願望を実現するヒントをあなただけに『きっと、あなたは成功する。』ミルトン・カツェラス


 出る杭は打たれる。だったら、出なければいい。みんなと同じであれば、自分だけが叩かれることはない。

 

 

 僕は昔から目立つことが嫌いだった。いや、怖れていた、といってもいいだろう。それは、「出る杭は打たれる」という言葉が、ずっと頭の中にあったからかもしれない。

 

 

 それは、人と接していくことで身につけた僕の人生観だった。そして、それは正しいのだと確信している。

 

 

 誰かと比べて劣っている。あるいは、誰かと比べて優れている。そのどちらであっても、その人に向けられるクラスメイトの視線は、どこか恐ろしい。

 

 

 嫉妬。あるいは、悪意。恐怖。敵意。それは自分と同じ子どもを見る眼ではない。彼らはその存在を自分の世界から追い出そうとしていた。

 

 

 そんな彼らの姿を見て、僕は何よりも恐ろしかったのだ。人と違っていると、あんなふうになる。誰からも追い出されて、この世に、僕の居場所はなくなってしまう。

 

 

 僕は自分の容姿に感謝している。優れているわけでもないし、いじめられるような特徴があるわけでもない。凡庸な外見だ。

 

 

 だからこそ、とけ込める。僕は自分の全霊をかけて、周りの人たちから逸脱しないように細心の注意を払って生きていた。

 

 

 優れ過ぎず、劣り過ぎず。ほんの些細なミスも許されない。一瞬でも足を踏み外してしまったら、僕は彼らの枠組みから追い出されてしまうだろう。

 

 

 目立ち過ぎてはいけない。目立ち過ぎてはいけない。慎ましく、慎ましく。静かに、ひっそりと、往来を行くひとりとなって生きていく。

 

 

 けれど、就職した先で上司から勧められたのは、そんな僕の生き方とはまるで正反対の本だったから、困ってしまった。勧められたからには、読まないといけない。

 

 

 それは、『きっと、あなたは成功する。』という本だった。なんでも、その上司の考え方を変えてしまった本、であるらしい。

 

 

 日本人は保守的な社会だ。しかし、今の流動していく時代において、その考え方ではいずれついていけなくなる。

 

 

 まずは行動し、挑戦する。自分だけの価値を持つ。そのアメリカ的な生き方こそが、今の日本に必要なことだ。その本はそう言っている。

 

 

 その本に書かれていることは、まさに僕が感じていたことそのままだった。そして、そのうえで、その本は僕とは正反対の結論を導き出している。

 

 

 自分の夢。自分の望みとはなんだろう。思わず、そんなことを考えた。今まで周りの顔色を見て合わせることばかりに必死で、そんなこと、考えたこともなかった。

 

 

 僕は文章を書くのが好きだ。絵を描くのも好きだ。それは、子どもの頃から僕が持っていて、それでいて誰からもひた隠しにしていた僕の姿だった。

 

 

 僕は、それらを密かに追いかけていた。作家になった自分。あるいは、画家になった自分。自分が好きなことをして、成功を収めることができたなら、それはどれほど幸せなことだろう。

 

 

 それを貫く。つまり、自分の生き方を変える。周りから打たれながら、その夢を追いかけなければ成功はない。なら、その覚悟が、僕にあるのだろうか。

 

 

 ふっと、息を零す。答えなんて、わかりきっている。成功なんて求めない。成功もまた、ひとつの「杭」だ。

 

 

 成功もない。失敗もない。大きな波もなく、ただ平凡な人生を過ごし、誰からも意識されることなく眠る。

 

 

 それが、僕の望む生き方だ。夢なんて、とうの昔に、こういう生き方をすると決めた時に捨ててしまった。

 

 

 平凡な人生。それが僕の生き方だ。きっと楽しくはない。けれど、哀しむこともないだろう。それだけが、僕の望みだ。

 

 

 さて、それじゃあ、この本を勧めてくれた上司に、感想を言わなくてはいけない。当たり障りのない、つまらないであろう平凡な感想を。

 

 

打たれる覚悟でオリジナリティーを求める

 

 本書は、人生をよりよく生きるための知恵の数々を極めて具体的に教えてくれる本です。

 

 

 本書で語られる、夢を実現するための方法論は、極めて具体的でインパクトに富んだものです。人生へのあくなき挑戦、自分のユニークさの執拗なまでの追求、そして人を愛すること。

 

 

 アメリカでは、このような夢の具体性、実践力、楽観的希望なしに人生の成功はないようです。

 

 

 今まさに日本人には、「出る杭は打たれる」ではなく、打たれることを覚悟し、あえて打たれながら自分のオリジナリティーを出していく、この勇気と迫力が必要だと思うのです。

 

 

 日本の社会はいつもいつも保守的です。しかしこうした生き方は、現代の閉塞した日本の社会の中で妥当な生き方といえるでしょうか。

 

 

 まず行動してみて、それによって状況が変化し、人が反応する。これが、これからの時代を生きる日本人の新しいルールにならなければなりません。

 

 

 自分の表面を飾ったり、見かけを重視するのではなく、いつも自分の本当の確信、価値観、本音によって生きていかなければなりません。そうしなければ、時代に不適応を感じてしまうことになるでしょう。

 

 

 この激しい変動の時代を生き抜くには、もう一度、自分の本来的な固有の夢、欲求、希望といったものを見出し、それらを追求していくプロセスで、外界の変動を利用すればいいのです。

 

 

 今我々が夢を実現するためにどういう方法が妥当であるか、何が参考になるか、どの人が参考になるかを考え、ともあれ表現してみることです。

 

 

 そうすることによって、今そこに必要な考えは何であるか、必要な行動は何であるかを見出すことができるでしょう。

 

 

 今の日本に必要なのは本格的な実力です。つまり本当の創造性が要求されているのです。

 

 

 本書には、こうしたアメリカ流フロンティア精神が溢れています。読者は、本書に学び、人生をもっと新鮮に、もっと創造的なものに変えることができるでしょう。

 

 

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