世界を読み解くカギがこの本の中に『ハーバードの「世界を動かす授業」』リチャード・ヴィートー


 毎日のように、ニュースでは悲惨な事故や事件が報道されている。そんな国に、今、私は生きているのだ。

 

 

 私の祖父は口癖のように言っていた、日本はいい国だ、と。しみじみと、思うように。

 

 

 かつて、日本のために戦った祖父が、そう言うのに違和感を覚えていた。祖父は愛国心に溢れていたが、そんな父を危険な戦いに追いやったのは国なのだ。

 

 

 しかも、勝っている、なんて嘘までついて、最後の最後まで騙し続けた。祖父の愛国心は、一種の洗脳のように思えてならなかった。

 

 

 たしかに、日本にはいいところもあるだろう。

 

 

 古代から独特の成長を遂げてきた文化は日本特有のもので、他にはない美しさがある。狂気の画家、フィンセント・ファン・ゴッホも傾倒していたという。

 

 

 日本人の勤勉さから生まれた技術力は卓越したものがある。細やかな気遣いが行き届いた日本の製品の評価は高い。

 

 

 アニメーションは現代日本を代表する文化といってもいいだろう。それは今もまだ、進化し続けている。

 

 

 しかし、それだけのものがあるとわかったうえでも、私は日本という国が嫌いだった。

 

 

 政治家の汚職問題は毎日のように報道されている。いじめ、犯罪、事故。今では軽度のうつ病が当たり前のようにすらなっている。

 

 

 教師の専横、モンスターペアレント。未来ある若者たちが自ら命を絶つような事態に追い込んでいるのは、愚かな大人たちだ。

 

 

 柔軟性に欠ける生真面目な気質は、他人に対する寛容の心を忘れ、他人のミスを血眼で探し、責任の所在を押し付け合う。

 

 

 伝統だとか習慣だとかに固執して、新しい変化をことさらに嫌い、他人の挑戦や個性を嘲笑う。

 

 

 そのくせ、個性が大事などと矛盾したことを押しつける。それで、できなければ「どうしてそんなこともできないの?」だ。まったく、嫌になるね。

 

 

 今にして思えば、偏った考え方である。しかし、当時は本気でそう思っていた。日本を嫌っていた。

 

 

 それこそ、明治・大正時代から、日本は西洋の列強と肩を並べようとしていた。似合わないドレスを着て、下手なダンスを踊っていた。

 

 

 挙句、アメリカに対して無謀にも牙を向いた。当然の結果というべきだろう。自業自得以外の言葉が見つからない。

 

 

 小さな島国がどうして肩を並べたつもりになっているのか。思い上がりも甚だしい。

 

 

 いまだに日本はその思い上がりを持ったままでいる。どうして自分の国が重要な立ち位置にいるなどと考えられるのか。私には謎で仕方がなかった。

 

 

 しかし、日本のその認識は正しい。そして、私の認識は間違っていた。私がそれを知ったのは、『ハーバードの「世界を動かす授業」』を読んだからだった。

 

 

 作中では、『米国と日本という二つの大国が「だめ」になったら、世界経済へのインパクトは計り知れないほど大きい』と書かれている。

 

 

 私には信じられなかった。米国はともかく、日本がどうしてそれほどまでの鍵を握っていると認識されているのか。

 

 

 しかし、どうやら、ハーバード・ビジネススクールで最初に取り扱われるのは、なんと日本なのだという。

 

 

 その理由は、戦後の日本が成し遂げた、歴史上にも他に類を見ない奇跡的な経済成長だ。日本では「バブル」と呼ばれるあの時期は、世界からは「日本ミラクル」と認識されているらしい。

 

 

 「日本は小さな島国に過ぎない」と思い込んでいたのは、むしろ私の方だ。世界はちゃんと日本を見ている。日本人が思うよりも、ずっと。

 

 

 日本が世界的に重要な立ち位置にいるというのは、決してただの思い上がりではない。そのことが、感情に囚われていた私にもようやく理解できた。

 

 

 しかし、今、経済は停滞している。もはや過去の奇跡はなく、ただ衰退していくばかりだ。

 

 

 私はようやく理解した。日本は素晴らしい。もっと成長できるだけのポテンシャルがある。

 

 

 戦後の日本は、世界の情勢を正確に読み取り、自分たちの強みを生かすことで世界が驚くほどの成長を遂げた。

 

 

 「日本ミラクル」は決して奇跡ではない。綿密な戦略によって引き起こされた、「計画された奇跡」だ。

 

 

 今の日本に必要なのは、従来の規則や伝統にしがみつくことじゃない。世界の変化していく状況に合わせて自分たちを「適応」させていくことだ。

 

 

 かつて、日本にはそれができた。だったら、「もうできない」なんてことはないだろう?

 

 

世界を読み解くキーワード

 

 2008年に起こった世界金融危機は「100年に一度の危機」とも言われた。この危機は、金融機関だけでなく、一般の個人、企業、そして国家までも呑み込んでしまった。

 

 

 しっかりとした方向性と内容を伴った戦略か、なんとなく場当たり的に生み出された戦略かといった違いもあるが、では、素晴らしい戦略さえあれば成功するのかといえば、そうではない。

 

 

 戦略に合ったカードを持っているかどうかが大切なのである。自らの企業や国の立ち位置を見極めなければいけない。

 

 

 国、そして世界がどのようにデザインされているのか、その仕組みやゲームプランを考えてみるというのが、この本の目的である。

 

 

 国の動きはさまざまであるが、ある一定の法則がある。大国も小国も、星のように何らかの「軌道」をもって動いているのである。

 

 

 では、どうやって世界を読み解くべきか? いくつかのキーワードが世界の形を解き明かすカギとなる。

 

 

 さまざまな国の軌道を考える中で、どの国のケースにも現れるキーワードにフラッグを立てて読むと、世界を考える横軸となるので、世界を見る目がすっきりとするはずだ。

 

 

 世界のグローバル化は、私たちの生活を良くも悪くも揺るがす。国々が置かれた状況や戦略、そして成長の軌道のポイントはどのようなものか。

 

 

 「なるほど、世界の経営者はこんなふうに世界を学んでいたのか」と感じていただき、明日の自国、そして世界を考える眼を養っていただければ幸いである。

 

 

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