世界中で読まれている恋愛攻略本『ルールズ 理想の男性と結婚するための35の法則』エレン・ファイン+シェリー・シュナイダー


 ああ、結婚したい。胸の奥からこみ上げてくるようなため息を、私は缶を傾けてひと息に呑み込んだ。

 

 

 私の小さい頃の夢は、「お嫁さんになりたい」だった。とはいえ、他にも同じようなことを書いている子はたくさんいて、その頃はただの遠い未来にある「将来」でしかなかった。

 

 

 けれど、背が高くなって、胸も大きくなって、自分の身体が大人に近づいてくると、自ずと、男の子を意識するようになった。

 

 

 恋愛は何度かしたことがある。けれど、どれも上手くいかなかった。付き合うことになっても、結局、いつも彼から別れを告げられて終わるのだ。

 

 

 でも、他の恋愛したこともない女の子たちを見て、私は安心しきっていた。自分はモテないわけじゃないのだ、と。

 

 

 もしも、彼と結婚したら、なんて妄想に耽ったこともある。学生だったからほんの遊びのようなものでしかないけれど。

 

 

 とはいえ、ずっと思っていたのは、なんとなく生きていれば、いずれは結婚して、子どもを産んで、家庭を持つことになるのだろう、と。

 

 

 特に具体的ではないけれど、そんな未来予想図を漠然と描いていた。けれど、その普通の未来予想図がひどく難しいものだと知ったのは、二十代も終わりを迎えようというこの頃だ。

 

 

 もうすぐ、私は三十代に突入する。恋愛してこなかったわけでもない。それなりに彼氏は出来ていたし、職場では美人な方だと思う。

 

 

 けれど、どうしてだか、結婚にまでいかないのだ。年下の私よりもかわいくない子が結婚するたび、祝福しながらも心にはとげが刺さっている。

 

 

 どうして。どうしてよ。なんで結婚できないの。焦っても上手くいかない。合コンや婚活も試してみたけれど、どれも失敗に終わった。

 

 

 それはまるで、自分という女の価値を突き付けられたような気がした。思考が下へ下へと向いていく。

 

 

 もしかしたら、男に人気があるというのも、ただの私の妄想なんじゃないだろうか。私はひとり寂しく朽ちていくしかないブスなんじゃないだろうか。そんなことすら思うようになっていた。

 

 

 その本と出会ったのは、そんな時だった。図書館をうろついていたら、見つけたのだ。

 

 

 『ルールズ 理想の男性と結婚するための35の法則』というタイトルだった。私は心惹かれるものを感じて、その本を読んでみることにした。

 

 

 けれど、ページを開いてみて、私は失望する。そこに書かれていた法則は、いい女を気取る傲慢な女の考え方の代表格のようなものだったからだ。

 

 

 男を立てず、それどころか、まるで自分が女王様であるかのような振る舞い。こんなの、理想の男性と結婚どころか、男に逃げられてしまうに決まっているではないか。

 

 

 けれど、失望しながらも、せっかく借りたのだからと開き直って読み進めていくうちに、私はどうやらそうではないらしいということがわかった。

 

 

 いわく、男にとってミステリアスで忙しい女になることが必要なのだそうだ。つまり、気安い存在ではいけないのだという。

 

 

 男はチャレンジがしたいのだそうだ。だからこそ、落とすのが難しい女にこそ、燃え上がるのだという。

 

 

 そして、手に入れるのに苦労していたならば、将来、彼から蔑ろにされてしまうこともなくなるらしい。

 

 

 なるほど、たしかに。一理あるかもしれない。その頃には、私の中にある疑念は薄まって、その本の内容を信じてみるつもりになっていた。

 

 

 果たして、草食系男子と言われるほど男子が奥手になった現代で、その「恋の法則」がどれだけ適応するかはわからない。

 

 

 けれど、試してみようと思った。どうせもうすぐ三十代なのだ。もうなりふり構わないくらいになっていた。

 

 

 その時の私の選択が、間違っていたかどうか、それは私にはわからない。もしかしたら、やめていた方が、今よりも良い結果になっているかも。

 

 

 けれど、だとしても、私は後悔しないだろう。今は私の隣りに、誰よりも愛おしい彼がいるのだから。

 

 

オトせない女になろう

 

 ・デートの待ち合わせ場所を、お互いの中間地点にしないこと。デート代は割り勘にしないこと。

 

・あまり急いで打ち解けないこと。

 

・こちらから電話をかけないこと。留守電にメッセージが残っていても、かけ直すのは、ごくたまにだけにする。

 

・男性が変わるだろうと期待してはいけない。

 

 

 今までこのような「恋の法則」を聞いたことがありませんか。「恋の法則」に従えば、あなたは「自信に満ち溢れて輝いている幸せな女性」になるでしょう。

 

 

 なぜ最初のアプローチは男性の方からしてこなくてはならないのか、どうしてこちらから追いかけてはいけないのか、そんな理由がきっと理解できるでしょう。

 

 

 私たちは、長年この「恋の法則」を独身女性たちに伝授してきました。そして今、「恋の法則」を発見するのはあなたの番です。

 

 

 これまで教えられてきた男女関係のあるべき姿というものに真っ向から異を唱えるこの「恋の法則」に対して、最初、私たちは奇妙な気持ちを抱きました。

 

 

 でもこれは、ズルはできない真剣勝負で、実績が全てを物語るのです。こうして私たちは「恋の成就のための情報交換」をしたのです。

 

 

 しかし、気をつけないといけないのは「恋の法則」を間違えて覚えてはいけません。間違って伝えられたまま広まらないように、この本にまとめたのです。

 

 

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