感染症の波が猛威を振るっている中で、小泉政権以来の長期政権となった安倍晋三氏が総理大臣を辞したのは、未だ記憶に新しい。
「忖度」が流行したり政治家の不倫や汚職が浮上したりと、長期政権であるがゆえの歪みも見受けられたけれど、政治にあまり興味がない私からしてみれば概ね良かったのではなかろうか。
誰も成し遂げることができなかった不景気の改革をアベノミクスで見事に成し遂げたのは誰にも文句の言いようのない功績なのではないかと思う。
一方で、感染症の対応についてメディアに厳しく言われているのを見た時には、思わず同情が湧いてしまった。
感染症の世界規模の流行なんて、誰にも予測ができない事態だろう。思わず首を傾げてしまうような政策もあったけれど、初期の頃の日本の感染者数を見れば上出来なのではないだろうか。
他国からその対応が評価され始めると、それまでは安倍元首相に辛辣だったメディアが途端に手のひらを返して褒めまくっているのを見て、思わず笑ってしまった。
ともあれ、総理大臣の入れ代わり立ち代わりの連鎖を断ち切り、長く政権を勤め上げた安倍氏もいよいよ退陣し、菅首相が新たに立ち、時代の移り変わりを始めようとしている。
その最中、海の向こう側では大いに世の中を良くも悪くもかき回した大統領のドナルド・トランプ氏がその座を追われようとしている。
しかし、彼は結果に不正があったとして、今もバイデン氏と再び矛を交えようとしていた。
今、政治が大きく動いている。国を主導で動かす人たちが変わることは、決して私たちの生活とも無関係を決め込んでいられない。
と、よく言われるけれど、生憎と、私はそれでも政治に興味が湧くことはなかった。選挙にも行かなかったし。
親には「選挙に行くように」と怒られたけれど、頑として断った。というのも、そもそも誰が候補者として出ているのか、知らなかったからだ。
若者の政治への関心のなさに対して、軽傷が鳴らされている。そして、まさにその若者のひとりに私がいるわけだけれど。
選挙に行かなかったことを怒られたことをきっかけに、少し、政治のことを調べてみようと考えて、図書館に向かった。
そこで一冊の本を見かけた。『世界を動かす巨人たち』という本。〈政治家編〉と書かれている。
作者の名前を見て驚いた。池上彰。テレビでも見たことのある名前だ。私は思わずその本を手に取った。
その本はどうやら、各国の大統領や主導者、政治家の生い立ちを辿り、彼らの考え方を読み解こうという内容であるらしい。
ロシアのウラジーミル・プーチン。ドイツのアンゲラ・メルケル。アメリカのヒラリー・クリントン。中国の習近平。残念ながら、日本は書かれていなかった。
いずれもテレビで見たことのある人たちばかりだ。大統領や首相、あるいは政治家として、いわゆる力を持っている人物。
けれど、なにせ海の向こう側の話、改めて考えてみると、彼らがいったいどういう人物なのか、私はちっとも知らなかった。
プーチン氏がかつてKGBに所属していたことは知らなかったし、習近平氏が投獄された経験があることも知らなかった。
私からすれば雲の上の人物たち、政治の世界を生き抜く百戦錬磨の怪物たちのようにも感じるけれど、彼らだってひとりの人間だ。生まれた頃から政治家だったわけじゃない。
さまざまな生い立ちを辿り、苦難や苦境を乗り越えてきたからこそ、国の代表という壇上に立つことができている。
テレビを見て、私たちは彼らに好き勝手に言う。聞くに忍びない批判すらも、口に出すことだってある。
たったひとつの小さな傷が見つかれば、誰もがそこをこじ開けるように抉り出し、政治への不信を口にする。
施行した政策が上手くいかなければ、こぞって批判を言う。議会では子どものような野次が飛び交い、品性の欠片もない中でひたすら矢面に立つのだ。
だが、もしも、あなたが国を主導する立場になったら、上手くいくと言えるだろうか。
彼らとて、人間だ。未来を見通すことなんて誰にもできない。毅然と立つ壇上の裏では苦悩しているのかもしれないじゃないか。
ふと、思い立ってテレビを見る。ちょうど菅首相が話しているところだった。今の私には、それが関係ないことだとは思えなかった。
テレビの中の議会は、決して遠い場所じゃない。他国の大統領たちだってそうだ。彼らは雲の上にはいない。この世界に、ひとりの人間として立っている。
自分が暮らすこの国を、どうすればもっと良くできるのか。彼らはシステムじゃない。彼らもまた、自国を愛する国民のひとりに違いないのだ。そのことに、ようやく私は気づいた。
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