、ドラッカーに魅せられたひとりになったのだ。

 

 

経営学の教科書

 

我々の社会は、信じられないほど短い間に組織社会になった。しかも多元的な社会になった。主な問題は、個人と家族ではなく組織の手にゆだねられた。

 

この変化に気付いた時、「くたばれ組織」との声があがったのも無理はない。だが、この反応は間違っていた。なぜなら、組織に代わるものは、自由ではなく全体主義だからである。

 

社会には、組織が供給する財とサービスなしにやっていく意思も能力もない。しかも、組織を必要としているのは、声の大きな高学歴の若者である。知識を通じて生活の資を稼ぎ、成果を上げて社会に貢献する機会が豊富に存在するのは、組織だけだからである。

 

組織をして高度の成果をあげさせることが、自由と尊厳を守る唯一の方策である。その組織に成果をあげさせるものがマネジメントであり、マネジャーの力である。

 

経営書のほとんどが、もっぱらマネジメントの仕事を扱っている。それらはマネジメントを内から見ている。これに対し、本書はマネジメントの使命、目的、役割から入る。

 

マネジメントは、以前にも増して大きな成果をあげなければならない。しかも、あらゆる分野で成果をあげなければならない。

 

個々の組織の存続や繁栄よりもはるかに多くのことが、その成果いかんにかかっている。組織に成果をあげさせられるマネジメントこそ、全体主義に代わる唯一の存在だからである。

 

本書の動機と目的は、今日と明日のマネジメントをして成果をあげさせることにある。

 

 

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